#韓国軍 #新韓銀行 #クレイトン #一級機密 #セウォル号
韓国軍の兵器システム獲得に関連して、今まで手書きが中心であった諸文書(企画、予算、試験評価等)をデジタル化、共有化するプロジェクトが開始される。2023年3月完成目標とのこと。
システムは外部業者である(株)ケイサインという企業が開発するという。ケイサインのホームページはこちら。
本件に関連して、軍の担当者(国防電算情報院長)が述べる「国防獲得情報システムが完成すれば、兵器システム調達事業に効率性と透明性がより一層向上する」というコメントについて、一点だけ補足したい。
2017年の韓国映画に『一級機密』という作品がある。
陸軍の将校が国防本部に転属になり、軍備の調達業務の責任者となる。最初はエリートコースへの栄転に喜んでいた主人公は、徐々に調達の不条理に気が付きだす。一部の業者に対して、不適切な厚遇がなされていたのである。
軍人、特に将校の世界は、とても居心地がいいらしい。家族(シック:食口と書く)という言葉で表現されるほど、細やかな人間関係が存在するという。そんな中で、軍が行っていた不条理(この場合は戦闘機の部品納入に関する一部業者の厚遇)により、部品の不具合で戦闘機が墜落し、パイロットが死亡する。不条理を告発しようとした主人公は、逆に軍に訴えられそうになる。心あるジャーナリストと組むことで、告発に成功する。
私がこの映画を観たときには、「渋い、硬派な映画だが、映画としてあまり盛り上がらないのではないか」と逆に心配するほどだった。だが、エンディングをみて衝撃を受けた。
映画が実際の事件を基にしていることは分かっていたが、こうした軍の不良品納品が横行することで、どうもセウォル号の沈没の救助に向かうはずだった軍艦が、動作不良で出動できなかったらしいという実際のTV報道がエンディングに挿入されているのである。つまり、こうした軍の不条理(韓国語ではピリ(非理、と書く))によって、あのセウォル号の子供たちが少しでも救えたかも知れなかったということがエンディングで明らかになるのだ。
社会の不正義は、必ず克服されるべきである。克服されなければ、罪のない命が失われるのである。そういう強烈なメッセージを感じ取れる作品であった。
冒頭の国防部の武器調達システムへのブロックチェーンの導入というのは、この『一級機密』で扱われた不正義を考えると深い意味があるように思われる。というのも、ブロックチェーンの最大の特徴として、一度承認された記録は事実上改竄できないということがあるのだ。つまり、武器の調達において、しかるべき入札が行われているかどうかを透明性を持って管理できるということでもある。ブロックチェーンの強みと、韓国社会における正義の追求という2つの要素がうまく融合する案件になれば面白いと思う。


韓国大手銀行の一つである新韓銀行は、医者向けローン商品をブロックチェーンを活用して運用していた。「ドクターローン」というサービスだが、もともと新韓銀行はアメリカのプログラマであるビタリック・ブテリン氏が中心となって開発されたイーサリアムというブロックチェーンを利用していた。
しかし、新韓銀行は今後「ドクターローン」をクレイトンという韓国発のブロックチェーン基盤に切り替えることを発表した。クレイトンは韓国大手であるカカオの子会社が開発したブロックチェーンである。新韓銀行もクレイトンも、韓国国内企業でブロックチェーンを活用するプレーヤーとしては最大級の存在である。今回の協業は、韓国ブロックチェーンの歴史の中でも特筆されるべき出来事なのかもしれない。
ちなみに、新韓銀行の「ドクターローン」は、医師を対象にしたローンの貸し出し管理アプリで、医師資格(国家資格)情報の確認プロセスをブロックチェーンを活用することで円滑化している。