2026年4月、本田技研工業が韓国での四輪車販売を終了するというニュースが報じられた。
このニュース自体は、数字だけ見れば静かなものだ。
販売台数は年1,500台程度、シェアも限定的。
「撤退もやむなし」と感じる人も多いだろう。
しかし興味深いのは、同じ事実に対する日韓メディアの解釈がまったく異なることだ。
参考リンク
日本経済新聞 https://nikkei.com/article/DGXZQOUC236YU0T20C26A4000000/?n_cid=dsapp_share_ios
한국경제신문 https://hankyung.com/amp/2026042326891
日本の見方:「市場が厳しかった」
日本の報道では、主にこう説明される。
・韓国市場は現代自動車と起亜で約9割
・日本車の存在感は小さい
・経営資源の集中のため撤退
つまり、
「韓国市場は特殊で、外資には厳しい。だから仕方ない」
という物語だ。
この説明は間違ってはいない。
だが、どこかで思考が止まっている。
韓国の見方:「競争に負けた」
一方、韓国の報道は全く違うストーリーを描く。
・ホンダはかつて輸入車販売1位だった
・アコードやCR-Vで「1万台クラブ」を達成
・しかしEV・ハイブリッド化の波に乗れなかった
・結果として販売は急減し、撤退
つまり、
「市場が拒絶したのではない。かつては選ばれていた。
しかし今のホンダには、選ばれる理由がなくなった」
という説明である。
どちらが正しいのか
結論から言えば、どちらも正しい。だが、深さが違う。
日本の説明は「構造」を見ている。
韓国の説明は「競争」を見ている。
しかしビジネスの本質は後者だ。
なぜなら、
市場が厳しいのは前提であり、その中で勝てるかどうかが企業の価値だからだ。
見落とされている事実
ここで重要な事実がある。
ホンダは韓国で「一度は勝っている」。
これは決定的だ。
もし最初から売れていなかったなら、
「市場が合わなかった」で終わる。
しかし実際は違う。
・2008年:輸入車販売1位
・年間1万台達成
・「壊れない日本車」として評価
つまり、
韓国市場はホンダを拒絶したのではない。
ホンダが市場の変化についていけなくなっただけだ。
EV時代という分岐点
韓国市場の特徴は明確だ。
・EV+ハイブリッドで新車販売の約6割
・技術トレンドの変化が極めて速い
・消費者の要求水準が高い
この中で、
・トヨタはハイブリッドで存在感を維持
・テスラはEVで市場を牽引
・韓国勢は両方で攻勢
一方ホンダは、
・EV投入が遅れ
・ハイブリッドでも突出できず
・内燃機関にも戻りきれない
結果として、どの土俵でも勝てない状態になった。
日本的思考の落とし穴
このニュースで浮かび上がるのは、日本側の思考の癖だ。
それは、
外部環境の説明で満足してしまうこと
である。
・市場が悪い
・為替が悪い
・政治が悪い
・現地事情が特殊
もちろん、それらはすべて事実だ。
しかしそれだけでは、
「では、なぜ他社はその中で勝っているのか?」
という問いが消えてしまう。
韓国的思考の厳しさ
一方で韓国側の見方はシンプルだ。
売れたか、売れなかったか
勝ったか、負けたか
そこに情緒的な余地は少ない。
だからこそ、
・過去の成功は関係ない
・今の競争力だけが評価される
という冷徹さがある。
本質は「二重の敗北」
今回のホンダの撤退は、こう整理できる。
- もともと外資に厳しい市場だった
- その上で競争にも負けた
つまり、
「勝ちにくい市場で、さらに勝てなくなった」
という二重の敗北である。
この話が自分に突き刺さる理由
この話は自動車業界に限らない。
むしろ、あらゆるビジネスに共通する。
・市場が悪いのか
・自分が弱いのか
多くの人はどちらか一方で説明しようとする。
しかし現実は、
ほとんどの場合、両方同時に起きている
終わりに
同じニュースでも、見方によって意味は変わる。
日本では
「仕方ない撤退」
韓国では
「競争に負けた撤退」
どちらを採用するかで、
次に取る行動はまったく変わる。
そして、おそらくビジネスにおいて有益なのは後者だ。
市場のせいにする限り、何も変わらない。
競争力の問題として捉えたときにだけ、次の一手が見える。