日経論説に見る韓国民主化史への軽視・歪曲:背景と偏向の分析 日経新聞の企業理念と報道スタンス(過去10年)

日本経済新聞(略称:日経)は経済専門紙として**「中正公平、…経済の平和的民主的発展を期す」との社是を掲げ、公平中立と経済発展を重んじる立場を標榜しています 。読者層は企業幹部や高学歴の社会人が多く平均所得も他紙より高い傾向があり、その利害や価値観と親和性の高い紙面作りが指摘されています 。政治的には主要全国紙の中で保守寄りの論調と評価され、2009年調査では保守的度合い5.2点(0=革新的、10=保守的)と、読売(5.6)・産経(5.3)に次ぐ数値でした 。こうした経緯から経済中心主義で安定成長を優先し、冷戦期には他紙同様に親米・反共**的な姿勢を持ち合わせたとされます (※要検証)。実際、外交安全保障では日米同盟や自由主義経済圏との協調を重視し、韓国を含む東アジア報道でも市場・安全保障の視点が強調されがちです(※要検証)。これは日経の想定読者層(経済人・政策決定層)が共感しやすい価値観に沿った報道姿勢とも言えます(※要検証)。

韓国報道における進歩勢力への扱いの傾向

日本メディアは総じて韓国の進歩(革新)勢力に厳しい論調をとる傾向があります。とりわけ日経などは文在寅・盧武鉉両政権(共に民主党)の歴史問題での姿勢に否定的で、合意変更や司法判断を「一貫性に欠き遺憾」などと批判しました 。2018年、文在寅政権が慰安婦合意検証を行った際、日経社説は「合意の精神を骨抜きにする内容で極めて遺憾だ」と述べ、日韓不信は北朝鮮を利すると指摘して「慎重で一貫性のある外交」を求めています 。また徴用工問題では「国家間の約束は守るというのが国際常識」と主張し、進歩政権の対応を非常識だと論難する論調が目立ちました 。

特に保守系メディアでは進歩勢力への否定的レッテル貼りが顕著です。産経新聞は文政権について「法より『反日』を優先」「常軌を逸している」と非難し、「おかしさを通り越して狂気さえ感じられる」とまで断じました 。これは「感情的反日」に依拠する政権との決め付けであり、進歩勢力を非理性的・過激と見なす典型例です。「感情的」「非現実的」といった否定的形容は韓国進歩派への日本側論評でしばしば見られ、実際に**「文大統領の抗日姿勢は非現実的」との記事見出しさえ存在します 。同記事では日韓双方の世論が歴史問題で極めて感情的になりやすいと指摘され 、文在寅政権による対日強硬発言を「ナショナリスティックな政治的求心力向上策」と分析しています 。一方、韓国保守勢力に対して日本メディアは概して好意的で、協調路線や現実主義を評価する傾向があります。例えば尹錫悦大統領の当選時、朝日新聞は「今度こそ日韓関係改善が軌道に乗りつつあると期待したい」と論じ 、保守政権への政権交代を関係修復の好機として歓迎しました 。尹政権下での対北・対米協調強化策も「確かに不可欠だ」と前向きに捉える論調が見られます 。もっとも、尹錫悦氏個人への評価には警戒も混じり、例えば朝日は先制攻撃論への懸念を示しています 。しかし総じて、日本側では「進歩系政権=反日的で感情的・非現実的」「保守系政権=現実的で協調的」との図式が共有されがちです(※要検証)。実際、2025年韓国大統領補選を前に日本では「李在明氏は文氏の再来か」との疑念が根強いと指摘されており 、進歩派=日韓関係悪化要因との見方が定着していることが伺えます。こうしたバイアスは左派系の朝日・毎日新聞においてすら例外ではなく、2018年前後の対立局面では朝日・毎日でさえ文在寅政権に厳しい意見を述べた**と分析されています 。

峯岸博論説委員の論説傾向と価値観

今回問題となっている日経の峯岸博・上級論説委員は、朝鮮半島情勢を長年取材しソウル支局長も務めた記者で、近著に『日韓の断層』(2019年)や『日韓の決断』(2023年)があります。峯岸氏の論調は徹底したリアリズム志向で、韓国側の理想主義や歴史正義よりも現実的打算やパワーバランスを重視する傾向があります。例えば『日韓の断層』では、戦後築かれた日韓関係が「相次ぐ韓国の判断によって脆弱になってしまった」と述べられており 、慰安婦財団解散や徴用工判決など韓国側の措置が関係悪化の主因だと捉えています(歴史問題での韓国側の正当性主張よりも、関係への打撃という現実面を強調)。峯岸氏は尹錫悦政権の登場についても「過去に縛られる日韓関係を根本的に変える強い決意」を評価しており 、尹大統領が「日本は既に数十回反省と謝罪を表明している」と明言したことを高く評価しています 。これは、歴史問題に区切りをつけ未来志向へ舵を切る現実主義こそ望ましいという峯岸氏の価値観を反映しています。

