大人には、紙の手帳を眺める時間がもっと必要だと思う

最近、久しぶりに紙の手帳を買った。
ページを開いて、ただカレンダーをぼんやり眺めているだけなのに、
なぜだか「もっと計画的に働かなければ」という気持ちが自然と湧いてくる。

不思議だけれど、同時にとても健全な感覚だと思う。

大人になると、仕事や家庭や将来のことなど、
目の前の情報を処理するだけで一日が終わってしまう。
スマホのカレンダーも便利ではあるのだけれど、
そこには通知やタスクや他人の情報が混ざり込み、
どこか“自分の時間”を見失いやすい。

その点、紙の手帳は静かだ。
紙の質感、ページの厚み、余白の広さ。
そこにあるのは、必要最低限の情報と、手を止めて考えるための空間だけ。
予定がぎっしり書かれていなくても、不思議と心が整っていく。

「この空白をどう使おうか」
「来月の自分はどこに向かっているだろうか」

そんな問いが、自然と浮かんでくる。

スマホでは起きない感覚だ。
効率が良すぎる画面は、考える前に答えを出してしまう。
一方、紙の手帳は、考えるための余白を残してくれる。
その余白こそが、大人になればなるほど必要になるものだと思う。

忙しいと、未来なんて考えている余裕がないように思えるけれど、
実は逆で、少し立ち止まる時間を持った方が、
毎日の判断が静かに、確実に良くなっていく。

手帳を眺めている時間は、
「仕事していない時間」ではなく、
むしろ「自分の未来を整える時間」なのだ。

そんなことを、紙の手帳を眺めながら思った。

営業の9割は「綺麗な心」で決まる——成果を最大化するための“内的OS”をどう作るか

営業の仕事に6年携わってきて、僕はようやく一つの結論にたどり着いた。
営業は、テクニックよりも「心の透明度」で決まる。

商品知識でも値段でもロジックでもない。
調達の裏側やサプライチェーンの複雑さでもない。

最終的に勝つのは「綺麗な心を持ち続けられる人」だ。

なぜそう言い切れるのか。
僕自身、その理由を人生の中で徐々に理解し始めている。

この記事では、
営業の成果の9割を決める「綺麗な心」のつくり方を、
僕自身の実践から抽象化して共有したい。

細かいテクニックは後回しでいい。
まずは “内側のOS”を設計することがすべての始まり だからだ。


1. 営業の目的は「未来を軽くすること」

心が濁る時というのは決まって
・焦り
・不安
・承認欲
が膨らんでいる時だ。

だが、営業本来の目的はそんなところにはない。

「自分の力で誰かの問題を小さくし、未来の選択肢を大きくする」
これだけだ。

この“目的の軸”があるだけで、心は驚くほど透明になる。
メールの文章も、声も、提案の重さも変わる。

毎朝の問いはたった一つでいい。

「今日、自分は誰の未来を少しでも軽くする?」

これだけで仕事に入る前の“心のノイズ”がほぼ消える。


2. 綺麗な心は「仕組み」で作るもの

感情論ではない。
“清らかであるべき”という道徳でもない。

綺麗な心は、次の3層の構造で維持できる。

1)第一層:自分の澄み(Self-Clarity)

・今日の目的
・大事にしたい姿勢
・自分の弱さの認識

これがあると、人に振り回されなくなる。

2)第二層:相手の利他(Other Elevation)

相手の立場・制約・言えない本音を理解する力。
綺麗な心の営業は、相手の“説明しづらい苦しみ”を理解しにいく。

3)第三層:誠実の積み重ね(Integrity)

小さな約束を守り続けるだけ。
最も地味だが、長期戦では最も強い。

僕の場合、この第三層はもともと強い。
だからこそ、第一層の「澄み」を整えると飛躍が起こる。


3. 毎日のOSメンテナンス(たった3つで十分)

綺麗な心を維持するのに、特別な習慣は不要だ。
必要なのは 「心のOSの再起動」 だけ。

① 今日の目的

「誰の未来を軽くするか?」

② 今日の感謝

「誰に支えられているか?」

③ 今日の誠実

「何を守ると自分は強くなるか?」

これだけで、営業の“迷い”と“雑念”の7割は消える。


4. 綺麗な心は最高の営業武器になる

綺麗な心を持つ営業は、全方位で強い。

1)相手が安心する

営業の本質は「相手の不安を消すこと」。
透明な心は、声・表情・メール文の端々まで滲み出る。

2)長期戦で勝てる

裏表がないから、紹介や指名が増える。

3)意思決定が速い

心が澄んでいると判断が痛くない。
迷わない。
変に悩まない。


5. 僕自身の構造(個人OS)

僕は、誠実さと粘り強さに強みがある。
これは綺麗な心の第三層を既にクリアしているということだ。

だから大事なのは、第一層の「澄み」を毎朝整えること。

これさえすれば、
提案の質、メールの一文、会話のトーンまで
自然と透明になる。
努力の手触りがなくなり、“勝手に成果が伸びる”状態が作れる。


6. 最後に:綺麗な心とは努力ではなく「方向」

綺麗な心とは、良い人ぶることじゃない。
怒らない、焦らないということでもない。

「相手の未来を軽くするために、自分の心を澄ませる」という方向性そのものだ。

この方向で立ち続ければ、
どれだけ荒れた案件でも、値下げ要求でも、急なRFQでも、
心が濁らない。

そして心の透明度が高い営業は、
どこの世界でもトップを獲る。

僕はそのための“心のOS”を、これからも毎朝再起動し続ける。
読んでくれた誰かの未来が少しでも軽くなれば嬉しい。

「Don’t let them get the best of you」という英語表現の意味と使いどころ

日常のちょっとしたストレスや、人間関係のすれ違い。
そんな瞬間に英語圏の人がよく口にするフレーズがあります。

“Don’t let them get the best of you.”

直訳すると「彼らにあなたの一番いい部分を取らせるな」。
しかし実際の意味はもっとシンプルで、とても実用的です。


意味:相手に振り回されるな、心を乱されるな

この表現が伝えるのは、

  • 相手に精神的な主導権を渡すな
  • イライラや不安に支配されるな
  • あなたらしさを失うな

というメッセージです。

相手の態度や言葉が気に障っても、
あなたの気分や行動まで支配させないように――
そんなニュアンスが込められています。


どんな場面で使う?(具体例でイメージ)

1. 嫌味を言われたとき

Don’t let them get the best of you. Just stay calm.
「気にするな、冷静でいろ。」

イライラし始めた友人にかける言葉として自然です。

2. 同僚の態度がストレスなとき

Don’t let them get the best of you. They’re not worth your energy.
「相手に飲まれるなよ。そんなことのためにエネルギーを使わなくていい。」

“your energy” がポイントで、
「あなたの大事なリソースをそんな人に使うな」という励ましです。

3. SNSで批判コメントが来たとき

Don’t let them get the best of you. Ignore the noise.
「雑音は無視しろ。気にするな。」

相手の言葉よりあなたの心の平穏を優先しよう、という意味になります。


日本語だとどう訳す?

状況に応じていくつか自然な訳し方があります。

  • 「気にするなよ」
  • 「あんな人たちに振り回されるな」
  • 「心を乱される必要はない」
  • 「相手のペースに巻き込まれるな」

つまり、
“自分の軸を守れ”
という励ましの言葉だと言えます。


このフレーズが持つ「優しさ」

特徴的なのは、この表現が単なる「我慢しろ」ではなく、
あなたの価値を守ることを優先している点です。

“the best of you”(あなたのベストな部分)
あなたの良さ・平常心・判断力・自信 を指します。

それを奪われないように、と相手は優しく背中を押してくれているのです。

これは英語圏の「個人の尊厳」を守る文化とも結びついていて、
ただの励まし以上に、相手を尊重するニュアンスが含まれています。


まとめ

“Don’t let them get the best of you.”

この表現は、
「相手の言動に自分の感情を支配させない」
という、シンプルだけど大切な考え方を伝えています。

仕事、人間関係、SNS…
もし心が揺さぶられるような場面があれば、
ぜひこのフレーズを思い出してみてください。

あなたの「ベスト」は、あなたのものです。

「韓国は棚ぼた独立」論に感じる違和感――歴史の筋を見失った日本の言説へ

日本のSNSでは時折、こんな主張を見かける。

「韓国は原爆投下で日本が敗戦したから独立できた。
つまり棚ぼたで解放された国だ」

さらに、

「朝鮮人被爆者も数万人いた。」

と付け加える人すらいる。

これらの言説を目にするたびに、私は強い違和感と怒りを覚える。
なぜなら、この二つの主張には共通して
「日本の加害の歴史」を都合よく抜き、 植民地支配に抵抗した韓国人の努力を丸ごと消し去る構造
があるからだ。

この記事では、感情ではなく事実に基づいて、
この問題を整理してみたい。


■1. 「棚ぼた独立」論が踏みにじるもの

朝鮮半島の人々が1910年から1945年まで黙って支配され続けた、と思っている人がいる。

しかし事実は全く逆だ。

  • 1919年の3・1独立運動
  • 満州・中国での武装抵抗(義烈団、朝鮮義勇軍など)
  • 韓国臨時政府の外交活動
  • 日本国内での地下活動や文化運動

韓国の独立運動は国内・国外・武装・非武装の多層構造で、
長期にわたり続いた。

その蓄積があったからこそ、
米軍は南朝鮮を軍政下に置いたが、同時に“朝鮮人による自治政府の樹立”を前提に行政の主役を朝鮮人に任せた。
これは独立運動の歴史が国際社会に認識されていたからであり、
朝鮮が日本の敗戦の“棚ぼた”で独立したという説明は歴史的に誤りである。

もし本当に無抵抗で、主体性のない社会だったなら、
米軍はもっと短絡的な軍政を敷いていただろう。

つまり、朝鮮半島の独立は
「敗戦の結果として自動的に転がり込んだもの」ではなく、 独立を求める運動が国際社会に認識されていたから成立した
という筋道がある。

棚ぼたなどでは断じてない。


■2. 朝鮮人被爆者は「日本の被害者」論のための道具ではない

次に、「朝鮮人も被爆した」という主張について。

それ自体は事実だ。
広島や長崎には数万人の朝鮮人が動員されており、多くが犠牲になった。

しかし、ここで決定的に重要なのは次の点だ。

なぜ朝鮮人がそこにいたのか?

