「ぐずぐずするな」を英語で言うと? ― Economistで見つけた does not hang about

英語を勉強していると、

study

work

improve

のような基本単語は覚える機会が多い。

一方で、ネイティブが日常的に使うのに、日本の英語教育ではほとんど出てこない表現もある。

最近 The Economist を読んでいて、そんな表現に出会った。

Though much like Alexander himself, this history does not hang about.

アレクサンダー大王の伝記を評した一文だ。

hang about とは何か

hang about は、

ぶらぶらする

長居する

ぐずぐずする

という意味を持つ。

例えば、

Stop hanging about and get started.

ぐずぐずしていないで始めなさい。

というように使う。

日本人が学校英語で習う機会は少ないが、イギリス英語では比較的よく見かける表現だ。

この書評ではどういう意味か

書評の著者は、

This history does not hang about.

と言っている。

直訳すると、

この歴史書はぐずぐずしない。

少し意訳すると、

この本はテンポが速い。

話がどんどん進む。

無駄な説明で立ち止まらない。

という意味になる。

さらに面白いのは、

much like Alexander himself

という部分だ。

つまり、

アレクサンダー本人と同じように、この本もぐずぐずしない。

と言っている。

歴史上最もせっかちな人物の一人を評するには、なかなか洒落た表現だと思う。

ビジネスでも使える

実はこの表現、仕事でも応用できる。

例えば、

We can’t hang about.

ぐずぐずしていられない。

Customers aren’t hanging about.

顧客は待ってくれない。

The market won’t hang about.

市場は待ってくれない。

私が働く半導体のスポット市場でも、まさにそんな世界だ。

朝見積もった在庫が午後には売れていることも珍しくない。

まさに、

The market does not hang about.

である。

学校では習わない英語

私は英語学習で、

buy in

chew over

simply did not stop

のような表現が好きだ。

単語帳には載っていない。

しかし実際の英語では頻繁に出てくる。

今回の

hang about

もその仲間だと思う。

英語を勉強していると、つい難しい単語ばかり覚えたくなる。

しかし実際にネイティブらしい英語を書く人ほど、

こうした何気ない表現を自然に使う。

The Economist を読んでいて面白いのは、まさにそういう発見があることだ。

今回覚えた表現。

This history does not hang about.

私ならこう訳したい。

この本は、一切ぐずぐずしない。

「快適」じゃない Comfortable —— The Economistで学んだ意外な英語

最近読んだThe Economistの記事で、久しぶりに「なるほど」と思う英語表現に出会った。

それが comfortably だ。

記事にはこんな一文があった。

SpaceX’s IPO made it comfortably the biggest initial public offering of all time.

私は最初、

「快適に史上最大のIPO?」

と、一瞬意味が分からなかった。

学校英語では、

  • comfortable = 快適な
  • comfortably = 快適に

と習うからだ。

しかし、ここでは全く違う意味で使われている。

Comfortable のもう一つの意味

英語圏では comfortable には、

「十分な余裕がある」

という意味がある。

そこから、

  • comfortably ahead
  • comfortably the largest
  • comfortably won

などの表現では、

「余裕をもって」
「大差で」
「断トツで」

という意味になる。

つまり記事の

comfortably the biggest IPO of all time

は、

「史上最大のIPOだった」

ではなく、

「史上最大であり、その差も圧倒的だった」

というニュアンスになる。

なぜそういう意味になるのか

考えてみると面白い。

comfortable は本来、

「安心できる」
「窮屈ではない」

という意味だ。

そこから、

「十分な余裕がある」

という意味が派生した。

例えば試験で合格点が60点だったとして、

80点なら comfortable pass だ。

ギリギリではなく、安心して合格している状態である。

この感覚が、

「差が十分ある」

「余裕がある」

「大差で」

「断トツで」

という意味に発展した。

ビジネス記事で頻出

実はこの用法は経済記事やビジネス記事で頻繁に見かける。

例えば、

Nvidia is comfortably the most valuable semiconductor company in the world.

