【作戦名:ミラクル】韓国は地獄のアフガン戦場から自国民と協力者を見事に救出。日本は何を学ぶべきか?

記事要約

・タリバンが電撃的に首都カーブルを陥落させたことで一気に情勢が緊迫化したアフガニスタン。米国を始め、日本を含む諸外国が同国から自国民・現地協力者を退避させようと努力中だが、苦戦が伝えられている。

・そんな中、韓国はアフガニスタンから韓国の現地協力者を数百人という規模で見事に脱出に成功させ、国際社会からの賞賛を浴びている。

・韓国がアフガニスタンで行った脱出作戦は「ミラクル(奇跡)作戦」と称され、現地外交官、アフガニスタン民間バス会社、韓国軍航空機・特殊部隊員などが緊密に連携したことでまさに奇跡のような成功を収めた。

・日本は韓国に危機管理の要諦を謙虚に学ぶべきだが、憲法9条を改悪するといったことを許してはならない。

目次

  1. アフガニスタン情勢の緊迫化と諸外国による退避作戦の難航
  2. 韓国「ミラクル(奇跡)作戦」の鮮やかな成功
  3. 日本の教訓:危機管理学ぶべし、平和憲法守るべし

  1. アフガニスタン情勢の緊迫化と諸外国による退避作戦の難航

2001年米国同時多発テロ事件に端を発した米軍によるアフガニスタン侵攻・政治関与は、4代の大統領(ジョージ・W・ブッシュ、バラック・オバマ、ドナルド・トランプ、ジョー・バイデン)と20年の歳月を経て、2021年8月に米軍の完全撤退という形で幕を閉じた。

しかし、米国を含む世界にとって想定外だったのは、アフガニスタンで未だに力を持つタリバンが、電光石火の勢いで同国首都であるカーブルを陥落させてことだろう。2021年8月15日には、当初「数か月」かかるとされた米国の情報機関の予想を裏切るスピードでカーブルを制圧している。

こうした状況の急変を受け、アフガニスタンでは過去20年の間、米軍に協力してきた同国の協力者たちが米軍の航空機にしがみついて脱出を試みる映像が世界的に拡散されるなど、混乱が伝えられている。米国以外にも、諸外国の在アフガニスタン滞在者は相当数に上るため、各国が軍を動員してアフガニスタンから自国民・協力者を退避させようとしていることが報道されている。

2. 韓国「ミラクル(奇跡)作戦」の鮮やかな成功

前提

聯合ニュースによれば、韓国政府は2021年6月にアフガニスタンに駐留する韓国国籍者に対して同国から撤収するよう呼び掛けていた。その後、現地で自営業を営む最後の1人と公使館員たちが最終的に撤収したのが8月17日である。

https://www.yna.co.kr/view/AKR20210817062454504

しかし、アフガニスタンには2001年以来、同国復興の過程で韓国に協力した協力者やその家族が多数取り残されていた。タリバンが韓国に協力したアフガニスタン人に報復する恐れがあるというのは、米国に協力してきたアフガニスタン人が何とか同国を脱出しようと飛行機に殺到したことからも合理的に推測された。事後報道された内容によれば、韓国政府は2021年8月初めから、こうしたアフガニスタン人協力者とその家族の同国脱出を準備してきたとされる。しかし、タリバンによるカーブル陥落が想定以上に早かったため、予定を変更し軍用航空機による輸送に切り替えて「ミラクル(奇跡)作戦」を決行することとなった。

ミラクル作戦の概要

・作戦目的

ミラクル作戦は8月15日にタリバンがカーブルを落とし、8月17日に最後の民間人を連れて韓国外交官たちが同国を脱出した後に実施された。つまり、本作戦は韓国国籍者を対象としたものではなく、韓国に協力してきたアフガニスタン人及びその家族を対象としたものである。国軍のリソースを投入する作戦としては異例のことであるが、国際情勢を加味した人道的見地による作戦として準備・実施されたと言える。

https://www.yna.co.kr/view/AKR20210817062454504

・作戦概要

大韓民国国防部の報道資料によれば、本作戦は3段階に分けられる。

第1段階:航空機を韓国からパキスタン・イスラマバードの空港へ移送

第2段階:脱出民をアフガニスタン・カーブルからパキスタンへ移送

第3段階:脱出民をパキスタンから韓国へ移送

出処:韓国国防部報道資料

・作戦実施:カーブル

8月22日、韓国外交官の先発隊が再びカーブルに戻り、ミラクル作戦の現地側準備に取り掛かった。これら外交官が現地で行ったコーディネートが、本作戦の成功を決めたように見える。韓国外交官たちは、脱出希望者たちの「連絡網」を準備したことで効率的に現地協力者と家族の輸送を支えた。大使館、KOICA(韓国版JICA)、バグラム韓国病院などの勤務先別に代表を選出することで緊密な連携を取った。

また、もう一つの決定打としては米国と同盟国のための、カーブル空港侵入を許可されたバスのチャーターのようである。22日に、米国が友好国に提案したバスモデルは、23日にはバスの調達を行ったという。

https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1009145.html

・作戦実施:空軍

韓国政府の中でミラクル作戦を統括したのは外交部と国防部であるという。

韓国側では23日に釜山の金海国際空港から以下の空軍の航空機を投入した。

・KC-330:多目的空中給油輸送機(1機)