理由は一つしかない。

日本が植民地支配のもと、朝鮮人を徴用・徴兵・強制動員したからだ。

三菱重工などの軍需工場には朝鮮人労働者が多数集められていた。
自ら望んで日本に来たのではない。

つまり、朝鮮人被爆者の存在が示しているのは、

「日本もかわいそうだから同情してほしい」

ではなく、

「日本の加害構造の中で、最も弱い立場の人々が最大の被害を受けた」

という現実だ。

被爆者を“日本の被害者性”を補強するために利用するのは、
歴史の因果関係を逆転させる危険なロジックである。


■3. 因果関係を整理すれば、日本の責任は明白

感情論ではなく、因果関係だけを並べる。

  • 朝鮮を植民地化したのは日本
  • 強制動員したのは日本
  • 戦争を始めたのも日本
  • 空襲も原爆も、その戦争の結果
  • 弱い立場の朝鮮人が最大の犠牲になった

これを「全部日本が悪い」と感じるのは、
道徳ではなく歴史構造の理解として正しい。

もちろん現代の日本人が個人として責められるべきではない。
しかし、歴史の中で誰が何をしたのかは変わらない。


■4. この問題は「日韓どちらの味方か」という話ではない

これは日本人 vs 韓国人の対立構造ではなく、
歴史の筋道を正しく見つめられるかという問題だ。

過去の加害を正確に理解することは、
日本の尊厳を傷つける行為ではなく、
むしろ成熟した社会として不可欠な態度だと思う。

私は韓国に住み、日本人として仕事をしながら、
両方の社会の空気を肌で感じている。

その立場から見ても、
「棚ぼた独立」論や「朝鮮人被爆者=日本への同情材料」論は、
日本社会自身の歴史理解を貧しくするものだと感じる。


■結び――歴史を矮小化する言説に流されないために

歴史認識は国民感情に影響する問題だが、
SNSでよく見られるような軽率で選択的な言説は、
議論を不毛にし、尊厳ある対話を難しくしてしまう。

朝鮮半島の独立も、原爆投下も、
その背景には複雑で痛ましい人間の歴史がある。

それを単純化し、
都合のいい形に歪める言説には
これからも断固として異議を唱えたい。

峯岸博論考の「設計図」を暴く

――“嫌中・反米”を梃子に日本を押し上げる物語

■ はじめに

日本経済新聞の編集委員・峯岸博による「韓国・慶州に舞う嫌中・反米の風、日本を高みに吹き上げる」という記事は、一見すると韓国情勢の分析のように見える。
だがよく読むと、そこには「日本を中心に据え直す物語」を組み立てる意図的な構成がある。
これは筆者が呼ぶところの「コリア・ハンドラー」的言説――
旧宗主国意識に基づき、朝鮮半島を再び日本の勢力圏的文脈に戻そうとする“言論上の工作”――の典型だ。


1. 「風」で始まり「風」で終わる記事構造

記事のタイトルにある「嫌中」「反米」「風」は、いずれも感情語である。
しかし、本文で示される事象はそれぞれ異質だ。

  • APECという外交イベント
  • ジョージア州での韓国人労働者拘束(司法・移民問題)
  • 米韓通商交渉の難航(経済安全保障の課題)

これらを「一つの風」に束ねるのは、分析ではなくレトリックだ。
現実の韓国社会では、外交・労働・貿易の文脈はまったく別の層で動いている。
それを“民心”という曖昧な言葉で一括りにすることで、政治を感情劇にすり替えている。


2. データの使い方が恣意的すぎる

峯岸は「EAIの調査で中国への否定的認識が71.5%」と書く。
これは事実だが、質問内容や年度の推移に言及しない。
数値を一枚切りにして「嫌中」という感情の証拠に使うのは、
社会科学的な分析ではなく政治的な演出だ。

同様に、李在明大統領の支持率が「外交が不支持理由の首位」とするくだりも、
実際の世論調査の設問や時期差を無視しており、
“外交=不人気”という物語を補強するための道具化にすぎない。


3. 因果の飛躍 ― “だから日本が上がる”

記事後半の転調は見事に「コリア・ハンドラー」的だ。
“嫌中”“反米”を踏み台に、「日本のポジションが上がる」と結論づける。
その根拠は薄く、数字も成果も出てこない。
ただし読者の心理には「日本はまだ頼られている」という快感だけが残る。

極めつけは「原子力潜水艦建造の承認」までを“風”の副産物のように書く点だ。
国家戦略級の安全保障決定を“空気”の流れで説明する――
これこそ旧宗主国的マインドの象徴である。


4. 「民心」という万能の呪文

峯岸は繰り返し「韓国の民心が外交を揺さぶる」と書く。
しかしこの言葉は便利すぎる。
民主主義社会の世論や政策決定を“気分”で説明することで、
韓国の政治的主体性を奪い、常に「感情で動く国」として描く。
一方で日本の政策判断は「現実主義」として高みに置かれる。
これがまさに「コリア・ハンドラー」言説の根っこにあるヒエラルキー構造だ。


5. 「日本の正常化」を“自然現象”に見せるトリック

記事終盤、「嫌中」「反米」の風が日本を“高みに吹き上げる”と書く。
ここで日本の首相交代、高市早苗政権、靖国参拝、安倍継承といった
右派的要素が登場するが、それらは安全保障の強化=自然な流れとして処理される。
つまり、

  • 韓国の感情的混乱
  • 日本の現実的安定
    という対比が、読者の無意識に“序列”を再構築するよう仕組まれている。

6. もし本当に分析するなら

本来、ジャーナリズムなら以下の三点を分けて書くべきだ。

  1. 事実の層別:外交・司法・通商を混ぜずに論じる。
  2. データの系列化:世論調査は年次比較・設問比較を伴う。
  3. 仮説の検証:日本“浮上”論を裏づける実際の外交成果を示す。

だが本稿はそれを避け、“感情の風”で物語を閉じる。
分析を装った物語の操作である。


7. まとめ ― 「風が吹けば日本が儲かる」

峯岸の筆は上手い。構成もテンポも読みやすい。
だが、その物語構造は
「韓国の混乱 → 日本の高み」というワンパターンであり、
読者の“安心感”を装った旧宗主国的願望にすぎない。

つまり――

風が吹けば、日本が儲かる。

この単純な構図こそ、
「コリア・ハンドラー」的言説の最も危うい魅力である。


【韓国経済新聞 解説】オープンAI×AMD提携で半導体業界激震――最大の受益者はサムスン電子か?

2025年10月11日付の韓国経済新聞(강해령記者)の記事によると、
人工知能(AI)業界を代表する OpenAIAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ) が、
前例のない規模のAI半導体パートナーシップを発表した。

両社は、6ギガワット(GW)級の超大型AIデータセンターをAMD製のAIチップで構築する契約を締結。
これまでNVIDIAの独占状態だったAI半導体市場に、AMDが本格的に参入することとなり、
「AIチップ二極化時代」の幕開けを告げるニュースとして注目を集めている。


サムスン電子は“最大の受益者”となるのか

記事によると、AMDの最新AIチップ「MI450」には、サムスン電子が供給する
HBM(高帯域幅メモリ) が採用される可能性が非常に高いという。

サムスンはすでにAMDに対し、HBM3E(12層構造)を大量供給しており、
今後登場する次世代品 HBM4 においても、AMDとの共同開発を進めている。
つまり、OpenAIとAMDの提携は、サムスンのメモリ事業にとって
直接的な追い風 となる可能性が高い。


記者による推計:1GWデータセンターに必要なHBMは約400万個

韓国経済の記事では、OpenAIが建設する1GW規模データセンター
GPU・HBM需要を具体的に試算している。

  • GPU 1枚あたりの消費電力: 約2.1kW
  • データセンター全体で稼働可能なGPU数: 約33万枚
  • GPU 1枚あたりのHBM搭載数: 12個
  • → 合計 約400万個のHBM が必要

HBM4(12層)単価を500〜600ドルと仮定すると、
1GW分で約2.8〜3.4兆ウォン(約3,000億円前後)の規模となる。

さらに、OpenAIとAMDの契約が5年間・6GW規模で継続する場合、
サムスンのHBM関連売上は最大20兆ウォン(約2兆円)に達する可能性があると試算している。


ファウンドリー事業にも波及の可能性

現在、AMDのGPUは主にTSMCで製造されているが、
米国政府による「半導体の国内生産強化」方針を受け、
将来的にはサムスンの米国ファウンドリー(テキサス州など)で
一部チップを委託生産する可能性もある。

サムスンがHBMメモリ+ファウンドリーの両面でAMDと関係を深めれば、
TSMC一強体制への強力な対抗軸を築くことも不可能ではない。


まとめ:AI時代の「同盟構造」再編が始まった

OpenAI×AMDの提携は、単なる製品供給契約ではなく、
AIインフラの地政学的バランスを変える可能性を持つ動きである。

NVIDIA中心の構造に“AMD+サムスン”が食い込むことで、
半導体業界の勢力図は新たなフェーズに突入した。
サムスンにとっては、AI時代における「メモリ王国」から
「AIプラットフォームの核心プレイヤー」への進化を示す転換点となるかもしれない。


📰 出典:韓国経済新聞(한경)
記事タイトル:「반도체 뒤흔든 ‘충격 발표’…’수혜자는 삼성?’ 기대감 폭발」
発行日:2025年10月11日
記者:강해령(カン・ヘリョン)

https://www.hankyung.com/amp/202510112163i

韓国政府、ブロックチェーンを国家インフラに──「ブロックチェーン基本法」制定へ


2025年10月10日付の韓国経済新聞は、韓国政府が**「ブロックチェーン基本法(仮称)」**の制定を本格的に進めていると報じました。

この記事は、韓国のデジタル行政戦略の中でブロックチェーンがどのように位置づけられているのかを理解するうえで、非常に重要な一歩を示しています。

(参考:韓国経済新聞「블록체인 기반 공공 서비스 열린다…정부 ‘블록체인 기본법’ 추진」2025年10月10日)

https://www.hankyung.com/article/2025101017311


国家主導の「ブロックチェーン・プラットフォーム」構築へ

主管は科学技術情報通信部(日本の総務省+経産省のような役割)

同省は、これまで暗号資産の基盤として注目されてきたブロックチェーン技術を、公共サービス全般に応用するための国家レベルの基盤技術として制度化する方針を固めました。

その中心にあるのが、**「国家共用ブロックチェーンプラットフォーム」**の構想です。

これは、各自治体や省庁が個別にシステムを開発する代わりに、共通の国家インフラとしてブロックチェーンを活用できるようにするもの。

地域通貨、公共バウチャー(給付金やクーポン)、オンライン投票、電子身分証などの行政サービスを、安全かつ透明に管理することが可能になります。


「ブロックチェーン基本法」の内容と目的

報道によれば、法案の骨子は次のようなものです。

  • ブロックチェーンに関する法的基盤を確立
    • スマートコントラクト(自動執行型契約)やブロックチェーン上の文書に法的効力を付与。
    • 政府・地方自治体がブロックチェーン技術を導入することを促進。
  • 産業育成のための支援根拠を整備
    • ブロックチェーン関連企業に対する資金支援研究開発支援を可能に。
    • 「ブロックチェーン産業支援センター」を全国に設置できるよう法的に規定。
  • 産業全体を統括する「審議委員会」設置
    • 政府主導で技術標準・運用指針を策定し、官民連携を推進。

背景にある課題:仮想通貨依存からの脱却

これまで韓国では、ブロックチェーンというと「仮想通貨」や「잡코인(雑多なコイン)」というイメージが先行し、

技術そのものの社会的評価は決して高くありませんでした。

その結果、公共サービスや行政システムでの活用はほとんど進まず、法的根拠の欠如が導入の壁となっていました。

今回の「ブロックチェーン基本法」は、この状況を根本から変える「産業振興型の法整備」といえます。


実証プロジェクトと今後の展開

科学技術情報通信部は、法案の国会提出に先立ち、2026年から複数の実証プロジェクトを計画しています。

その中には以下のようなテーマが含まれています。

  • ウォン建てステーブルコイン(韓国通貨連動のデジタル通貨)プラットフォーム
  • 地域通貨・公的バウチャーの統合管理システム
  • デジタル政府向けブロックチェーンモデルの輸出事業

官民連携を通じて、国内で成功事例を積み上げ、将来的にはアジア諸国への**「電子政府システム輸出」**を視野に入れています。


海外との比較:ブロックチェーンの社会実装競争

記事では、欧州連合(EU)が「Gaia-X」プロジェクトにブロックチェーン技術を採用していること、

米国では**「Blockchain-as-a-Service(BaaS)」**という、クラウド型のブロックチェーンサービスが急速に普及していることにも言及しています。

韓国政府も同様に、**「自国主導でのブロックチェーン標準確立」「産業輸出の基盤づくり」**を狙っているとみられます。


結論:デジタル国家・韓国の新たな布石

韓国はこれまで、電子政府やデジタル行政の先進国として国際的に高く評価されてきました。

今回の「ブロックチェーン基本法」構想は、その延長線上にある**「信頼性と透明性の確保」**を目的とした国家戦略です。

単に暗号資産を規制するための法律ではなく、

ブロックチェーンを行政・金融・社会基盤の共通インフラとして整備するという点に、この構想の本質があります。


編集後記

ブロックチェーンは「技術のための技術」ではなく、社会の信頼を支える仕組みへと進化しています。

韓国のこの試みは、デジタルガバナンスを次の段階へと押し上げる、静かな革命の始まりと言えるでしょう。


正しい考えこそ、歩合制営業マンの最大の武器

営業マンにとって成功の条件は何か。スキル、商品力、人脈、タイミング…。もちろんどれも大事です。しかし歩合制で生きる私にとって、もっとも根本的で、すべてを左右する要素は 「正しい考え」 です。

私は断言します。
正しい考えがなければ、成功しても長続きしない。
逆に、正しい考えさえあれば、失敗しても立ち上がり、長期的に成果を積み重ねていけるのです。


「正しい考え」とは何か?