であれば、

「Nvidiaは世界で最も価値の高い半導体企業だ」

だけでなく、

「しかも2位以下を大きく引き離している」

という意味になる。

また、

Samsung is comfortably ahead of its competitors.

なら、

「サムスンは競合を大きく引き離している」

ということだ。

英語学習者にとって面白いポイント

英語学習を続けていると、

「知っている単語なのに意味が分からない」

という経験がある。

今回の comfortable がまさにそれだった。

単語自体は中学生レベルなのに、The Economistでは全く別の顔を見せる。

だから英語学習で本当に面白いのは難しい単語を覚えることではなく、

「知っているつもりだった単語の新しい使い方に出会うこと」

なのかもしれない。

今後、The EconomistやFinancial Timesで comfortably を見かけたら、

「快適に」ではなく、

「余裕で」
「断トツで」
「大差で」

と読んでみてほしい。

記事がずっと自然に読めるようになるはずだ。

「Simply did not stop」と「Roll their sleeves up」――The Economistが描いた本当の成功者像

最近読んだThe Economistの記事で、とても印象に残った表現が二つありました。

一つは、

simply did not stop

もう一つは、

roll their sleeves up

どちらも難しい英単語ではありません。

しかし、この記事全体のメッセージを象徴する表現でした。

キッシュを焼き始めて、やめなかった

記事では、アメリカの無名の富豪たちが紹介されます。

シリコンバレーの起業家ではありません。

テキサスで雨どいを売る人。

ニュージャージーでトイレットペーパーを卸す人。

そして、カリフォルニアでキッシュを焼く女性。

記事にはこうあります。

One woman in California began baking quiches for her own parties and simply did not stop.

直訳すると、

「ある女性は自分のパーティー用にキッシュを焼き始め、そのままやめなかった。」

です。

普通なら、

「革新的なビジネスモデルを構築した」

とか、

「市場のニーズを見抜いた」

とか書きそうなところです。

しかしThe Economistは、

「やめなかった」

と書く。

結果として彼女は20年後、1日100万個以上のキッシュを製造する会社を築き、ヨットを所有する富豪になりました。

成功の理由は天才性ではなく、継続だった。

そんな皮肉が込められています。

腕まくりする人たち

記事の最後には、こんな一文があります。

Much of the spoils of capitalism are still won by those who roll their sleeves up.

roll one’s sleeves up は、

「腕まくりする」

という意味です。

転じて、

「泥臭く仕事に取り組む」

「現場で汗をかく」

というニュアンスになります。

これもまた面白い。

近年のビジネス記事では、

AI

イノベーション

ディスラプション

といった言葉が並びます。

しかしこの記事は、

資本主義の果実は今でも腕まくりする人たちによって獲得されている

と言うのです。

実は同じことを言っている

私は読みながら気づきました。

「Simply did not stop」と「Roll their sleeves up」は、実は同じことを言っています。

やめなかった人。

腕まくりし続けた人。

結局、成功したのはそういう人たちだということです。

派手ではありません。

SNS映えもしません。

しかし、記事に登場する富豪たちは、まさにそういう人たちでした。

半導体業界でも同じかもしれない

私は半導体商社で働いています。

毎日RFQが来て、

毎日見積を出して、

毎日顧客と話しています。

正直、シリコンバレーの起業物語のような華やかさはありません。

しかし振り返ると、

業界で成果を出している人たちは、

特別な才能の持ち主というより、

何年も同じことを積み重ねてきた人が多いように思います。

市場を追い続ける。

顧客と会い続ける。

知識を蓄積し続ける。

そして、やめない。

まさに、

simply did not stop.

そして、

roll their sleeves up.

なのだと思います。

成功本100冊より重い4語

The Economistの記事を読んでいて、

一番印象に残ったのは難しい経済学の話ではありませんでした。

たった4語です。

simply did not stop.