峯岸論説の文体・語調にはどこか冷めたシニシズムが漂うと評する向きもあります(※要検証)。例えば彼は2020年総選挙時の韓国社会について「与党大敗でも反日が起きぬ静けさ」に言及し、かつてと世情が変化したと論じました 。そこには、韓国の若い世代がもはや反日感情を政治に利用しなくなったとの含意があり、民主化運動を担った旧世代の「情熱」をどこか冷笑的に見ている節もうかがえます(※要検証)。峯岸氏の筆致は一見客観的ですが、背景にあるのは**「理想や感情に流されず現実を直視せよ」**という信条であり、それゆえ民主化運動の歴史的意義や市民感情の高まりに対して距離を置きがちです(※要検証)。こうしたスタンスはまさに「冷笑主義的リアリズム」とも言うべきもので、理想に奔る進歩派政治家への皮肉と、現状追認的な現実主義が同居しています。峯岸氏の2025年5月16日付論説「韓国大統領選、40歳理工系候補に再び脚光」もその文脈で読む必要があり、彼は民主化運動世代ではない若いテクノクラート候補に光を当てることで、従来の民主化史観を相対化しようとしている可能性があります(※要検証)。すなわち、韓国民主化の歴史的経緯よりも「新世代の台頭」や「理工系エリートの躍進」といった別の物語に焦点を移し、その過程で民主化の歴史を軽視・矮小化する構図が生まれていると考えられます(※要検証)。

日本メディア全体の構造的バイアスと各紙比較

日本の主要メディアには構造的なバイアスが存在し、韓国報道でも保守・進歩のどちらに軸足を置くかで論調が偏りがちです。全般的に日本の新聞は自国政府の主張を“コピペ”して国民感情を増幅させる装置と化す側面があり、日韓双方でメディアがナショナリズムを煽る傾向が指摘されています 。具体的には、保守系の産経・読売は韓国進歩勢力に極めて否定的で、先述のように産経は文在寅氏を「狂気」とまで非難しました 。読売新聞も「韓国文政権の態度は外交常識に外れ非礼である」と社説で批判し 、「国家間の約束を守るのが国際常識」と強調するなど 、進歩政権を信頼できない相手として描く傾向があります。一方、朝日・毎日など革新系とされる新聞も、基本的価値観では人権や民主主義への共感を示しつつも、対韓外交では日本政府寄りの現実論を唱える場面が少なくありません 。例えば朝日新聞は朴槿恵大統領弾劾後の2017年韓国大統領選に際し「韓国の有権者が選ぶこと」と断った上で、文在寅政権下で停滞した日韓関係の改善を期待する論調を示しました(※要検証)。また尹錫悦氏当選時には上記のように関係改善への期待を表明しつつ、安全保障面では尹氏の強硬姿勢に苦言も呈しています 。NHKなど公共放送は論評より事実報道が中心ですが、ニュース選択や解説において政府見解を重視する傾向が指摘されます(※要検証)。総じて、日本メディア全体に**「韓国進歩派=情緒的・反日的」「韓国保守派=現実的・協調的」**という図式が構造化しており、報道言説におけるバイアスとして現れています。このバイアスは韓国の民主化運動そのものへの評価にも影響し、民主化の歴史を語る際にも進歩勢力の功績より混乱や対立を強調する論調が散見されます(※要検証)。韓国の民主化史に深い理解を持つ論説は日本では必ずしも主流ではなく、どちらかと言えば経済発展や安全保障上の利害から韓国政治を見る傾向が強いことが、歴史の軽視・歪曲につながりやすい土壌と言えます(※要検証)。

なお、メディア間の違いも付記すると、産経新聞は最も強硬な反韓・反進歩色を打ち出し 、読売は保守政権寄りながらもう少し穏健、毎日新聞は中道的で対韓融和にも理解を示す場合があります(※要検証)。朝日新聞はリベラル志向ゆえ韓国市民社会への共感を示す論説も見られますが、国家間問題では「感情的対立の悪循環は避けよ」など理性的アプローチを訴える傾向があります 。つまり左派紙であっても韓国進歩派を全面支持するわけではなく、日本国内世論との整合を図る傾斜が見られ、この点で日本メディア全体の構造的バイアスが改めて浮かび上がります。こうした偏向は韓国のメディアや識者からも認識されており、韓国側では**「日本では尹政権の一方的譲歩を歓迎する声が支配的で、尹氏退陣には日韓関係悪化を懸念する論調が相次いだ」**と報じられています 。日本メディアの韓国報道が自国の利害に偏っているとの批判は、国際的にも少しずつ共有されつつあると言えるでしょう(※要検証)。

