遠距離恋愛について その3

毎晩のビデオ通話、3か月に1回のデート。最初から遠距離恋愛をしていたにしては、僕たちは結構安定した関係を築いていた。そして、いつしかその関係性に慣れつつあった。

会社員の生活と言うのは不思議なもので、一日一日はなかなか過ぎないのに、一週間はあっという間に過ぎるし、なんなら一年くらいはあっという間に過ぎてしまうというところがある。これは社会人になったことのある人なら誰しも一度は感じることではないかと思う。そして僕たちは、それぞれの国で職場勤めをしながら、いつしか夜寝る前のスカイプを1時間ずつすることがすっかり習慣になった。

楽しい思い出もたくさんある。寝る前のスカイプだけでなく、カカオトークという韓国のメッセンジャーアプリを使って、短いメッセージをたくさん送りあった。日本でいうとLINEみたいなアプリである。僕のスマホに入っているあの黄色いアプリには、当初は彼女しか連絡相手が登録されていなかった。日本でほとんど知られていなかったというのもあるし、そもそも僕が彼女と連絡するためだけに使っていたというのもあった。道端で見かけたちょっとした風景を写真に撮って彼女に送ったりしていた。

また、紙の手紙もしたためた。東京かソウルでデートするときに手渡ししたこともあるし、彼女の住所に国際郵便で送ったこともある。その時の手紙は今でも残っているし、僕の韓国語のスペルミスとかも笑い話の種になる。ある意味、古典的な遠距離恋愛を楽しんでいたように思う。

しかし、僕たちがいくらお互いを好きあっていても、住むところが1,000キロ離れているという事実は変えようがなかった。

遠距離恋愛は男と女でとらえ方が違うという。男はなんだかんだで結構「慣れる」が、女はどうしても寂しさが募るという。僕たちの場合もそうなりつつあった。例えば、スカイプでビデオ通話しながらも、どうしても将来が不安になって、彼女が泣き出してしまうことがあった。僕がどんな言葉をかけても泣き止まない。僕も分かっていた。彼女が欲しいのは言葉じゃなくて、僕が横にいてあげられるという状況であることを。

僕にしても、誰かに恋愛の話題を出されるたびに、「付き合っている女性がいて、彼女は韓国人で、韓国で働いている」という説明を繰り返すことに疲れ始めていた。特に、周囲の人間のライフイベントが発生するたびに(恋人ができた、結婚した、子供が生まれた等)、僕は我が身を顧みて行く末を案じてしまうようになった。恋人がいなかった時代とはまた違った意味で、他人の幸せを素直に祝福できない状態であったとも言える。

何かをする必要があった。

その年、僕は会社の部署を異動になった。新卒で入ったこの会社での3つ目の部署だ。僕は新しい仕事にも、職場の人間関係にも慣れ、そこの仕事が気に入りだしていた。仕事内容が変わり、心機一転といった感じの今こそ、僕たち二人の関係を前進させる機会であると思った。

僕はその年の彼女の誕生日に行動に移ることにした。(続く)

Published by Atsushi

I am a Japanese blogger in Korea. I write about my life with my Korean wife and random thoughts on business, motivation, entertainment, and so on.

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