成功の本質を説明するのに、これ以上の表現はなかなかない気がします。

「少し考えさせてください」は英語で何と言う? The Economistで見つけた chew over

最近読んだThe Economistの記事で、久しぶりに面白い英語表現に出会いました。

それが

chew over

です。

記事中ではこんな形で使われていました。

Investors, for their part, are still chewing over the announcement.

直訳すると、

投資家たちはまだその発表を噛んでいる

になります。

もちろん実際にはそんな意味ではありません。

chew over の意味

chew は「噛む」です。

そして chew over は、

よく考える
じっくり検討する
咀嚼するように考える

という意味になります。

日本語でも

「話を咀嚼する」

と言いますが、かなり近い感覚です。

例えば、

Let me chew it over.

なら

少し考えさせてください

という意味になります。

また、

We are still chewing over the proposal.

なら

その提案についてまだ検討中です

という意味になります。

なぜ面白いのか

英語には「考える」を意味する表現がたくさんあります。

think about

consider

review

evaluate

などです。

しかし chew over には、

単に考えるだけでなく、

すぐに結論を出さず、
頭の中で何度も噛みながら整理する

というニュアンスがあります。

そのため、

重要な判断や意思決定の場面でよく使われます。

ビジネスで使える表現

すぐに使えるのは次のような例です。

Let me chew it over and get back to you.

少し検討してからご連絡します。

I’ll need some time to chew this over.

これについて少し考える時間が必要です。

Management is still chewing over the proposal.

経営陣はまだその提案を検討中です。

どれも会議や商談で自然に使えます。

私はまだ仕事で見たことがない

実は私はアメリカ系商社で働いていますが、

少なくともメールではこの表現を見た記憶がありません。

ただ、The Economistではごく自然に使われていました。

つまり、

「知らないと困る超重要表現」ではないものの、

ネイティブにとっては普通の表現なのでしょう。

こういう表現に出会うたびに思うのですが、

英語学習は単語帳よりも良質な英語を読み続ける方が面白いですね。

今回の収穫は chew over でした。

「Kumbaya」――英語圏の保守派が嫌う“お花畑”を表す一言

最近見ていたインタビュー動画の中で、面白い表現に出会いました。

That wasn’t just some kumbaya…

話者はレーガン大統領の核戦争観について説明していました。

彼はこう言います。

Reagan came out and said, “A nuclear war can never be won and must never be fought.”

(核戦争に勝者はいないし、決して戦われてはならない)

そして続けて、

That wasn’t just some kumbaya that his wife had or someone else had told him.

と言いました。

Kumbayaとは何か?

もともとはアフリカ系アメリカ人の宗教歌のタイトルです。

Kumbaya, my Lord, kumbaya…

という有名な歌で、意味としては「主よ、ここに来てください」という祈りの歌です。

ところが現代アメリカ英語では、まったく別の意味で使われることがあります。

それが、

現実を見ない理想主義

「みんな仲良くしましょう」的な発想

です。

日本語で言うと?

今回の文脈なら、

「それは単なるお花畑な話ではなかった」

という意味になります。

話者が言いたかったのは、

「レーガンが核戦争反対を語ったのは、平和運動家に影響されたからではない」

ということです。

続く部分では、

It was clearly based on classified military research.

(それは明らかに機密の軍事研究に基づいていた)

と言っています。

つまり、

「核戦争の恐ろしさを感情論で語ったのではなく、軍事シミュレーションや機密分析を見た結果として結論に達した」

という主張です。

面白いのは単語そのものより背景

英語学習をしていると、辞書には載っていても実際には見かけない単語がたくさんあります。

しかし kumbaya は逆です。

学校英語ではまず習いません。

TOEICにも出ないでしょう。

ところが政治、外交、安全保障、あるいはアメリカの保守系論客の発言では時々登場します。

例えば、

That’s just kumbaya thinking.