国際的・連帯的視点の補完

以上の偏向に対し、日本国内にも韓国の民主化に共感し連帯してきた人々・団体が存在します。実は1970年代から、日本の市民社会は韓国の民主化闘争を支援しようと動いていました。例えば1974年には「日本の対韓政策を正し韓国民主化闘争に連帯する日本連絡会議」(略称:日韓連帯会議)が結成され、草の根レベルでの日韓連帯運動が本格化しました 。朴正煕政権下での金大中氏拉致事件や、1980年5月の光州事件に際して、日本の市民・宗教者・野党政治家らは韓国の民主化勢力を支援する声明や救援活動を展開しました 。日本キリスト教協議会(NCC)など宗教界も「韓国問題キリスト者緊急会議」を組織し、政治犯救援や世論喚起に尽力しています 。これらの活動は日本政府の対韓姿勢に一定の影響を与え、1980年代以降の民主化移行期において民間レベルでの日韓関係を支える重要な役割を果たしました(※要検証)。

また現在でも、韓国の民主主義を守るために連帯しようという動きは続いています。例えば2024年末の尹錫悦政権による非常戒厳令布告(※要検証)に抗議する韓国市民の運動に呼応し、2025年2月には日本の国会内で「民主主義守る連帯を」と題する集会が開かれました 。この集会には日本共産党の小池晃書記局長や立憲民主党・社民党議員、市民団体代表らが参加し、韓国市民の闘いへの支持を表明しています 。小池氏は「韓国社会の民主主義の強さに敬意を表し、女性や学生、若い世代が中心になっている闘いに連帯していく」と述べ、韓国民主化運動への連帯を誓いました 。さらに日本の市民有志は「私たちは尹錫悦政権退陣民主化闘争に連帯します」とする共同声明を発表し(2025年)、韓国の民主主義回復を後押ししています 。こうした連帯の視点は、日本のメディア報道では埋もれがちな**「韓国民主化への共感と反省」**を掘り起こすものです。韓国の民主化運動は決して他人事ではなく、日本の戦後民主主義とも通じ合う普遍的価値の闘いでした。実際、韓国の市民革命(例えば1987年の民主化宣言)に刺激を受けた日本人も多く、当時の出版物や記録集には日本からのエールが数多く寄せられています(※要検証)。

国際的にも、日本の一部メディアの報道姿勢に対する評価・批判があります。韓国のハンギョレ新聞は、尹大統領の弾劾可決を受けて**「日本では尹政権退陣による日韓関係悪化を懸念する声が相次いでいる」**と伝え、日本側の報道が尹氏寄りであることを示唆しました 。これは裏を返せば、日本メディアが韓国保守政権に期待し進歩勢力を警戒するバイアスを持つと国外からも見做されているということです(※要検証)。一方で、米国や欧州の専門家の中には韓国の民主主義成熟を評価し、日本にも学ぶべきとの指摘をする者もいます(※要検証)。日本のメディア報道だけを見ていると韓国の民主化の意義が過小評価されがちですが、国際社会では韓国の民主化運動はアジアにおける権威主義打破の成功例として高く評価されています (※要検証)。日本人としてもこの点を正当に評価し、連帯の視点を持つことが求められていると言えるでしょう。

おわりに:構造的理解と連帯の意義

峯岸論説委員の記事に見られる韓国民主化史への軽視や歪曲の背景には、日本メディアの経済・安全保障中心の視点と冷戦期から続く保守的バイアスが横たわっています。それは日経新聞という一経済紙のみならず、日本の報道界全体に共有された構造的な偏向です。その結果、韓国の進歩勢力が果たした民主化の歴史的役割よりも、「反日的」「情緒的」といったステレオタイプが強調されてきました。しかし他方で、日本社会の中には韓国の民主化に心を寄せ共に歩もうとしてきた人々も存在します。その視点に立てば、韓国の民主主義の歩みは日本自身の戦後民主主義を省みる鏡ともなりうるのです。

今回の分析で明らかになったように、日経新聞・峯岸氏の論調には経済合理性やリアリズムの名の下に韓国民主化の意義を矮小化する傾向が認められました。しかし歴史を振り返れば、韓国の民主化はアジアにおける独裁打倒と市民社会の勝利として輝かしいものであり、日本の市民もそれに連帯してきた経緯があります 。日本のメディアには、こうした連帯の歴史や韓国民主化への敬意をもっと伝える余地があるはずです。それは単に韓国を礼賛することではなく、日本自身の民主主義を問い直し成熟させる契機ともなるでしょう。偏見や冷笑ではなく、構造的・歴史的な理解と連帯のまなざしを持つこと――それこそが、韓国民主化の歴史を正当に評価し未来の日韓関係を築く上で、日本人に求められる姿勢ではないでしょうか 。今後、日本メディアが韓国報道において歴史の重みを軽んじず、公正でバランスの取れた視点を確立することを期待したいと思います。

参考文献・出典:日本経済新聞社説、朝日新聞社説、新聞協会報 ;Business Insider Japan ;ダイヤモンド・オンライン ;澤田克己「フォーサイト」寄稿 ;峯岸博『日韓の断層』『日韓の決断』 ;日本新聞協会データ ;早稲田大学・同志社大学リポジトリ資料 ;しんぶん赤旗 ;ハンギョレ新聞日本語版 ほか.

Published by Atsushi

I am a Japanese blogger in Korea. I write about my life with my Korean wife and random thoughts on business, motivation, entertainment, and so on.

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