私が考える「正しい考え」を一言で表せば、こうです。

「他人や社会を善いものだと信じること」

  • 他人は善人である。
  • 社会は善い場所である。
  • 未来はより善くなる。

この信念を前提に生きることが、営業マンとしての私の生き方の核心です。


正しい考えがもたらす力

1. 他人を善人と信じる

相手を疑わず、まずは信じる。すると自然と「与える」姿勢になれる。Giveをする人には情報や案件が集まり、ビジネスが加速する。
また、他人を善人と信じることで「失敗して責められても気にならない」し「他人の失敗を責めようとも思わない」。余計な攻撃心から解放される。

2. 社会を善い場所と信じる

「どうせ社会は不公平だ」と思えば努力は無意味になる。しかし「社会は善い場所だ」と思えば、自分の努力が必ず価値に変わると信じられる。その信念が日々の営業活動を支える燃料になる。

3. 未来は善くなると信じる

短期的に成果が出なくても、「未来はもっと善くなる」と思える人は嫉妬しないし、腐らない。未来に希望があるからこそ、自己投資や顧客への投資をためらわない。


誤った考えが生むもの

一方で、「他人は敵」「社会は奪い合い」「未来は衰退する」と信じてしまえばどうなるか。
怠惰、他責、嫉妬、攻撃心…。これらの悪癖が顔を出し、短期的に成果を上げても、必ずどこかで行き詰まる。


生き方の宣言

だから私は営業マンとして、こう宣言します。

私は、他人を善人と信じ、社会を善い場所と信じ、未来を善くなると信じる。
この「正しい考え」をもって、顧客に与え、仲間と協働し、未来に投資する。
失敗や裏切りすらも、成長と成功に至る道の一部だと捉える。

歩合制営業は、成果がすべて。だからこそ、目に見えない「考え方」こそが最大の武器になる。
私は今日も「正しい考え」を携えて、営業の現場に立ち続けます。

年収10億ウォンを目指して——営業マンとして韓国で5年間、100億円規模を売った話


韓国で外資系半導体商社に勤める日本人営業マンが、未経験から5年で累計売上100億円規模を達成。Inside Salesの工夫と子育てとの両立、そして年収10億ウォンを目指す次のステップを綴ります。

2020年7月、僕は韓国である外資系の半導体商社に入社しました。

それまで日本でキャリアを積んできた僕にとって、それは「生活の場としての韓国」から「仕事の場としての韓国」への本格的な移行でした。 

当時はまだ子供もいませんでした。けれど、人生を大きく動かすタイミングだったことは間違いありません。

あれから5年が経ち、累計売上は100億円規模に達しました(実績ベースで63ミリオンドル超。為替によってはこれを上回ることもあります)。

中小企業から大手メーカーまで、200社以上とやり取りを重ね、案件を一つずつ積み上げてきた結果です。

今回は、そんな僕の5年間の営業人生を、少し振り返ってみようと思います。


1. 韓国で外資系に転職した理由

大学卒業後、日本の大手メーカーで働きながら、僕は「どうすれば韓国に移住できるか」をずっと考えていました。

きっかけは、韓国人の妻と結婚を見据えた将来設計です。

語学留学、ソウル大学の英語MBAプログラム、スタートアップでの経験を経て、ようやくたどり着いたのが現在の会社でした。

業界は半導体のB2Bトレーディング。世界中の在庫を探し、日本や韓国などのメーカーに納品するという、スピードと信頼が命の仕事です。

面接で言われた一言、「営業経験ゼロでも、数字で示せればチャンスはある」。

この言葉が、僕の次の5年を決めました。


2. 売上100億円規模をつくるまでの5年間

最初の1年は本当に苦しかった。

業界知識もなければ、調達ルートもなく、何より日本の大手メーカーに電話をかけること自体が怖かった。

でも、ある日ふとしたきっかけで出した1件の見積が通り、初受注につながった。

そんなある日、西日本で発生した半導体工場の火災が転機となった。

それまでまったく相手にされなかったような大手企業から、逆にこちらに見積もり依頼が届くようになったのです。

この火災をきっかけに、業界全体が不安定になり、「いつもの調達ルートに頼れない時、誰に相談するか」が問われる時代が始まりました。

もちろん、運の要素は大きかった。

でも、僕はその運を掴めるよう、日々淡々と「断られても連絡を続ける」営業活動を続けていた。

だからこれは、運だけではなく、自分の実力だと信じたい。

数字で言えば、累計で100億円に迫る売上(63ミリオンドル超)。僕にとっては、ただの金額ではなく、信頼と執念の積み重ねです。


3. Inside Salesの現場で実践したこと

僕の仕事は**Inside Sales(内勤営業)**です。

電話・メール・チャット・Zoomを使って、すべてをリモートで完結させるスタイル。

最初は「訪問しない営業って信頼されるの?」と不安でしたが、結論から言えばむしろ効率が良く、深い関係も築けます。

以下は、僕がこの5年で特に意識してきたことです:

  • CRMとExcelを徹底的に活用すること 案件管理、リマインダー、送付履歴などをすべて可視化。
  • LinkedInを使って適切な担当者にアプローチすること アポが取れない時の突破口に。
  • 言語を「強み」に変えること 日本語・英語・韓国語を使い分け、社内外で相手に合わせた温度感で提案。

大きな案件は、技術よりも信頼が決め手になることが多い。

その信頼を、画面越しでも築けるように、細部まで丁寧にこだわってきました。


4. 双子の父として、働くということ

営業が板についてきた頃、僕の人生には新しい転機が訪れました。

双子の男の子が誕生したのです。

出産後すぐの2週間は산후조리원(産後ケア施設)を利用し、その後はシッターさんにも助けられながら、夫婦二人三脚で子育てをしてきました。

でも、やはり大変。定時で仕事を終えた後に、もう一つの仕事が始まる感覚。

「自分の時間がない」なんて嘆いてる暇もなく、

日々を乗り越えることが、最大の成果になっていきました。

それでも、自分の仕事にプライドを持ち続けられたのは、

「父であること」「営業であること」「学び続けること」

この三つを、どれも諦めずに生きると決めたからです。


5. 次の5年へ——年収10億ウォンと、その先へ

営業という仕事は、成果がすべてです。

だからこそ、次の目標は明確に掲げたい。

「年収10億ウォンを毎年、安定して得られる仕組みを持つこと」

それが、今の僕の人生設計のゴールです。

手段は一つに絞りません。

営業のスキルを最大限に活かしながら、

  • 韓国での一人法人設立(サブスク費用の法人経費化)
  • ブログやLinkedInを通じた知的発信
  • ChatGPTを使った自己強化と営業最適化
  • 「自分を知る・顧客を知る・提供価値を磨く」思想の定着化

こうした多面的な取り組みを、5年間で仕組みにしていきます。


おわりに

「営業=消耗戦」と思っていた自分が、

「営業=表現と創造の場」としてこの仕事を捉えられるようになった。

その変化が、何よりの成果かもしれません。

5年前は想像もできなかった今があるように、

5年後、想像を超える未来を手にするために、

今日も淡々と、でも戦略的に、積み上げていきます。

イジュンソク氏について:韓国民主化と現在の政治動向

1. 盧武鉉大統領の政治的背景と民主化運動との関係性

盧武鉉(ノ・ムヒョン)は人権派弁護士出身であり、1980年代の軍事独裁政権下で民主化運動に深く関与しました。彼は釜山地域での代表的な冤罪事件「부림사건(釜林事件)」の弁護を1981年に担当し、この頃から権威主義体制への抵抗に身を投じ始めます 。1985年には釜山民主市民協議会(부민협)の結成に参加し、1986年頃から弁護士業をほぼ中断して民主化運動に専念しました。特に1987年6月民主抗争(6月抗争)では、全国的な民主憲法争取国民運動本部(国本)の釜山本部で常任執行委員長を務め、釜山における民主化デモの先頭に立ち「호헌철폐! 독재타도!(護憲撤廃!独裁打倒!)」といったスローガンを叫びながら行進する姿が記録されています 。このように**「釜山民主化闘争の野戦司令官」**とも称される活躍を通じ、盧武鉉は民主化運動家として名を馳せました 。

大統領在任中(2003–2008)の盧武鉉は、市民社会との協働と民主主義の深化を掲げ、「参与政府(パートナーシップ政府)」を標榜しました。彼は権威主義的な政治文化を打破し、国民参加型の政治を目指しており、「민주화 이후 남아있던 권위주의 제도와 문화를 청산한 것」こそが参加政府の最大の業績だと評価されています 。実際、盧政権は検察・国家情報院・警察・国税庁など権力機関の政治的中立化を図り、長年続いた「3金政治」に代表される腐敗・縁故主義の清算に努めました 。また盧武鉉は、市民社会を民主政治の重要なパートナーと位置付け、「80年代以降、市民社会は国政を導く主体となった。それにふさわしく代案を出す活動をしなければならない」と5・18記念式典で述べ、成熟した市民社会が建設的提案を行い合意形成に寄与するよう期待しました (「80年代以降、市民社会は国政を導く主体となった。それに見合った代案を提示する活動をすべきだ」という趣旨)。盧武鉉自身、民主化運動から得た理念を「참여民主주의(参与民主主義)」として継承しようと努めており、退任直前のインタビューでは「6월항쟁은 내 존재의 근거」(「6月抗争は私の存在の根拠だ」)とまで語っています 。この発言は、1987年の民主化運動である6月抗争こそが自らの政治的原点であり正統性の源泉だという強い認識を示すものです。

2. イ・ジュンソク氏の主要な政治的言動とその社会的影響

李俊錫(イ・ジュンソク)は、2010年代から台頭した若手保守政治家であり、斬新なメディア戦略と言動で注目を集めてきました。彼の主張の中でも特に物議を醸したのが、女性家族部の廃止提案と各種クオータ制(割当制度)への反対です。李氏は「女性や青年に対する優遇措置はかえって不公平を生む」と主張し、2021年の保守野党党代表選挙討論でも「기존 ‘파이’를 여성과 남성이 나누는 할당제는 불공정을 야기할 수 있다(既存のパイを男女で分け合うような割当制は重大な不公正を招きうる)」として公然と女性割当制廃止を訴えました 。彼は「女性の社会参加は増やすべきだが、それは労働環境の改善によって達成すべきであり、既存のパイの取り合いになるクオータ制とは区別すべきだ」と強調しています 。このような主張は一部若年層男性の共感を呼ぶ一方、女性層や進歩派から「逆行的」であると強い批判を受けました。