と言われたら、

「それは理想論だ」

ではなく、

「それ、お花畑じゃない?」

くらいの皮肉が込められています。

私が面白いと思った理由

私は長年英語を勉強していますが、この単語を知ったのは最近です。

単語帳にはまず載っていません。

しかし実際のネイティブの議論では、

「理想主義者を揶揄する言葉」

として普通に使われています。

こういう表現に出会うと、

英語は単語の意味だけでなく、その国の文化や政治的背景まで含めて理解しないと本当には分からないのだなと感じます。

そして今回の収穫は、

kumbaya = お花畑

という非常に覚えやすい対応関係でした。

Harvard Business Review Podcastで出会った3つの面白い英語表現

最近、Harvard Business Review Podcastで「会議」をテーマにしたエピソードを聞いていた。

内容そのものも興味深かったのだが、英語学習者としては思わずメモを取りたくなる表現がいくつか出てきた。

今回はその中でも特に印象に残った3つの表現を紹介したい。


1. My calendar runs my life

出演者がこんなことを言っていた。

On my worst days, my calendar runs my life.

直訳すると、

「私のカレンダーが私の人生を支配している」

である。

本来なら、

I run my calendar.

のはずだ。

ところが主語と目的語が逆転している。

つまり、

自分が予定を管理しているのではなく、
予定に管理されている

という意味になる。

管理職や営業職なら思わず苦笑してしまう表現ではないだろうか。

私自身、外資系商社で営業課長として働いているが、

  • 顧客会議
  • 社内会議
  • Teams会議

で一日が埋まる日がある。

そんな日はまさに、

My calendar runs my life.

である。


2. To carp about the negative

司会者はこんなことも言っていた。

We’re not here today to carp about the negative.

ここで出てきた

carp

という単語が面白かった。

carp は魚の「鯉(こい)」として知られているが、動詞では全く別の意味になる。

文句を言う
ネチネチ批判する
ぐちぐち不満を述べる

という意味だ。

したがって上の文は、

「今日は悪い面について文句ばかり言うために集まったわけではない」

という意味になる。

単なる complain よりも、

「また始まったよ……」

と周囲が思うようなネガティブな響きがある。

例えば、

Stop carping about everything.

なら、

「何でもかんでも文句を言うのはやめなさい」

という感じになる。

ビジネス会議にも一人くらいはいるタイプかもしれない。


3. To rope it down

会議削減の話の中で、こんな表現も出てきた。

No matter how we try to rope it down, it comes back.

文脈的には、

どれだけ会議を減らそうとしても、
結局また増えてしまう

という意味である。

rope は本来、

ロープ

という意味だ。

そこから、

ロープで縛る
抑え込む

というイメージで使われている。

つまり、

rope it down

は、

抑え込む
封じ込める

というニュアンスになる。

会議をまるで暴れ馬や怪獣のように扱っているのが面白い。

どれだけ抑え込んでも、

気づけばまたカレンダーが会議で埋まっている

という経験は、多くのビジネスパーソンに心当たりがあるだろう。


おわりに

今回面白かったのは、

My calendar runs my life.

To carp about the negative.

To rope it down.

の3つだった。

どれも難しい単語ではない。

むしろ、

  • calendar
  • run
  • rope

のような中学レベルの単語が中心である。

しかしネイティブは、こうした単語を組み合わせて鮮やかな表現を作る。

英語学習を続けていると、

「単語を知っていること」と
「表現を知っていること」は別物

だと改めて感じる。

Harvard Business Review Podcastは経営やマネジメントの勉強になるだけでなく、こうした生きた英語表現に出会えるのも魅力だと思う。

nudge ― 「押し付けずに人を動かす」という英語

英語を読んでいると、

「辞書の意味は分かるけど、日本語一語では訳しにくい単語」

に出会うことがあります。

その代表格の一つが nudge です。

最近読んでいたNVIDIA創業者ジェンスン・フアンの伝記にも出てきました。

ジェンスン・フアンとデニーズ

高校生だったジェンスンは、アメリカのDenny’sでアルバイトをしていました。

皿洗いから始まり、

  • トイレ掃除
  • バスボーイ
  • ウェイター

まで経験します。

そこでこんなエピソードが紹介されています。

He would try to nudge customers to order Coke instead.

