2025年10月10日付の韓国経済新聞は、韓国政府が**「ブロックチェーン基本法(仮称)」**の制定を本格的に進めていると報じました。
この記事は、韓国のデジタル行政戦略の中でブロックチェーンがどのように位置づけられているのかを理解するうえで、非常に重要な一歩を示しています。
(参考:韓国経済新聞「블록체인 기반 공공 서비스 열린다…정부 ‘블록체인 기본법’ 추진」2025年10月10日)
https://www.hankyung.com/article/2025101017311
国家主導の「ブロックチェーン・プラットフォーム」構築へ
主管は科学技術情報通信部(日本の総務省+経産省のような役割)。
同省は、これまで暗号資産の基盤として注目されてきたブロックチェーン技術を、公共サービス全般に応用するための国家レベルの基盤技術として制度化する方針を固めました。
その中心にあるのが、**「国家共用ブロックチェーンプラットフォーム」**の構想です。
これは、各自治体や省庁が個別にシステムを開発する代わりに、共通の国家インフラとしてブロックチェーンを活用できるようにするもの。
地域通貨、公共バウチャー(給付金やクーポン)、オンライン投票、電子身分証などの行政サービスを、安全かつ透明に管理することが可能になります。
「ブロックチェーン基本法」の内容と目的
報道によれば、法案の骨子は次のようなものです。
- ブロックチェーンに関する法的基盤を確立
- スマートコントラクト(自動執行型契約)やブロックチェーン上の文書に法的効力を付与。
- 政府・地方自治体がブロックチェーン技術を導入することを促進。
- 産業育成のための支援根拠を整備
- ブロックチェーン関連企業に対する資金支援や研究開発支援を可能に。
- 「ブロックチェーン産業支援センター」を全国に設置できるよう法的に規定。
- 産業全体を統括する「審議委員会」設置
- 政府主導で技術標準・運用指針を策定し、官民連携を推進。
背景にある課題:仮想通貨依存からの脱却
これまで韓国では、ブロックチェーンというと「仮想通貨」や「잡코인(雑多なコイン)」というイメージが先行し、
技術そのものの社会的評価は決して高くありませんでした。
その結果、公共サービスや行政システムでの活用はほとんど進まず、法的根拠の欠如が導入の壁となっていました。
今回の「ブロックチェーン基本法」は、この状況を根本から変える「産業振興型の法整備」といえます。
実証プロジェクトと今後の展開
科学技術情報通信部は、法案の国会提出に先立ち、2026年から複数の実証プロジェクトを計画しています。
その中には以下のようなテーマが含まれています。
- ウォン建てステーブルコイン(韓国通貨連動のデジタル通貨)プラットフォーム
- 地域通貨・公的バウチャーの統合管理システム
- デジタル政府向けブロックチェーンモデルの輸出事業
官民連携を通じて、国内で成功事例を積み上げ、将来的にはアジア諸国への**「電子政府システム輸出」**を視野に入れています。
海外との比較:ブロックチェーンの社会実装競争
記事では、欧州連合(EU)が「Gaia-X」プロジェクトにブロックチェーン技術を採用していること、
米国では**「Blockchain-as-a-Service(BaaS)」**という、クラウド型のブロックチェーンサービスが急速に普及していることにも言及しています。
韓国政府も同様に、**「自国主導でのブロックチェーン標準確立」と「産業輸出の基盤づくり」**を狙っているとみられます。
結論:デジタル国家・韓国の新たな布石
韓国はこれまで、電子政府やデジタル行政の先進国として国際的に高く評価されてきました。
今回の「ブロックチェーン基本法」構想は、その延長線上にある**「信頼性と透明性の確保」**を目的とした国家戦略です。
単に暗号資産を規制するための法律ではなく、
ブロックチェーンを行政・金融・社会基盤の共通インフラとして整備するという点に、この構想の本質があります。
編集後記
ブロックチェーンは「技術のための技術」ではなく、社会の信頼を支える仕組みへと進化しています。
韓国のこの試みは、デジタルガバナンスを次の段階へと押し上げる、静かな革命の始まりと言えるでしょう。