李俊錫の**「20代男性(いわゆる‘イデナム’)へのアピール戦略」は韓国社会に大きな波紋を広げました。2021年ソウル市長補選で20代男性の72.5%という圧倒的支持が保守候補に集まると、当時選対幹部だった李氏はSNSに「20대 남자. 자네들은 말이지…(20代男性、君たちは…)」と投稿して若年男性を勝利の立役者として称賛しました 。これ以降、政治圏では彼の「성별 갈라치기」**(ジェンダーで世論を割る)戦術が大きな論争となります。彼が主導した「女性家族部廃止」「逆差別是正」といったアジェンダは、一方で20代男性からの支持を集め保守票の底上げに寄与したとの評価もありますが、他方で20代女性を中心に強い反発を招き「逆風」となったとの分析もあります 。実際、2022年大統領選の出口調査では20代男性の約59%が尹錫悦(ユン・ソギョル)保守候補に投票した一方、20代女性の支持はそれよりはるかに低く、男女間の投票行動の断層が顕著でした 。李氏の戦術は熱狂と怒りを同時に引き起こし、韓国社会の性別・世代間対立を浮き彫りにしたと言えます。

李俊錫のSNS発信の特徴もその政治手法の重要な一面です。彼はフェイスブックやユーチューブを駆使して迅速かつ挑発的なメッセージを発信し、既存メディアに頼らず直接支持者と対話・論戦するスタイルを取りました。党内紛争時には深夜にSNSで皮肉交じりのコメントや流行のアニメ主題歌を投稿して含意を示すなど、“키보드 배틀(キーボード戦闘)”に長けた政治家として知られます 。しかしその奔放な発信ゆえに物議を醸すことも多く、特に女性や弱者に関する発言では度々「女性蔑視」批判を浴びました。例えば李氏はインタビュー等で「‘夜道を女性が歩きたくない’というのは被害妄想に近い」とか「2030女性が自分たちが差別されているという根拠のない被害意識を持つようになっている」などと発言しており 、「現実のジェンダー不平等を直視していない」「女性の声を嘲弄している」として進歩派メディアや活動家から強く非難されています(※李氏の発言原文: “(밤에 길거리를) 걷기 싫어하는 이유가 ‘여성이 안전하지 않은 보행 환경에서 비롯됐다’고 말한 것은 망상에 가까운 피해의식”, “2030 여성들이 소설과 영화 등을 통해 본인들이 차별받고 있다는 근거 없는 피해의식을 가지게 된 점도 분명히 있다” )。

李俊錫は保守政党・国民の力の歴代最年少党代表となりましたが、古参保守層との関係は終始緊張を孕みました。党内では彼の急進的とも言える改革志向やスタンドプレーに反発も強く、2022年には内部紛争の末に党倫理委員会から懲戒処分を受け党代表職を追われます。こうした経緯もあり、一部の保守政治家からは李氏の手法を「분열의 리더십(分裂のリーダーシップ)」と批判する声も上がりました。党内競争相手だった羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)氏は李氏について「끊임없이 여성과 남성을 가르고 세대를 나눈다(絶えず男女を分け、世代を分断している)」と述べ、彼のスタイルを米国トランプ流のポピュリズムになぞらえて**「트럼피즘」**だと酷評しています 。このように李俊錫の言動は、韓国社会の一部に新風を吹き込む一方で、強い反発と論争を巻き起こし続けているのが実情です。

3. 日経新聞・峯岸博氏の韓国政治関連論説の傾向

日本経済新聞の峯岸博論説委員は韓国政治、とりわけ進歩系勢力に対して批判的な論調で知られています。峯岸氏は長年ソウル特派員・編集委員として韓国の政治外交を分析しており、近年では著書『日韓の決断』(2023年)を通じて尹錫悦政権を誕生させた韓国社会の変化について論じています。その論説の傾向を見ると、共に民主党を中心とする韓国左派勢力に対しては、その歴史的背景やイデオロギーに着目した批評を行うケースが多く見られます。一例として峯岸氏は文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の政権について「北朝鮮優先の文政権が受け継ぐ『NL系』学生運動の系譜」と題したコラムを執筆し 、文政権与党の中核が1980年代の민족解放(NL)系学生運動出身者で占められていると指摘しました。彼は「문政권을支える秘書室と大統領首席室メンバーのうち65%がNL」との分析を引用し、NL派学生運動が指導者への無条件服従を特徴とした点に言及した上で「현재 청와대で文大統領を囲む参謀たちの関係도似ている(現在の青瓦台で文大統領を取り巻く参謀たちの関係もそれに似ている)」との保守系学者の見解を紹介しています 。さらにNL系運動家について「金日成・金正日に心酔した者もおり、保守陣営から『主体思想派』と批判された」とし、文政権の中枢に対北朝鮮融和的・反米民族主義的傾向が色濃いことを暗に示唆しました 。このように峯岸氏の論調は、韓国進歩派を**「学生運動時代から変わっていない」**イデオロギー集団として描き、その政策(対北・対日姿勢など)も理念偏重であると論じる傾向が見られます。

一方、韓国の保守政治家に対する峯岸氏の記述は、進歩派に比べて相対的に肯定的もしくは政策面に焦点を当てたものが多いようです。例えば尹錫悦大統領については、峯岸氏はその対日外交の転換を高く評価しており、著書でも「2022年5月に就任した尹錫悦氏は文前政権の対日政策を刷新し、『国交樹立以降で最悪の状態』を改善するため大きく舵を切った」と述べています 。尹大統領が歴史問題で「日本は既に数十回にわたり反省と謝罪を表明している」と明言し、過去志向の日韓関係を変えようとしたことについて、「従来の韓国政権とは大きく異なる決断」として高く評価しています 。また徴用工問題での解決策提示に尹政権が踏み込んだ際には、「『反日の政治利用』に韓国大統領自ら言及したことに日本人は驚いた」とし、尹氏の決断力と従来路線からの決別を称賛しています 。こうした記述からは、峯岸氏が保守勢力の現実路線や日韓関係改善の動きには肯定的な評価を与え、進歩勢力の民族主義的・急進的な側面には批判的な姿勢を取っていることが読み取れます。ただし峯岸氏は韓国右派の過激な動きにも全く触れないわけではなく、例えばソウル都心での保守・左派団体の衝突について「過激派団体が中心」 と述べるなど、韓国政治全体における過激化現象にも言及しています。しかし総じて、日経新聞紙面における峯岸博氏の論説は韓国左派への警戒感を強調し、保守政権の政策転換には理解を示すバランスで書かれているといえるでしょう。

4. 韓国の民主化の蓄積 vs 近年のポピュリズム潮流

1987年の民主化以降、韓国は民主主義の制度化と定着に大きな成果を上げてきました。市民による直接選挙で政権交代が常態化し、言論・集会の自由拡大や地方自治の復活(1995年地方選挙実施)を通じて、政治体制は着実に民主化されてきました。2000年代には過去の権威主義体制下の人権侵害を清算する真相究明や歴史和解の取り組みも行われ、腐敗防止や司法の独立性強化など民主的統治の基盤が整備されました 。特に盧武鉉政権期には、民主化以降も残存していた開発独裁時代の「권위주의(権威主義)的な制度・文化」の一掃が図られ、国家権力機関を私的に利用する慣行に歯止めをかけたことが評価されています 。また市民社会も量的・質的に成長し、2000年代以降はキャンドルデモに象徴されるような草の根民主主義の力が国政に影響を与える場面も増えました。2016年の朴槿恵大統領弾劾を求める촛불집회(ろうそく集会)は、その頂点とも言える出来事で、市民の力で平和的に政権を交代させ民主主義を守ったとして世界的にも称賛されました 。このような民主化の蓄積により、韓国は形式的な民主制から実質的な市民参加民主主義へと前進したのです。

しかし近年、その民主主義の成熟と併走する形で新たなポピュリズム的・反動的潮流も台頭しています。まず顕著なのが若年男性層を中心としたアンチフェミニズム(反女性主義)の流行です。2010年代後半からインターネット発の男性優位論やフェミニズム批判が拡散し、SNSやオンラインコミュニティで「逆差別」に対する怒りを訴える声が大きくなりました。これは経済停滞下で競争が激化する中、「女性優遇政策(女性割当や女性家族部の存在など)が自分たちの機会を奪っている」と感じる一部男性の不満を背景としています 。保守政治家の李俊錫や尹錫悦はこの不満に着目し、「女性家族部の廃止」や「男女平等兵役の検討」などを掲げて20代男性の支持獲得を狙いました 。尹錫悦大統領は選挙戦で「女性家族部 폐지(女性家族部廃止)」とSNSに投稿するシンプルなスローガンを打ち出し、事実上この反フェミニズムの情念を政治利用したと評されています 。こうしたポピュリズム的戦略は短期的には一定の票につながりましたが、一方で女性や進歩的市民から「民主主義の価値である男女平等を後退させる動き」と強い反発を招きました 。韓国社会は民主化運動の成果として法制度上は男女平等や少数者の権利が保障されてきただけに、それを否定するかのような潮流との軋轢が生じているのです。

また政治的反動主義とも言える現象として、民主化勢力への歴史的バックラッシュ(逆戻り)も指摘されます。民主化以降も根強く残る一部保守層は、軍事政権期を美化・懐古する傾向があり、文在寅政権期に進んだ過去清算に反発して「뉴라이트(ニューライト)」と称する歴史修正主義的言説を展開しました。2021年の大統領選において尹錫悦候補(当時)は「전두환 대통령이 쿠데타와 5·18만 빼면 정치는 잘했다(全斗煥大統領は軍事クーデターと5・18さえ除けば政治はよくやった)」と発言し、大きな物議を醸しています 。この発言は民主化運動を踏みにじるものとして与野党・メディアから激しい批判を受け、尹氏は一応の謝罪を表明しましたが 、彼の支持基盤には依然として開発独裁期への郷愁を持つ層も存在します。実際、朴槿恵前大統領の弾劾後には、これに反対する保守強硬派が**「태극기부대」**(太極旗部隊)と呼ばれる大規模街頭デモを繰り広げ、一部は文在寅政権打倒を掲げて過激化しました。こうした現象は、市民革命としての民主化の流れに対抗し「既得権や伝統的価値を守る」ことを標榜する反動的ポピュリズムといえます。そこにはしばしばデマや陰謀論も交えて大衆の不安を煽り、民主主義的ルールより情緒や対立感情を優先する政治スタイルが見られます。

要するに、韓国の民主化運動の蓄積が生んだ制度化された民主主義と、市民意識の成熟は大きな財産ですが、その一方で近年台頭したポピュリズム・反動主義はその民主主義を新たな角度から試しています。これは単なる保革対立に留まらず、「民主化=進歩」と「反動=保守」という構図で社会の亀裂を深めかねない構造的対立軸です。男女平等や歴史清算といった民主化の成果を守ろうとする勢力に対し、「既得権を打破する」という名目で逆にそれらを否定する勢力が支持を広げている現状は、韓国民主主義にとって大きな課題となっています。韓国社会がこの軋轢を調整し、民主主義の深化と統合を図れるか否かが、今後の政治発展の鍵を握っていると言えるでしょう。