シェイクを注文しようとする客に対して、

「コーラはいかがですか?」

と別の商品へ誘導しようとしていたのです。

なぜか。

ジェンスンはシェイク作りが大嫌いだったからです。

作るのに時間がかかるし、後片付けも面倒だった。

だから客がシェイクを頼もうとすると、

少しだけ別の商品へ誘導していた。

ここで使われているのが nudge です。

nudge の本来の意味

もともとは、

肘で軽くつつく

という意味です。

例えば、

He nudged me.

彼は私を軽くつついた。

という使い方をします。

しかし現代英語では、そこから意味が広がっています。

ビジネスでの nudge

今では

相手をそっと望ましい方向へ導く

という意味で使われることが多いです。

重要なのは、

強制しないこと。

命令もしない。

圧力もかけない。

しかし、

少しだけ背中を押す。

それが nudge です。

例えば、

We need to nudge customers toward online ordering.

顧客をオンライン注文へ少しずつ誘導したい。

The manager nudged him to apply for the promotion.

上司は彼に昇進応募を勧めた。

どちらも

「やれ!」

ではありません。

自然にそうしたくなる方向へ導くイメージです。

ナッジ理論

実はこの単語は経済学でも有名です。

Nudge Theory(ナッジ理論)

という考え方があります。

人間に命令するのではなく、

選択肢の見せ方を工夫して行動を変える。

例えば、

  • 健康食品を目立つ場所に置く
  • 年金加入をデフォルト設定にする
  • ゴミ箱を目立たせる

などです。

禁止や強制ではなく、

人を自然に良い方向へ導く。

これがナッジです。

日本語にすると?

状況によりますが、

  • そっと促す
  • 軽く勧める
  • 背中を押す
  • 誘導する
  • それとなく勧める

あたりが近いでしょう。

私は

「そっと背中を押す」

が一番しっくり来ると思います。

まとめ

nudge は単なる

勧める(recommend)

でも

説得する(persuade)

でもありません。

もっと優しい。

もっと自然です。

ジェンスン・フアンは高校時代、

シェイクを作りたくないので客をコーラへ誘導していました。

そのとき使われたのが nudge。

英語で nudge を見たら、

「強制せず、少しだけ相手を望む方向へ動かす」

というイメージを思い浮かべると、本来のニュアンスにかなり近づきます。

formative ― 「今の自分を作った経験」を表す英単語

英語を読んでいると、ときどき日本語に一語で訳しにくい単語に出会います。

最近、NVIDIA創業者ジェンスン・フアンの伝記を読んでいて、そんな単語に出会いました。

それが formative です。

ジェンスン・フアンの壮絶な少年時代

ジェンスン・フアンは台湾生まれですが、少年時代にアメリカへ移住しました。

両親の都合で、兄とともにケンタッキー州の寄宿学校に預けられます。

そこで彼は、

  • 毎日の労働
  • トイレ掃除
  • いじめ
  • 年上の不良との共同生活

といった過酷な環境を経験しました。

後に彼はこう語っています。

I don’t get scared often. I don’t worry about going places I haven’t gone before. I can tolerate a lot of discomfort.