・C-130J輸送機(2機)

これら航空機に同乗し、本作戦を現地アフガニスタンにおいて指揮したイ・ギョング准将(陸軍)以下、人的には空軍最精鋭特殊部隊たる空軍戦闘統制士(CCT: Combat Control Team)も同乗したという。CCTは敵地に浸透・高空降下・射撃・航空管制等の多様な特殊作戦遂行能力を持ち、ミラクル作戦に同行し、C-130J護衛を担当した。

これら航空機、空軍人員は計画通りパキスタンを経由しアフガニスタンのカーブル空港に到着したが、現地で本作戦を指揮したイ・ギョング准将によれば待ち合わせ時間に全員現れないなど、トラブルはあったということである。無事に航空機がカーブル空港から離陸すると、脱出民たちから自然に拍手が沸き起こったという。

https://www.ytn.co.kr/_ln/0101_202108271416481055

・作戦実施:タイムライン(『ハンギョレ新聞』による)

8月15日:タリバンがアフガニスタンの首都カーブル入城

17日:駐アフガニスタン大使館職員と現地韓国人の最終退避

22日:カタールに撤収していた駐アフガン韓国大使館職員等先発隊がカーブルに戻り、事前準備開始

23日:韓国からアフガニスタンや周辺国に多目的空中給油輸送機(KC-330)1機と軍輸送機(C-130J)2機を投入

24日:空軍輸送機カーブル空港到着、第1陣26人をパキスタンのイスラマバードへ移送

25日:第1陣、第2陣合わせて391人がカーブルを脱出

26日:韓国仁川空港到着

https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1009145.html

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/40947.html

・ミラクル作戦の結果

豪州は50人、ドイツは7人、日本に至ってはたった1人しか救出できていないアフガン脱出作戦だが、韓国はまさに「ミラクル(奇跡)作戦」の名の通り奇跡的な成功を収めた。

タイミング的にも本作戦が奇跡的であることには、391人が韓国に到着した26日に、カーブル空港周辺で大規模な爆発テロがあったと報道されている。まさにギリギリのタイミングであったと言える。

また、本作戦は作戦準備段階から報道陣に対して報道規制の要請(いわゆる「エンバーゴ」)がなされ、作戦が公開されたのは24日、すでに第2段階(アフガニスタンからパキスタンへ移送中)のことであった。

各国がアフガニスタンからの撤退に苦労する中、韓国が鮮やかにミラクル作戦を成功させたことは英語圏を始め世界中で賞賛されている。脱出民の子供に人形を与える写真はインターネットで拡散され、緊迫した情勢の中での数少ない和やかな絵を提供している。

https://www.washingtonpost.com/world/2021/08/27/afghan-refugees-welcomed-teddy-bears/

また、韓国での受け入れ先としては忠清北道の鎮川(ジンチョン)があてがわれ、公的機関(人材開発院)に収容予定であるという。すでに現地では歓迎の横断幕が掲げられるなど、温かい雰囲気での受け入れが開始されている。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/40947.html

http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002769808

https://www.nhi.go.kr/Introduce/introduce7/info5_3.htm

3. 日本の教訓:危機管理学ぶべし、平和憲法守るべし

最後に、ミラクル作戦から日本が学べることは何かを簡単に考えてみたい。

今回、韓国が自国民を完全撤収させ、協力者とその家族を数百人単位で鮮やかに撤収させたことと、日本が自衛隊を投入しても自国民すら1人しか撤収させられなかったことが何かと比較される。

https://news.yahoo.co.jp/articles/785a2455978416baea2b350a36fd36da8cd41019?page=1

一部の保守系政治家の中には、ここぞとばかりに日本国憲法、特に戦争放棄を謳った憲法9条の改悪に結びつけようとする動きすら存在する。

しかしながら、韓国にとって今回の作戦の成功のカギは軍事力でも軍隊の法的地位でもなく、

・自国民を迅速に退避させたこと

(6月に退避勧告、8月17日には最後の1人を退避するだけだった)

・人道重視の姿勢:韓国に協力したアフガニスタン人を絶対に見捨てないという政策決定者たちの意志と方針伝達

・少数の外交官をカーブルに再投入し、バスによる大量輸送をコーディネートしたこと

この3点だったのではないだろうか。そう考えると、日本の自衛隊の法的地位を再考しようという動きは、実情も知らずに日本の再軍国主義化を目指す政治勢力の恣意的な言説に過ぎないと思われる。

韓国はミラクル作戦によってその危機管理能力の高さを世界に見せつけた。日本は謙虚に韓国から学ぶべきである。他方で、必ずしも軍事力が「モノを言った」わけでは無いことに注意すべきだ。むしろ、人道を重視するという姿勢を明確にしたからこそ、現地の外交官や軍人が、協力者たちの全員脱出に向けて一丸となって取り組めたのではないだろうか。平和憲法を改悪する言い訳としてはならない。

Published by Atsushi

I am a Japanese blogger in Korea. I write about my life with my Korean wife and random thoughts on business, motivation, entertainment, and so on.

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