5. 韓国国内でのイ・ジュンソク評価:支持基盤と言論の見解比較

李俊錫に対する韓国内の評価は、賞賛と批判が鮮明に分かれています。その肯定的評価としては、「30代で既成政治に風穴を開けた改革者」「デジタル時代に適応したコミュニケーション上手な政治家」といった声が挙げられます。李氏が2021年に36歳の若さで野党党代表に選出された際、多くの国民は世代交代への期待を寄せました。実際、主要紙もその当選を大きく報じ、保守系の『朝鮮日報』は社説で「‘30대 이준석 대표’ 등 野에 청년 혁명, 낡은 정치 확 바꾸란 국민 명령(30代李俊錫代表など野における青年革命は、古い政治を根本から変えよという国民の命令だ)」と謳い、若いリーダー登場への期待感を表明しました 。進歩系『ハンギョレ』ですら「36살 이준석 대표, ‘보수혁신·정치변화’ 기대한다(36歳の李俊錫代表に『保守革新・政治の変化』を期待する)」と題する社説を掲載し、イデオロギーの違いを超えて若返りそのものは歓迎する論調でした 。支持者層を見ると、李俊錫を熱烈に支持するのはネット世代である20〜30代の男性が中心です。彼らは李氏の率直な物言いや既得権層への挑戦姿勢に共感を寄せており、「我々の鬱憤を代弁してくれる存在」と捉えています 。特に就職難や競争激化に晒される若年男性層にとって、李俊錫の唱える「逆差別是正」や「能力主義」志向は支持を集めました。一部では彼を支持するオンラインコミュニティが結成され、ネットスラングやミームを駆使して李氏を盛り立てる文化も生まれています。

しかし一方で、李俊錫に対する否定的評価・批判も根強く存在します。進歩派・女性層を中心に彼は「幼稚なヘイト政治家」「民主主義の価値を後退させている」と見なされています。とりわけ20代女性からの嫌悪感は顕著で、ある世論調査では**「20代女性が最も嫌う政治家」の筆頭に李俊錫の名前が挙がった**との報道もありました 。現に2022年大統領選の直前、若年層女性の間で「이준석 OUT」プラカードを持って抗議する動きまで報じられています(オンライン発のフェミニスト抗議運動)。彼女らにとって李氏は、女性の声を嘲笑しジェンダー対立を煽った張本人であり、韓国社会の男女平等進展に逆行する存在です。また保守陣営内でも、李俊錫に否定的な勢力は少なくありません。党内長老や伝統的保守層の中には、李氏の立てた戦略が女性や中道層の反発を招き選挙を危うくしたと非難する向きもあります 。2021年末から22年にかけての国民の力内部の葛藤では、李代表と尹錫悦候補(当時)の対立が表面化し、党内一部は李氏を「自己顕示欲が強く統制不能」と見做して彼の辞任を要求しました。結局李氏は党指導部から追放される形になりましたが、そうしたプロセスにも「若輩者の李俊錫には党運営は荷が重い」という年長世代の冷ややかな評価が垣間見えます。

韓国主要メディアも李俊錫に対してそれぞれ立場の違う論調を展開しました。進歩系メディア(例:ハンギョレ、京郷新聞、オーマイニュースなど)は、当初こそ彼の登場に一定の期待感を示したものの、彼のジェンダー発言が目立つにつれ強い批判に転じました。ハンギョレ新聞は社説で「民主化世代を嘲弄する無歴史的な妄言」として李氏の発言を糾弾し 、「彼は民主主義の理念に対する無知を露呈している」と断じています 。またオーマイニュースは詳細な分析記事の中で、李俊錫の戦略が20代女性の強い怒りを買い選挙のマイナス要因になった可能性を指摘しつつ、彼が作り出した20代男性支持層の影響力にも言及しました 。これら進歩系の論調は総じて、「李俊錫現象」は韓国社会の弱者分断を深める危険なポピュリズムだというトーンです。一方、保守系メディアは李俊錫に対し当初肯定的で、『朝鮮日報』は前述のように党代表就任時には世代革命として持ち上げました 。しかしその後、李氏と尹錫悦陣営の内紛が表面化すると『朝鮮日報』は一転して「新しい政治への期待を裏切る奇異な行動だ」と李氏を批判する社説を掲げました 。同紙は李氏が党内紛争中に代表職に固執した態度を問題視し、「젊은 리더로서의 책임感 부재」(若きリーダーとして責任感を欠いている)と評しています 。保守寄りの『中央日報』や『東亜日報』も論調はおおむね似通っており、李俊錫の斬新さは評価しつつも、党内対立や逸脱発言に対しては「未熟さ」を指摘する姿勢でした。中央日報のあるコラムニストは「李俊錫は瞬発力はあるが統合のビジョンを欠く」として、彼が一匹狼的に暴走する危険性に警鐘を鳴らしています(※中央日報2022年1月付コラム)。

総合すると、李俊錫は韓国政治において極めて評価の分かれる人物です。支持者にとっては既成政治を打破する象徴であり、「公正」を掲げる改革者ですが、批判者にとっては社会的弱者への配慮を欠き対立を煽るポピュリストです。その支持基盤は主に若年男性層・都市中産層にあり、逆に女性や進歩的市民層からの反発は強烈です。このような評価の二極化自体が、韓国社会の世代間・性別間の溝を表しているとも言えるでしょう。今後、李俊錫が評価を覆すような長期的ビジョンと統合力を発揮できるか、それとも一過性の「現象」に留まるのか――韓国の主要各紙も注目を続けており、その論調は韓国社会の世論動向を映す鏡となっています。

引用・参考資料(※出典は媒体種別ごとに分類、必要に応じ韓国語原文と日本語訳を併記)

メディア(進歩系): ハンギョレ新聞社説「‘전두환 미화’ 망언…윤석열の民主主義モラル欠如を露呈」 原文: “전두환 미화’ 망언으로 곤욕을 치렀던 윤석열 국민의힘 대선 후보가 이번에는 전두환 군사독재에 맞서 싸웠던 1980년대 민주화운동을 폄훼하는 망발…”(「全斗煥美化」という妄言でひんしゅくを買った尹錫悦候補が、今度は全斗煥軍事独裁と戦った1980年代の民主化運動を貶める妄言を…」) 日本語訳: 「尹錫悦候補はまたしても、全斗煥軍事独裁に抗した1980年代の民主化運動を貶める暴言を吐いた…」。 オーマイニュース記事「이대남은 정말 여가부 폐지에 열광했을까?(20代男性は本当に女家部(女性家族部)廃止に熱狂したか?)」 原文: “선거 과정에서 … 윤석열 국민의힘 대선 후보와 이준석 대표의 태도는 열광과 분노를 동시에 일으켰다. … 20대 남성이라는 ‘청년 지지층’을 형성했다는 성과를 높게 사야 한다는 이야기도 있다.”(選挙過程で…尹錫悦候補と李俊錫代表の態度は熱狂と怒りを同時に引き起こした。…20代男性という「若年支持層」を形成した成果を高く評価すべきとの声もある。) 日本語訳: 「選挙過程で…尹錫悦候補と李俊錫代表の態度は熱狂と怒りを同時にもたらした。しかし冷静に見ると、その熱狂が票に結びついたかは疑問だ…20代男性という『若い支持層』を作り出した功績は評価すべきとの声もある。」 プレシアン(Pressian)記事「이준석 ‘기존 파이 나누는 여성 할당제는 불공정’」 原文: “최근 논의되는 할당제 등은 … 기존에 있는 ‘파이’를 여성과 남성이 나누는 부분에 대한 것이다. 이런 부분은 상당한 불공정을 야기할 수 있기 때문에…”(最近議論されている割当制等は…既存のパイを女性と男性が分け合うものだ。このような部分は相当な不公正を引き起こし得るため…) 日本語訳: 「最近議論されているクオータ制などは…既存のパイを女性と男性で分け合うものだ。このような手法は重大な不公正を招きかねないため…」。 また同記事では李俊錫氏の過去発言として、“여성이 안전하지 않은 보행 환경 때문이라는 말은 망상에 가까운 피해의식”, “2030 여성들이 … 근거 없는 피해의식을 가지게 된 점도 분명히 있다” と紹介。これは「『夜道が女性にとって安全でないから歩きたくない』というのは被害妄想に近いし、20〜30代女性が根拠のない被害意識を持つようになっているのも確かだ」という李氏の発言で、女性差別を否定する内容として批判された。 ハンギョレ新聞記事「“이준석 대표 당선이 세대교체? 전략적 선택이다”」 原文: “한국 헌정사상 최초로 36살 청년이 유력 정당 대표에 오른 ‘일대 사건’이라 …”(韓国憲政史上初めて36歳の青年が有力政党の代表に上がった「一大事件」で…) 日本語訳: 「韓国憲政史上初めて36歳の青年が有力政党の代表に就任した『一大事件』で…」(李俊錫党代表当選に関する報道)。 メディア(保守系): 朝鮮日報社説「‘30대 이준석 대표’ 등 野에 청년 혁명…」 原文: “국민의힘에서 36세 청년 이준석이 당대표로 선출됐다. … 30대 당수가 나온 것은 헌정 사상 처음이다.”(国民の力で36歳の青年李俊錫が党代表に選出された。…30代の党首が出たのは憲政史上初めてだ。) 日本語訳: 「国民の力で36歳の青年、李俊錫氏が党代表に選出された。30代の党首が誕生するのは憲政史上初のことである。」 朝鮮日報社説「새 정치 기대 저버린 이준석 대표의 기이한 행태」 原文: “이준석 … 당대표는 스스로 그만두지 않으면 사퇴시킬 방법이 없다고 한다.”(李俊錫…党代表は自ら辞めない限り辞職させる方法がないという。) 日本語訳: 「李俊錫…党代表は自ら辞めない限り解任する方法がないという。(※党内危機時に李氏が辞任拒否した状況への批判)」 東亜日報記事(2021年10月20日)「윤석열 ‘전두환 옹호’ 논란」 (※東亜日報を含む複数の保守系メディアが、尹錫悦候補の「全斗煥擁護」発言について批判的に報道 。尹氏自身も「軽率だった」として遺憾を表明した 。) 政府・機関資料: 민주화운동기념사업회(民主化運動記念事業会)オープンアーカイブ「노무현, 역사속으로 걸어 들어가다」(2016年) 内容: 盧武鉉氏の人権弁護士としての活動(1981年釜林事件の無料弁護)、1985年釜山民主市民協議会への参加、1987年6月抗争での釜山国本常任委員長としての闘争などを記録。 原文抜粋: “1987년 6월항쟁의 흐름속에서 민주헌법쟁취국민운동본부(국본)가 결성되자 부산 국본의 상임위원장을 맡아 부산 민주화운동의 야전사령관이 되어 거리에 나왔다.” 日本語訳: 「1987年6月抗争の流れの中で民主憲法争取国民運動本部(国本)が結成されると、盧武鉉弁護士はその釜山本部の常任委員長を引き受け、釜山民主化闘争の野戦司令官として街頭に立った。」 韓国民族文化大百科事典「참여정부(參與政府)」(韓国学中央研究院) 内容: 参与政府(盧武鉉政権)の定義と評価について解説。 原文抜粋: “노무현 참여정부의 최대 업적은 민주화 이후 남아있던 권위주의 제도와 문화를 청산한 것이다.” 日本語訳: 「盧武鉉参与政府の最大の業績は、民主化以後も残っていた権威主義の制度と文化を清算したことである。」 日本経済新聞出版社 書籍紹介『日韓の決断』(峯岸博著, 2023年) 内容: 尹錫悦政権の対日政策転換と日韓関係改善への意欲を紹介。 原文抜粋: “2022年5月に韓国大統領に就任した尹錫悦氏は、文在寅前政権の対日政策を刷新し、『国交樹立以降で最悪の状態』を改善するため大きく舵を切った.” / “従来の韓国の政権とは大きく異なる尹大統領の決断…” 日本語訳: 「2022年5月に韓国大統領に就任した尹錫悦氏は、文在寅前政権の対日政策を刷新し、『国交樹立以来最悪の状態』だった両国関係を改善すべく大きく舵を切った。」 / 「従来の韓国政権とは大きく異なる尹大統領の決断…」。 日本経済新聞電子版コラム(峯岸博執筆, 2020年10月9日)「北朝鮮優先の文政権が受け継ぐ『NL系』学生運動の系譜」 内容: 文在寅政権の中枢を占める「86世代」学生運動出身者(特にNL系)の思想的背景を分析。 原文抜粋: “임종석氏は NL系の元指導者だ… 7月の大統領府人事で再び起用された. 문 대통령はさらに, 全大協 初代議長だった 이인영氏を 統一部長官に抜擢した.” / “보수系の政治学者は語る. ‘현재の青瓦台で文大統領を囲む参謀たちの関係も似ている’” 日本語訳: 「任鍾晳氏(文政権初代秘書室長)はNL系の元指導者だ…文大統領はさらに、全大協初代議長だった李仁栄氏を統一部長官に抜擢した。」 / 「保守系政治学者は語る——『現在の青瓦台で文大統領を取り囲む参謀たちの関係も(かつてのNLの上下関係に)似ている』」。 SNS: 峯岸博氏のX(旧Twitter)投稿 (日本経済新聞論説委員として自己紹介) 内容: 著書『日韓の決断』の紹介文や担当分野の説明。尹政権登場やイデナム(20代男性)・イデニョ(20代女性)の実像分析に関心を示唆する内容。 (※信頼性補足: 峯岸氏本人の発信であり論説委員の公式見解ではないが、その問題関心の一端が窺える)。 李俊錫氏フェイスブック投稿(2021年4月ソウル市長補選直後) 内容: 「20대 남자. 자네들은 말이지…」と20代男性に呼びかけ、保守候補勝利への貢献を称賛した投稿。 原文: “20대 남자. 자네들은 말이지…”(20代の男子諸君、君たちはね…) 日本語訳: 「20代の男性諸君。君たちは…」(※以下に選挙勝利を讃える文言が続く). (※信頼性補足: SNS上の政治家本人の投稿であり、一次資料だが発言内容の真偽は投稿者の主観に基づく。)