(私はあまり怖がらない。行ったことのない場所へ行くことも気にしない。かなりの不快さにも耐えられる。)

そして伝記には次の一文がありました。

He looked back on his time at Oneida Baptist as formative.

formative の意味

辞書的には、

人格や能力の形成に大きな影響を与える

という意味です。

しかし実際のニュアンスはもっと強い。

単なる

  • 影響を受けた
  • 勉強になった

ではありません。

むしろ、

その経験が今の自分を作った

という感覚です。

だから上の文章は、

彼はOneida Baptistでの経験を、自分を形作った原体験だったと振り返っている。

と訳すのが自然です。

日本語に訳しにくい理由

日本語の「影響を受けた」は少し軽い。

一方で formative は、

もしその経験がなかったら、今の自分は違う人間になっていた

というレベルの重みがあります。

そのため文脈によって、

  • 人生を形作った
  • 人格形成に大きな影響を与えた
  • 原体験となった
  • 今の自分を作った

などと訳されます。

ビジネスでも使われる

この単語は伝記だけでなく、ビジネスでもよく登場します。

例えば、

Working at Canon was a formative experience.

キヤノンで働いた経験は、今の自分を作った経験だった。

あるいは、

My years in Korea were formative.

韓国で過ごした年月は、今の自分を形作った。

単に「楽しかった」「勉強になった」ではなく、

価値観や考え方そのものが作られた

という意味になります。

formative years も頻出

合わせて覚えたいのが、

formative years

という表現です。

これは

人格形成期

を意味します。

子供時代や青春時代について語るときによく使われます。

例:

During his formative years, he developed a passion for technology.

人格形成期に、彼は技術への情熱を育んだ。

まとめ

formative は単なる「重要な経験」ではありません。

その経験が、

  • 性格を作り
  • 考え方を作り
  • 人生観を作った

という意味を持つ単語です。

ジェンスン・フアンにとって、ケンタッキーの厳しい寄宿学校生活はまさに formative な経験でした。

英語を読むときに formative を見かけたら、

「影響を受けた」

ではなく、

「今のその人を作った経験」

と考えると、本来のニュアンスにぐっと近づきます。

「From the Get-Go」って何? 私が学校で習わなかった英語表現

英語を勉強していると、

単語は全部知っているのに意味が分からない表現と、

単語そのものを見たことがない表現があります。

今回紹介する

from the get-go

は後者です。

私は大人になってから英語の記事やポッドキャストを読むようになって初めて知りました。

学校英語ではまず習いません。

しかしネイティブは普通に使います。

From the Get-Go の意味

意味はシンプルです。

最初から

初めから

です。

例えば、

We knew from the get-go that it would be difficult.

最初から難しいと分かっていた。

There were problems from the get-go.

最初から問題があった。

という意味になります。

Get-Go って何?

私が最初に思ったのは、

get = 得る

go = 行く

だから、

「得てから行く?」

何のことだろう?

でした。

しかし実は、

get-go という部分に特別な意味はほとんどありません。

この表現はアメリカ英語の口語表現として定着しており、

丸ごと

from the beginning

と覚えた方が早いです。

語源については諸説ありますが、

現在では

「最初から」

という意味の慣用表現として使われています。

From the Beginning との違い

もちろん、

from the beginning

でも同じ意味になります。

ただし印象が違います。

from the beginning は少しフォーマルです。

一方、

from the get-go は会話的です。

例えば、

I knew it from the beginning.

よりも、

I knew it from the get-go.

の方がネイティブらしい響きがあります。

映画やドラマで耳にするのも後者です。

ネイティブが好む理由

英語には、

意味は同じでもリズムが良い表現があります。

例えば、

  • year in and year out
  • bread and butter
  • by and large

などです。

from the get-go もその仲間です。

短くて言いやすい。

だから日常会話でよく使われます。

私が面白いと思った点

英語学習者は、

つい難しい単語ばかり覚えようとします。

しかし実際にネイティブが頻繁に使うのは、

こうした口語表現だったりします。

例えば、

“commence”

という単語を知っていても、

日常会話では

“start”

の方が圧倒的によく使われます。

同じように、

from the beginning を知っていても、

ネイティブは from the get-go を使う。

こういうところに、

教科書英語と実際の英語の違いを感じます。

今日の英語

from the get-go

意味:

「最初から」

例文:

We knew from the get-go that demand would exceed supply.

