一つの発見を、本一冊丸々費やして丁寧に解説すると、ここまで分かりやすいのか。
小島寛之『完全独数 統計学入門』と『完全独習 ベイズ統計学入門』は、そういう感動のあるシリーズである。
『完全独数 統計学入門』では、一般的な統計学の基本定理である「t分布による区間推定」を紹介するために、本一冊200ページ丸々費やしている。
「t分布による区間推定」というのは、正体不明の集団を観察する時に、その中から一部のデータを取ってくる。そのデータだけを以て、正体不明の集団の平均値がどのくらいなのかをある程度の精度で推測することが出来る思考法である。それは一つの公式で表すことが出来る。
この本がすごいのは、その一つの公式を理解するために、本当に四則計算さえできれば誰でも分かるように順を追って解説しているところである。我々が学校教育で何かの数式を学ぶときに、ここまで丁寧に解説を受けることというのはほぼ無いと言っていいだろう。
『完全独習 ベイズ統計学入門』についても同様である。『完全独習 ベイズ統計学入門』では、ベイズ統計学の基本を解説している。ふたを開けてるまでどう転ぶか分からない世界で、ふたを開けることで我々人間は新たな情報を手に入れる。情報が手に入れられると、情報が無かったころに「あり得たかも知れない世界」を否定し、確率の精度を上げていくことができる。
この本がすごいのは、「あり得る世界」を面積図で表現することで(そしてそれは正確な表現である)、情報を得ることによって確率というのは変わっていくというのを視覚的に表現していることである。
小島寛之先生というのはすごい人だと思う。