(以上)

日経新聞の韓国進歩派への冷笑的論調の背景

1. 日経新聞の編集方針・企業理念・想定読者層

日経新聞は日本を代表する経済紙であり、創刊以来一貫して経済・ビジネス分野に重点を置いてきました。社是は「中正公平、我が国民生活の基礎たる経済の平和的民主的発展を期す」とされており 、経済の安定成長を何より重視する姿勢がうかがえます。また、政治的スタンスも中道右派・保守寄りと評され、国際的には新自由主義的な立場をとると分析されています 。実際、2009年の新聞通信調査会調査で日経の論調は主要全国紙中「やや保守」と位置づけられ、読売(5.6)・産経(5.3)に次ぐ**5.2点(10点=最も保守、0点=最も革新)**という結果でした(朝日は4.4、毎日は5.0) 。このように基本路線は保守寄りですが、「中正公平」の理念も掲げており露骨なイデオロギー色は抑えています。

日経の想定読者層は経営者・管理職などビジネスエリートが中心で、読者世帯の平均年収は他紙より高く、大卒以上の割合も全国紙トップです 。このビジネス志向の読者層に合わせ、紙面は政治・外交問題でも経済的影響や国益を軸に報道する傾向があります。政府・財界との結び付きも強く、自民党政権とは政策面で比較的協調関係にあると指摘されています。実際、安倍政権期の経済政策「アベノミクス」には概ね肯定的で、財政・金融政策の路線でも日経は政府と歩調を合わせる論調でした。また、防衛・安全保障面でも現政権の軍備増強路線を後押しする報道が目立ち、ジャーナリストの望月衣塑子氏は「日経新聞は産経新聞顔負けの記事を打つようになった」とその傾向に警鐘を鳴らしています 。このように経済紙としての性格と政権・企業との近さが、日経の基本トーンを形作っています。

2. 韓国報道における日経の特性

対韓国報道のスタンスも日経の基本方針に沿ったものです。他の日本メディアと比較すると、日経は経済・安全保障の観点から韓国情勢を分析し、保守系寄りの現実主義的論調を取る点が特長です。他方、朝日新聞や毎日新聞はリベラル傾向で韓国側の主張にも一定の理解を示す論調が多く、産経新聞は歴史問題などで韓国進歩派に極めて批判的・保守ナショナリスティックな論調が目立ちます。日経はその中間に位置すると言えますが、総じて保守寄りであり、朝日・毎日ほど韓国に共感的ではなく、産経ほど極端な表現もしないというバランスです。ダイヤモンド社の分析によれば、2018年頃の日韓対立局面では朝日・毎日ですら文在寅政権に厳しい意見を述べており、各紙とも自国政府寄りの「増幅装置」として機能した面があるとされています 。その中で日経も日本政府の立場を強く反映し、韓国進歩政権への批判的論調を展開しました。

日経ソウル支局の取材体制にも特徴があります。通信社を除く日本メディアでは比較的長期にわたり人員を配置しており、経済専門紙だけあって韓国経済の分析報道に強みがあります。歴代ソウル特派員・支局長には玉置直司氏(著書『韓国はなぜ改革できたのか』『韓国財閥はどこへ行く』等)や鈴置高史氏(後述)など韓国通が名を連ねました 。特に近年注目すべきは峯岸博論説委員の存在です。峯岸氏は元ソウル支局長で韓国駐在6年半、訪朝7回の経験を持ち、朝鮮半島情勢に精通した論客です 。著書に『韓国の憂鬱』『日韓の断層』を持ち、日経電子版でニューズレター「韓国Watch」を隔週配信するなど、韓国報道のキーパーソンとなっています 。峯岸氏をはじめとする記者たちは、韓国の政治・社会を長年観察する中で日経らしい現実主義の観点から分析記事や解説を発信しており、その論調は本社の社説・記事にも反映されています。過去を振り返ると、1980年代にソウル特派員を務めた鈴置高史氏(2018年退社後も韓国観察者として執筆)も、日経在籍中から韓国の動きを辛口に分析するコラム「早読み 深読み 朝鮮半島」を展開していました 。こうした人材の系譜が日経の韓国報道を支え、他紙との差異を生んでいます。具体的には、朝日・毎日が人権や歴史問題で韓国側の主張に一定の理解を示す局面でも、日経は経済合理性や外交儀礼を重視する立場から冷静に批判・注文を付けることが多いです。逆に産経新聞ほど感情的・挑発的な表現は避け、事実関係の分析に基づきつつ韓国側の問題点を指摘するスタイルを取っています。この点で、「ビジネス寄りの理論派保守メディア」としての日経の色彩が韓国報道にも表れていると言えるでしょう。

さらに、日経は韓国国内の保守系メディアとの交流も一定程度持っています。例えば韓国有力経済紙の毎日経済新聞とは、人材研修で協力した経緯もあり 、韓国経済ニュースの相互配信(NikkeiテレコンにMK英字ニュース収録)など関係を築いてきました。このため経済分野の情報交換や視点の共有があり、保守系・財界寄りの視点を持つ韓国メディアとは報道姿勢に共通点も見られます。一例として、文在寅政権下で日経が報じた経済失政批判(後述)は、韓国保守紙の朝鮮日報も詳細に紹介し論拠としました 。こうした部分でも日経の韓国報道は他の日本紙と一線を画し、経済紙らしいネットワークと観点を活かしていると言えます。

3. 日経の重視する「現実主義・経済合理性」と韓国進歩陣営の理念政治の齟齬

日経新聞の論調の核にあるのはリアリズム(現実主義)と経済合理性です。国家間の約束や経済政策は「損得勘定」「安定性」「一貫性」で判断され、情緒的な揺らぎやイデオロギー優先の動きを嫌う傾向があります 。これと韓国進歩陣営の政治スタイルとの間にしばしば齟齬が生じます。文在寅・盧武鉉両政権に代表される進歩系は、歴史認識や対北融和、急進的な経済改革など理念や大義を掲げた政治を展開しました。例えば「積弊清算」や財閥改革、最低賃金大幅引上げ、過去の日本統治に関する強硬姿勢(慰安婦合意の見直しや徴用工問題での厳格対応)などが挙げられます。これらは韓国国民の声を背景にした価値志向の政策ですが、日経から見ると時に「理想論が先行しすぎて現実的配慮に欠ける」と映ります。

実際、日経は文在寅政権の動きに対し「感情的」「未熟」とも取れる評価を繰り返しました。象徴的なのが2015年の日韓慰安婦合意をめぐる対応です。文在寅政権が2018年に合意検証を行い事実上の見直し方針を示すと、日経は社説で「日韓合意の精神を骨抜きにする内容で極めて遺憾だ」と断じ、韓国側の態度を「慎重さと一貫性を欠く」と批判しました 。さらに「相互不信が深まれば北朝鮮の思うつぼだ。韓国の文政権には慎重で一貫性のある外交を進めてもらいたい」と注文を付けており 、感情に流されず現実を見据えよというメッセージが明確です。「慎重で一貫性ある外交」とは裏を返せば、進歩政権の外交が場当たり的で感情に振り回されているとの批判に他なりません。

また、経済面でも日経は文在寅政権の経済政策を経済合理性の欠如という観点から批判しました。2018年11月、日本経済新聞は「韓国の経済政策が一段と迷走してきた。主要経済指標が軒並み悪化。雇用も増えない。景気の減速感がさらに強まる」と論じ、文政権の看板政策である「所得主導の成長」が軌道に乗らず失速していると報じました 。さらに文大統領が経済司令塔2人を更迭した人事にも触れ、テコ入れ策に乗り出したことを紹介しています 。同じ記事で日経は「危機感を強める経済界は政府に規制緩和を要請。文政権は企業に歩み寄る姿勢もみせている。だが、大幅な軌道修正は支持基盤である労働組合などの反発を招きかねず、難しいバランスを迫られているのが実情だ」と分析しました 。ここには、政府の分配重視政策が非現実的であり結局は市場原理・企業寄りに修正せざるを得ない状況を皮肉交じりに描写するトーンがあります。「迷走」「難しいバランス」といった表現から、日経が文政権をいかに冷ややかに見ていたかが読み取れます。

こうした「感情的」「未熟」といった形容は紙面上で直接使われることは稀かもしれませんが、日経の論調全体からにじみ出る評価として進歩陣営に投げかけられています。例えば日経ビジネスオンラインなどで韓国情勢を論じていた元編集委員の鈴置高史氏は、文政権の対日・対米姿勢を「幼稚なバランス外交」と批判し、日本は相手にしなくなっているとする論調を展開しました(鈴置氏「韓国に対する日本の無視」等のコラムより) 。鈴置氏は日経退社後も保守系メディアで韓国批評を続けていますが、彼の見方は在職中の日経紙面のトーンとも通底しており、「韓国進歩派=稚拙で信頼しにくい」というフレームが存在することを示唆しています。総じて日経は**「安定・協調路線こそ合理的」**との信条から、進歩陣営の理想主義的な政策を現実離れしたものと捉え、そのギャップが冷笑的態度として表れていると考えられます。

他方で、日経は全ての韓国政権に否定的というわけではありません。むしろ保守系政権に対しては安定志向や市場重視の点で親和的です。朴槿恵政権時代には韓中接近への警戒感を示しつつも経済協力には理解を示したり、李明博政権時代にはFTA推進など市場改革を評価する記事も見られました。直近では尹錫悦政権による日韓関係改善策(徴用工問題の解決策提示やGSOMIA復元など)に対し、日経は「関係改善を歓迎する。韓国の現実的判断を評価する」といった肯定的な論調を示しています(2023年3月7日社説「韓国の決断を日韓協力深化につなげよ」等)。つまり日経が批判するのはあくまで「非現実的」と映る進歩政権の言動であり、逆に日経の価値観に沿う動きを見せる韓国政府には好意的なのです。この点もまた、日経の論調がイデオロギーというより「現実路線か否か」で決まっていることを物語っています 。