(需要が供給を上回ることは最初から分かっていた。)

難しい単語ではありません。

むしろ学校では習わないタイプの英語です。

だからこそ、こういう表現に出会うと、

「英語圏の人は本当にこう話すんだな」

という発見があります。

「Bread and Butter」はパンとバターではない。アメリカ人が仕事でよく使う表現

英語を勉強していると、

「知っている単語なのに意味が分からない」

という表現によく出会います。

その代表例が、

bread and butter

です。

bread はパン。

butter はバター。

中学生でも知っている単語です。

ところが、ビジネスの世界でこの表現が出てくると、全く違う意味になります。

Bread and Butter の本当の意味

例えばアメリカ人はこんなふうに言います。

Sales is our bread and butter.

This product is our bread and butter.

That’s the company’s bread and butter.

ここでの bread and butter は、

パンとバターではありません。

意味は、

主力事業

稼ぎ頭

飯の種

です。

日本語で言うと、

「これで食べている」

というニュアンスになります。

なぜパンとバターなのか

昔の欧米では、

パンとバターは日常生活に欠かせない基本的な食べ物でした。

そこから、

生計を支えるもの

という意味で使われるようになりました。

日本語の

飯の種

と非常によく似ています。

面白いことに、文化は違っても発想は同じです。

半導体業界で考えてみる

例えば、

DRAM is Samsung’s bread and butter.

と言えば、

「DRAMはSamsungの主力事業だ」

という意味になります。

あるいは、

Memory has been our bread and butter for years.

なら、

「メモリビジネスは長年うちの稼ぎ頭だった」

という意味です。

私が働く半導体商社でも、

顧客によって主力商材は異なります。

GPUが強い会社もあれば、

メモリが強い会社もある。

それぞれに bread and butter が存在します。

Main Businessとの違い

もちろん、

main business

と言っても意味は通じます。

しかし bread and butter の方が、

より人間味があります。

単なる主力事業ではなく、

これで会社が食べている

という感覚が伝わります。

だからネイティブは好んで使います。

意外と応用範囲が広い

この表現は会社だけでなく個人にも使えます。

例えば、

Writing is his bread and butter.

彼は文章を書くことで生計を立てている。

Consulting became her bread and butter.

コンサルティングが彼女の収入源になった。

という意味になります。

今日の英語

bread and butter

意味:

「主力事業」「稼ぎ頭」「飯の種」

例文:

Memory products are our bread and butter.

(メモリ製品は当社の主力事業です。)

英語には、単語そのものは簡単なのに、組み合わせると全く違う意味になる表現がたくさんあります。

bread and butter もその一つです。

そして私はこういう表現に出会うたびに、

英語は単なる単語の暗記ではなく、その国の生活や文化の積み重ねなのだと感じます。

「Buy-in」という英語をHBRで知った。アメリカ人が好きな“納得と支持”という考え方

最近、Harvard Business Review(HBR)のポッドキャストを聞いていて、改めて印象に残った英語表現があります。

それが buy-in です。

実は私は現在アメリカ系の半導体商社で働いていますが、少なくとも記憶している限り、仕事のメールや会議でこの言葉に頻繁に出会ったことはありません。

もしかすると聞き流していただけかもしれませんし、別の表現に置き換えられていただけかもしれません。

しかし、HBRを読んだり聞いたりしていると、この言葉が組織論やリーダーシップの文脈でよく登場します。

今回はそんな buy-in という表現について紹介したいと思います。

Buy-inとは何か

HBRのインタビューでは、

get buy-in from stakeholders

という表現が出てきました。

stakeholder は「利害関係者」。

つまり直訳すると、

利害関係者からbuy-inを得る

となります。

では buy-in とは何でしょうか。

辞書的には

  • 支持
  • 賛同
  • 受け入れ

などと訳されます。

しかし、それだけでは少し物足りません。

私が理解したニュアンスは、

「相手に腹落ちしてもらい、自発的な協力を得ること」

です。

Approvalとの違い

例えば、

We need management approval.

