久しぶりにカフェに来た。アイスコーヒーを注文したところ、ストローの先っぽにかぶせるようにビニール袋が付いてきた。

ストローの先が空気に露出し続けるのを防ぐ工夫のようである。これもコロナの感染を少しでも防ごうという努力なのだと思う。
カフェのような、不特定多数の人が出入りする場所では、このような組織的な防疫努力が不可欠だと思う。
同じ日、韓国政府から韓国に住む人全員に、以下のようなショートメッセージが来た。

「マスク着用で集団感染を防ぐことができます。密閉された施設や、人同士の近接接触がある場所では必ずマスクをしてください。」 という内容である。
“感染を防げます”ではなく”集団感染を防げます”という文章に知性を感じる。散発的な感染は防げなくても、集団が感染するのは防げそうだ、ということである。
この背景には、先日ソウルの梨泰院(イテウォン)というところのクラブで大量感染者が発生したことがあるのだろう。この事件では、性的少数者の人権保護という観点からも大きな話題になっている。
同クラブで感染したソウル近郊の仁川(インチョン)在住の塾講師の若者が、職場に解雇されるのを恐れて当局の調べに対して「自分は無職である」と虚偽の供述をしたことが問題になった。しかも、彼が感染した状態で仁川の教会に通い、200人と接触していたことが明らかになり、韓国社会が一時騒然としたのである。
ところが、同教会は普段からマスク配布、体温監視、定期消毒などの防疫手続きを徹底していたことから、なんと感染者が一人も発生しなかったのである。
上述の「マスク着用で集団感染を防ぐことができます。密閉された施設や、人同士の近接接触がある場所では必ずマスクをしてください。」 という韓国政府のメッセージは、仮に感染者が発生しても、不特定多数が出入りする場所において徹底した防疫措置を持続することによって、少なくとも集団感染は防ぐことができるはずだ、という韓国政府の自信を反映しているのではないだろうか。
コロナに関連して、韓国では2月以降、南部の大邱(テグ)宗教施設における集団感染を抑え切ったこと、4月前半の2週間にわたる国会総選挙を集団感染無しにやり切ったこと、そして5月のクラブ集団感染者の特定と仁川教会での模範的な防疫事例などから、徐々にコロナとの戦い方について当局が自信を深めつつあるというのが筆者の感想である。
まだまだ油断がならないコロナ事態だが、筆者は韓国社会の一員として是非とも前向きに乗り切れることを願ってやまない。今回の仁川での事例は、小さな希望の光を感じさせるに十分だった。
参考:【コロナ】韓国の「新しい日常」のためのソーシャル・ディスタンス指針【日本語訳】