4. 韓国読者や韓国メディアから見た日経の論調評価

韓国側でも日経新聞の報道はしばしば引用・話題に上りますが、その評価は読む立場によって大きく異なります。

まず、韓国の進歩系メディア・読者から見た日経の論調は「日本保守層の代表的な見解」と映る傾向があります。リベラル紙のハンギョレ(韓国語版)などでは、日本の主要紙が慰安婦合意を支持・歓迎した事実に触れ「日本の進歩的メディアですら韓日合意の一方的履行を求めた」と失望を表明する声もありました 。例えば2015年末の慰安婦合意直後、日本の朝日新聞や毎日新聞(国内ではリベラル紙と分類されます)でさえ合意を高く評価し歓迎論を展開したことは、韓国進歩層にとって衝撃でした 。この文脈で日経はむしろ読売・産経に近い立ち位置と認識されており、「結局、日本メディアは左右関係なく自国政府寄りで韓国に冷淡だ」という印象を与えています。韓国の進歩派から見ると、日経の論調は冷笑的というより冷酷で偏ったナショナルな視点に映ることもあるでしょう。ハンギョレや京郷新聞といった進歩系メディアでは、日経を名指しして批判する記事は多くないものの、日本経済新聞を含む日本メディア全般が韓国の事情に十分な理解を示さず、自国中心の報道をしているという論調は散見されます(例:「日本のリベラルですら慰安婦合意を支持した」という嘆き )。

一方、韓国の保守系メディア・読者にとって日経新聞は参考に値する有力外国メディアです。特に日経の経済分析や政権批評は、韓国保守層が自らの主張を補強する材料としてしばしば利用します。朝鮮日報や中央日報など保守紙は、日本発のニュースを伝える際に日経の記事を引用・翻訳することが多く、文在寅政権期には日経の政権批判記事が何度も紹介されました。例えば朝鮮日報は2018年11月、「『韓国の経済政策迷走』と日経が報道」との見出しで日経記事の内容を詳細に伝えました 。そこでは日経による韓国経済指標のグラフ分析や「文政権の左翼的経済政策の失敗」といった論評をそのまま掲載し、韓国国内でも大きな話題となりました。実際に、文政権の経済ブレーンであった金広斗・国民経済諮問会議副議長はこの日経記事のグラフを自身のSNS(Facebook)でシェアし、「見たくないが見据えるべき現実だ」とコメントしています 。これは野党からの批判を受け止めた形で、日経の指摘が韓国国内の政策議論にも影響を与えた例と言えます。

また、政治分野でも2019年前後の日韓対立激化時には、日経の論調が韓国で注目されました。徴用工判決や輸出管理問題で日経は一貫して韓国側の対応を問題視する記事を出しましたが、これに対し韓国の保守系論客は「日本の有力紙でさえ韓国政府を信頼していない」として文政権批判に引用しました。逆に進歩系論客は「日本メディアは偏見に満ちている」と反発し、韓国国内の世論は割れました 。尹錫悦政権が発足した現在では、日経は尹大統領の対日接近を歓迎する報道を行っており、韓国保守層から「さすが経済紙、現実を評価している」との声がある一方、進歩層からは「日本は尹政権に都合の良いことしか報じない」と冷ややかに受け止められています。

総じて、韓国における日経の評価は二極化しています。経済・安保の観点から冷静に韓国を論じる媒体として一目置かれる反面、進歩派に対しては上から目線の批評が多いメディアという印象も持たれています。韓国メディア自身、日経の論調をウォッチしており、その内容が韓国国内政治の論争に利用されることもしばしばです。例えば、日経が「尹錫悦政権の外交は現実的だ」と評価すれば保守派は歓迎し、日経が「文在寅政権の対応は感情的だ」と批判すれば進歩派は反発するといった具合です。日経新聞は日本国内だけでなく韓国でも影響力のある外国メディアとして位置付けられており、その論調は韓国の新聞・テレビでも紹介され政治家の発言にも引用されます。しかしその受け止め方は、韓国社会のイデオロギー対立を反映して正反対となりがちです。

要約すれば、韓国の読者・メディアから見た日経の論調は「日本の保守エスタブリッシュメントの代弁者」という色彩が濃く、進歩陣営には否定的・懐疑的、保守陣営には共感的に映ります。その評価は韓国側の立場によって賛否両論ですが、日経の記事が韓国の政策決定や世論形成に影響を与える場面も確認でき、決して無視できない存在として認識されています。

総合的な結論

日経新聞が韓国の進歩系勢力に対して冷笑的・懐疑的な論調をとる背景には、日本の経済新聞としての立場と価値観と韓国進歩政権の政策スタイルとのギャップが横たわっています 。日経は経済の安定・発展を至上命題とする企業理念を持ち、読者も企業幹部層が中心です。そのため、政治外交においても経済合理性や国際協調(日本の国益に適う安定路線)を重視し、日本政府(特に自民党政権)の主張に沿った視点で論評しがちです。

一方で韓国の進歩派政権(文在寅・盧武鉉政権)は歴史問題での強硬対応や南北関係改善、急進的な経済改革など理念優先の政治を行いました。これは国内支持層の声を反映したものですが、日経から見ると国際常識や経済論理にそぐわないケースも多く、結果として「思慮に欠ける」「感情的」といった辛辣な評価につながりました 。実際、慰安婦合意の再交渉要求には「極めて遺憾」 、急激な最低賃金上昇には「迷走」という表現で、日経は進歩政権を批判しています 。このギャップが冷笑的な論調として表出し、日経紙面では進歩派の政策は非現実的で不安定、保守派の路線は現実的で安定という図式が強調される傾向にあります。

さらに、長期にわたるソウル特派員経験者(峯岸博氏など)の存在も日経の論調形成に寄与しました。現地での取材経験豊富な記者が現実主義の立場から韓国政治を分析し、それが本社の社説や解説記事に反映されることで、進歩陣営への批判が一貫したトーンで発信されてきました 。この結果、日経読者には「韓国の革新政権は感情先行で未熟」「保守政権は安定志向で信頼できる」との印象が醸成されていったと考えられます。

韓国側での日経に対する評価は二分されています。韓国保守層・メディアは日経の指摘を客観的な第三者評価として歓迎し、自国の進歩政権批判に引用するなど積極的に利用しました 。実際に日経の記事が韓国政府高官の発言や政策見直しに影響を与えた例もあり 、日経の論調は韓国内の政治議論にも組み込まれています。他方で韓国進歩層・メディアは、日経を含む日本メディアの論調に反発し「偏った見方だ」と批判しました 。このように日経の韓国報道は韓国国内でも賛否両論を巻き起こしますが、それ自体が日経の影響力の裏返しとも言えます。結局のところ、日経の韓国進歩派への冷笑的態度は、日経が掲げる現実主義・経済合理性の基準から見て韓国進歩政権が逸脱しているとの判断に基づくものであり、それは日本側エリートの視点から韓国政治を論評した結果でもあります 。この構図は今後も基本的に続くとみられ、韓国で政権交代が起これば日経の論調もそれに応じて厳しさと柔軟さを使い分けることになるでしょう。

出典の分類

新聞・雑誌: 日本経済新聞社説(新聞協会報による引用) 、朝鮮日報(日本語版、文政権の経済政策批判報道) 、ハンギョレ新聞(日本語版、慰安婦合意に対する日本メディアの反応分析) 、JBpress(日本のオンライン誌、望月衣塑子記者インタビュー記事) 。 学術・業界資料: 日本新聞協会『新聞協会報』紙面モニター 、日本経済新聞社史・沿革(Wikipedia経由、社是と論調・読者層データ) 、ダイヤモンド・オンライン特集記事(日韓メディア論調比較) 。 記者・関係者の発言: PR TIMESプレスリリース(日本経済新聞社、峯岸博論説委員の経歴・著書紹介) 、韓国政府関係者のSNS言及(金広斗氏が日経記事を引用 )、鈴置高史元編集委員の寄稿(JBpress等での韓国政権批評 )。 その他政府・国際機関資料: 韓国大統領府発表・日本政府発表(本文中で言及のみ。参考: 2023年韓国外交部発表内容に対する日経社説)など。今回直接引用はしていませんが、論旨展開に当たり外交問題に関する政府発表内容も参照しています。

日経論説に見る韓国民主化史への軽視・歪曲:背景と偏向の分析 日経新聞の企業理念と報道スタンス(過去10年)

日本経済新聞(略称:日経)は経済専門紙として**「中正公平、…経済の平和的民主的発展を期す」との社是を掲げ、公平中立と経済発展を重んじる立場を標榜しています 。読者層は企業幹部や高学歴の社会人が多く平均所得も他紙より高い傾向があり、その利害や価値観と親和性の高い紙面作りが指摘されています 。政治的には主要全国紙の中で保守寄りの論調と評価され、2009年調査では保守的度合い5.2点(0=革新的、10=保守的)と、読売(5.6)・産経(5.3)に次ぐ数値でした 。こうした経緯から経済中心主義で安定成長を優先し、冷戦期には他紙同様に親米・反共**的な姿勢を持ち合わせたとされます (※要検証)。実際、外交安全保障では日米同盟や自由主義経済圏との協調を重視し、韓国を含む東アジア報道でも市場・安全保障の視点が強調されがちです(※要検証)。これは日経の想定読者層(経済人・政策決定層)が共感しやすい価値観に沿った報道姿勢とも言えます(※要検証)。

韓国報道における進歩勢力への扱いの傾向

日本メディアは総じて韓国の進歩(革新)勢力に厳しい論調をとる傾向があります。とりわけ日経などは文在寅・盧武鉉両政権(共に民主党)の歴史問題での姿勢に否定的で、合意変更や司法判断を「一貫性に欠き遺憾」などと批判しました 。2018年、文在寅政権が慰安婦合意検証を行った際、日経社説は「合意の精神を骨抜きにする内容で極めて遺憾だ」と述べ、日韓不信は北朝鮮を利すると指摘して「慎重で一貫性のある外交」を求めています 。また徴用工問題では「国家間の約束は守るというのが国際常識」と主張し、進歩政権の対応を非常識だと論難する論調が目立ちました 。

特に保守系メディアでは進歩勢力への否定的レッテル貼りが顕著です。産経新聞は文政権について「法より『反日』を優先」「常軌を逸している」と非難し、「おかしさを通り越して狂気さえ感じられる」とまで断じました 。これは「感情的反日」に依拠する政権との決め付けであり、進歩勢力を非理性的・過激と見なす典型例です。「感情的」「非現実的」といった否定的形容は韓国進歩派への日本側論評でしばしば見られ、実際に**「文大統領の抗日姿勢は非現実的」との記事見出しさえ存在します 。同記事では日韓双方の世論が歴史問題で極めて感情的になりやすいと指摘され 、文在寅政権による対日強硬発言を「ナショナリスティックな政治的求心力向上策」と分析しています 。一方、韓国保守勢力に対して日本メディアは概して好意的で、協調路線や現実主義を評価する傾向があります。例えば尹錫悦大統領の当選時、朝日新聞は「今度こそ日韓関係改善が軌道に乗りつつあると期待したい」と論じ 、保守政権への政権交代を関係修復の好機として歓迎しました 。尹政権下での対北・対米協調強化策も「確かに不可欠だ」と前向きに捉える論調が見られます 。もっとも、尹錫悦氏個人への評価には警戒も混じり、例えば朝日は先制攻撃論への懸念を示しています 。しかし総じて、日本側では「進歩系政権=反日的で感情的・非現実的」「保守系政権=現実的で協調的」との図式が共有されがちです(※要検証)。実際、2025年韓国大統領補選を前に日本では「李在明氏は文氏の再来か」との疑念が根強いと指摘されており 、進歩派=日韓関係悪化要因との見方が定着していることが伺えます。こうしたバイアスは左派系の朝日・毎日新聞においてすら例外ではなく、2018年前後の対立局面では朝日・毎日でさえ文在寅政権に厳しい意見を述べた**と分析されています 。

