nudge ― 「押し付けずに人を動かす」という英語

英語を読んでいると、

「辞書の意味は分かるけど、日本語一語では訳しにくい単語」

に出会うことがあります。

その代表格の一つが nudge です。

最近読んでいたNVIDIA創業者ジェンスン・フアンの伝記にも出てきました。

ジェンスン・フアンとデニーズ

高校生だったジェンスンは、アメリカのDenny’sでアルバイトをしていました。

皿洗いから始まり、

  • トイレ掃除
  • バスボーイ
  • ウェイター

まで経験します。

そこでこんなエピソードが紹介されています。

He would try to nudge customers to order Coke instead.

シェイクを注文しようとする客に対して、

「コーラはいかがですか?」

と別の商品へ誘導しようとしていたのです。

なぜか。

ジェンスンはシェイク作りが大嫌いだったからです。

作るのに時間がかかるし、後片付けも面倒だった。

だから客がシェイクを頼もうとすると、

少しだけ別の商品へ誘導していた。

ここで使われているのが nudge です。

nudge の本来の意味

もともとは、

肘で軽くつつく

という意味です。

例えば、

He nudged me.

彼は私を軽くつついた。

という使い方をします。

しかし現代英語では、そこから意味が広がっています。

ビジネスでの nudge

今では

相手をそっと望ましい方向へ導く

という意味で使われることが多いです。

重要なのは、

強制しないこと。

命令もしない。

圧力もかけない。

しかし、

少しだけ背中を押す。

それが nudge です。

例えば、

We need to nudge customers toward online ordering.

顧客をオンライン注文へ少しずつ誘導したい。

The manager nudged him to apply for the promotion.

上司は彼に昇進応募を勧めた。

どちらも

「やれ!」

ではありません。

自然にそうしたくなる方向へ導くイメージです。

ナッジ理論

実はこの単語は経済学でも有名です。

Nudge Theory(ナッジ理論)

という考え方があります。

人間に命令するのではなく、

選択肢の見せ方を工夫して行動を変える。

例えば、

  • 健康食品を目立つ場所に置く
  • 年金加入をデフォルト設定にする
  • ゴミ箱を目立たせる

などです。

禁止や強制ではなく、

人を自然に良い方向へ導く。

これがナッジです。

日本語にすると?

状況によりますが、

  • そっと促す
  • 軽く勧める
  • 背中を押す
  • 誘導する
  • それとなく勧める

あたりが近いでしょう。

私は

「そっと背中を押す」

が一番しっくり来ると思います。

まとめ

nudge は単なる

勧める(recommend)

でも

説得する(persuade)

でもありません。

もっと優しい。

もっと自然です。

ジェンスン・フアンは高校時代、

シェイクを作りたくないので客をコーラへ誘導していました。

そのとき使われたのが nudge。

英語で nudge を見たら、

「強制せず、少しだけ相手を望む方向へ動かす」

というイメージを思い浮かべると、本来のニュアンスにかなり近づきます。

Published by Atsushi

I am a Japanese blogger in Korea. I write about my life with my Korean wife and random thoughts on business, motivation, entertainment, and so on.

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