近代韓国には、最も多い時で8万人の中国人が暮らしていた。
従来の歴史研究では、韓半島から中国東北部(「満州」)への人的移動の研究は多くても、逆方向すなわち中国から韓半島への移住の動きについての研究はあまり多くなかった。
東アジア近代史を顧みる時、韓半島の華僑は多くの役割を果たしている。山東省(韓半島の華僑の8割は山東省出身)の資本が韓半島に流入し、東アジア域内通貨の移動を促進し、また、中国人商人・工人・農民が各種の技術を韓半島に伝播させた。野菜の栽培技術・中華料理・鋳物工場の技術などがそれである。
しかし、韓半島の華僑は、日中戦争と華僑排斥運動によって、日帝時代の後半までにはほぼ活発な経済主体としては消滅している。その経緯について、実証的なデータを基に検証した学術的な素晴らしい本が、この李正熙『韓半島華僑史』東アジア社、2018年出版(2021年現在、韓国語のみ)である。
李先生は日本の福知山大学でも教鞭をとられた、韓半島地域研究の専門家でいらっしゃるらしい。今は仁川大学にてやはり華僑史の研究をされているという。