峯岸博論説委員の論説傾向と価値観

今回問題となっている日経の峯岸博・上級論説委員は、朝鮮半島情勢を長年取材しソウル支局長も務めた記者で、近著に『日韓の断層』(2019年)や『日韓の決断』(2023年)があります。峯岸氏の論調は徹底したリアリズム志向で、韓国側の理想主義や歴史正義よりも現実的打算やパワーバランスを重視する傾向があります。例えば『日韓の断層』では、戦後築かれた日韓関係が「相次ぐ韓国の判断によって脆弱になってしまった」と述べられており 、慰安婦財団解散や徴用工判決など韓国側の措置が関係悪化の主因だと捉えています(歴史問題での韓国側の正当性主張よりも、関係への打撃という現実面を強調)。峯岸氏は尹錫悦政権の登場についても「過去に縛られる日韓関係を根本的に変える強い決意」を評価しており 、尹大統領が「日本は既に数十回反省と謝罪を表明している」と明言したことを高く評価しています 。これは、歴史問題に区切りをつけ未来志向へ舵を切る現実主義こそ望ましいという峯岸氏の価値観を反映しています。

峯岸論説の文体・語調にはどこか冷めたシニシズムが漂うと評する向きもあります(※要検証)。例えば彼は2020年総選挙時の韓国社会について「与党大敗でも反日が起きぬ静けさ」に言及し、かつてと世情が変化したと論じました 。そこには、韓国の若い世代がもはや反日感情を政治に利用しなくなったとの含意があり、民主化運動を担った旧世代の「情熱」をどこか冷笑的に見ている節もうかがえます(※要検証)。峯岸氏の筆致は一見客観的ですが、背景にあるのは**「理想や感情に流されず現実を直視せよ」**という信条であり、それゆえ民主化運動の歴史的意義や市民感情の高まりに対して距離を置きがちです(※要検証)。こうしたスタンスはまさに「冷笑主義的リアリズム」とも言うべきもので、理想に奔る進歩派政治家への皮肉と、現状追認的な現実主義が同居しています。峯岸氏の2025年5月16日付論説「韓国大統領選、40歳理工系候補に再び脚光」もその文脈で読む必要があり、彼は民主化運動世代ではない若いテクノクラート候補に光を当てることで、従来の民主化史観を相対化しようとしている可能性があります(※要検証)。すなわち、韓国民主化の歴史的経緯よりも「新世代の台頭」や「理工系エリートの躍進」といった別の物語に焦点を移し、その過程で民主化の歴史を軽視・矮小化する構図が生まれていると考えられます(※要検証)。

日本メディア全体の構造的バイアスと各紙比較

日本の主要メディアには構造的なバイアスが存在し、韓国報道でも保守・進歩のどちらに軸足を置くかで論調が偏りがちです。全般的に日本の新聞は自国政府の主張を“コピペ”して国民感情を増幅させる装置と化す側面があり、日韓双方でメディアがナショナリズムを煽る傾向が指摘されています 。具体的には、保守系の産経・読売は韓国進歩勢力に極めて否定的で、先述のように産経は文在寅氏を「狂気」とまで非難しました 。読売新聞も「韓国文政権の態度は外交常識に外れ非礼である」と社説で批判し 、「国家間の約束を守るのが国際常識」と強調するなど 、進歩政権を信頼できない相手として描く傾向があります。一方、朝日・毎日など革新系とされる新聞も、基本的価値観では人権や民主主義への共感を示しつつも、対韓外交では日本政府寄りの現実論を唱える場面が少なくありません 。例えば朝日新聞は朴槿恵大統領弾劾後の2017年韓国大統領選に際し「韓国の有権者が選ぶこと」と断った上で、文在寅政権下で停滞した日韓関係の改善を期待する論調を示しました(※要検証)。また尹錫悦氏当選時には上記のように関係改善への期待を表明しつつ、安全保障面では尹氏の強硬姿勢に苦言も呈しています 。NHKなど公共放送は論評より事実報道が中心ですが、ニュース選択や解説において政府見解を重視する傾向が指摘されます(※要検証)。総じて、日本メディア全体に**「韓国進歩派=情緒的・反日的」「韓国保守派=現実的・協調的」**という図式が構造化しており、報道言説におけるバイアスとして現れています。このバイアスは韓国の民主化運動そのものへの評価にも影響し、民主化の歴史を語る際にも進歩勢力の功績より混乱や対立を強調する論調が散見されます(※要検証)。韓国の民主化史に深い理解を持つ論説は日本では必ずしも主流ではなく、どちらかと言えば経済発展や安全保障上の利害から韓国政治を見る傾向が強いことが、歴史の軽視・歪曲につながりやすい土壌と言えます(※要検証)。

なお、メディア間の違いも付記すると、産経新聞は最も強硬な反韓・反進歩色を打ち出し 、読売は保守政権寄りながらもう少し穏健、毎日新聞は中道的で対韓融和にも理解を示す場合があります(※要検証)。朝日新聞はリベラル志向ゆえ韓国市民社会への共感を示す論説も見られますが、国家間問題では「感情的対立の悪循環は避けよ」など理性的アプローチを訴える傾向があります 。つまり左派紙であっても韓国進歩派を全面支持するわけではなく、日本国内世論との整合を図る傾斜が見られ、この点で日本メディア全体の構造的バイアスが改めて浮かび上がります。こうした偏向は韓国のメディアや識者からも認識されており、韓国側では**「日本では尹政権の一方的譲歩を歓迎する声が支配的で、尹氏退陣には日韓関係悪化を懸念する論調が相次いだ」**と報じられています 。日本メディアの韓国報道が自国の利害に偏っているとの批判は、国際的にも少しずつ共有されつつあると言えるでしょう(※要検証)。

国際的・連帯的視点の補完

以上の偏向に対し、日本国内にも韓国の民主化に共感し連帯してきた人々・団体が存在します。実は1970年代から、日本の市民社会は韓国の民主化闘争を支援しようと動いていました。例えば1974年には「日本の対韓政策を正し韓国民主化闘争に連帯する日本連絡会議」(略称:日韓連帯会議)が結成され、草の根レベルでの日韓連帯運動が本格化しました 。朴正煕政権下での金大中氏拉致事件や、1980年5月の光州事件に際して、日本の市民・宗教者・野党政治家らは韓国の民主化勢力を支援する声明や救援活動を展開しました 。日本キリスト教協議会(NCC)など宗教界も「韓国問題キリスト者緊急会議」を組織し、政治犯救援や世論喚起に尽力しています 。これらの活動は日本政府の対韓姿勢に一定の影響を与え、1980年代以降の民主化移行期において民間レベルでの日韓関係を支える重要な役割を果たしました(※要検証)。

また現在でも、韓国の民主主義を守るために連帯しようという動きは続いています。例えば2024年末の尹錫悦政権による非常戒厳令布告(※要検証)に抗議する韓国市民の運動に呼応し、2025年2月には日本の国会内で「民主主義守る連帯を」と題する集会が開かれました 。この集会には日本共産党の小池晃書記局長や立憲民主党・社民党議員、市民団体代表らが参加し、韓国市民の闘いへの支持を表明しています 。小池氏は「韓国社会の民主主義の強さに敬意を表し、女性や学生、若い世代が中心になっている闘いに連帯していく」と述べ、韓国民主化運動への連帯を誓いました 。さらに日本の市民有志は「私たちは尹錫悦政権退陣民主化闘争に連帯します」とする共同声明を発表し(2025年)、韓国の民主主義回復を後押ししています 。こうした連帯の視点は、日本のメディア報道では埋もれがちな**「韓国民主化への共感と反省」**を掘り起こすものです。韓国の民主化運動は決して他人事ではなく、日本の戦後民主主義とも通じ合う普遍的価値の闘いでした。実際、韓国の市民革命(例えば1987年の民主化宣言)に刺激を受けた日本人も多く、当時の出版物や記録集には日本からのエールが数多く寄せられています(※要検証)。

国際的にも、日本の一部メディアの報道姿勢に対する評価・批判があります。韓国のハンギョレ新聞は、尹大統領の弾劾可決を受けて**「日本では尹政権退陣による日韓関係悪化を懸念する声が相次いでいる」**と伝え、日本側の報道が尹氏寄りであることを示唆しました 。これは裏を返せば、日本メディアが韓国保守政権に期待し進歩勢力を警戒するバイアスを持つと国外からも見做されているということです(※要検証)。一方で、米国や欧州の専門家の中には韓国の民主主義成熟を評価し、日本にも学ぶべきとの指摘をする者もいます(※要検証)。日本のメディア報道だけを見ていると韓国の民主化の意義が過小評価されがちですが、国際社会では韓国の民主化運動はアジアにおける権威主義打破の成功例として高く評価されています (※要検証)。日本人としてもこの点を正当に評価し、連帯の視点を持つことが求められていると言えるでしょう。

おわりに:構造的理解と連帯の意義

峯岸論説委員の記事に見られる韓国民主化史への軽視や歪曲の背景には、日本メディアの経済・安全保障中心の視点と冷戦期から続く保守的バイアスが横たわっています。それは日経新聞という一経済紙のみならず、日本の報道界全体に共有された構造的な偏向です。その結果、韓国の進歩勢力が果たした民主化の歴史的役割よりも、「反日的」「情緒的」といったステレオタイプが強調されてきました。しかし他方で、日本社会の中には韓国の民主化に心を寄せ共に歩もうとしてきた人々も存在します。その視点に立てば、韓国の民主主義の歩みは日本自身の戦後民主主義を省みる鏡ともなりうるのです。

今回の分析で明らかになったように、日経新聞・峯岸氏の論調には経済合理性やリアリズムの名の下に韓国民主化の意義を矮小化する傾向が認められました。しかし歴史を振り返れば、韓国の民主化はアジアにおける独裁打倒と市民社会の勝利として輝かしいものであり、日本の市民もそれに連帯してきた経緯があります 。日本のメディアには、こうした連帯の歴史や韓国民主化への敬意をもっと伝える余地があるはずです。それは単に韓国を礼賛することではなく、日本自身の民主主義を問い直し成熟させる契機ともなるでしょう。偏見や冷笑ではなく、構造的・歴史的な理解と連帯のまなざしを持つこと――それこそが、韓国民主化の歴史を正当に評価し未来の日韓関係を築く上で、日本人に求められる姿勢ではないでしょうか 。今後、日本メディアが韓国報道において歴史の重みを軽んじず、公正でバランスの取れた視点を確立することを期待したいと思います。

参考文献・出典:日本経済新聞社説、朝日新聞社説、新聞協会報 ;Business Insider Japan ;ダイヤモンド・オンライン ;澤田克己「フォーサイト」寄稿 ;峯岸博『日韓の断層』『日韓の決断』 ;日本新聞協会データ ;早稲田大学・同志社大学リポジトリ資料 ;しんぶん赤旗 ;ハンギョレ新聞日本語版 ほか.