と言われたら、

「経営陣の承認が必要だ」

という意味です。

一方、

We need management buy-in.

と言われたら、

単なる承認ではありません。

経営陣が

「まあ好きにやっていいよ」

ではなく、

「その考えは良い。私も支援しよう」

という状態まで持っていくことを意味します。

承認よりも一歩深い概念です。

日本語なら「根回し」に近い?

この言葉を聞いて私が最初に思い浮かべたのは、日本企業の「根回し」でした。

新しい提案をする前に、

  • 関係者に説明する
  • 懸念点を聞く
  • 事前に調整する

という行為です。

ただし、buy-in は根回しと完全には同じではありません。

根回しは「反対されない状態を作る」ことに重点がありますが、

buy-in は

「自分もこのプロジェクトを成功させたい」

と思ってもらうことに重点があります。

その意味では、

「根回し+納得+当事者意識」

を合わせたような概念だと感じます。

なぜHBRで頻繁に出てくるのか

HBRの記事やポッドキャストでは、

組織変革やリーダーシップが主要テーマです。

組織を変えようとすると、

命令だけでは人は動きません。

現場の社員

中間管理職

経営陣

顧客

パートナー企業

様々な人たちに、

「それは良いアイデアだ」

と思ってもらう必要があります。

だからこそ、

buy-in という言葉が頻繁に登場するのでしょう。

今日の英語

buy-in

意味:

「関係者から納得と支持を得ること」

例文:

We need buy-in from all stakeholders.

(すべての関係者の理解と支持を得る必要がある。)

私はまだ仕事でこの言葉を頻繁に使う場面には出会っていません。

しかし、HBRを通じて知ったことで、

アメリカのマネジメントや組織運営の考え方を表す重要な単語の一つだと感じています。

英語を学んでいると、単語だけでなく、その背後にある文化や価値観まで見えてくることがあります。

buy-in は、まさにそんな表現の一つでした。

「A-list assassinations」― The Economistで出会った忘れられない比喩

英語を長く勉強していると、「意味は分かるが、なぜそんな表現を使うのか分からない」という文章に出会うことがあります。

先日、The Economistのワールドカップ特集を読んでいて、そんな一文に出会いました。

As with A-list assassinations, veteran fans remember where they watched their side’s greatest feats and most painful defeats, and with whom.

直訳すると、

「著名人暗殺事件と同じように、ベテランファンは自国代表の最高の勝利と最も痛い敗北をどこで誰と見たかを覚えている」

となります。

最初に読んだ時は、

「なぜワールドカップと暗殺事件を比較するんだ?」

と思いました。

しかし、少し考えてみると、実に巧妙な比喩です。

例えば、

・ケネディ大統領暗殺
・9.11同時多発テロ
・東日本大震災
・安倍元首相銃撃事件

こうした歴史的事件について、人々は単に事件そのものを覚えているだけではありません。

「その時、自分はどこにいたか」

を覚えています。

テレビを見ていた。
会社にいた。
学校にいた。
家族といた。

そうした個人的な記憶が、歴史的な出来事と結びついているのです。

The Economistの筆者は、

「ワールドカップも同じだ」

と言っています。

日本人なら、

・1998年 フランス大会
・2002年 ベルギー戦
・2010年 パラグアイ戦
・2022年 ドイツ戦

などを見た場所や、一緒に見ていた人を覚えている方も多いのではないでしょうか。

試合内容そのものだけではありません。

その頃の自分。

当時の仕事。

学生時代の友人。

もう会えなくなった家族。

そうした人生の断片が、ワールドカップの記憶と一緒に保存されています。

だから筆者は続けてこう書きます。

The World Cup is a machine for memories.

「ワールドカップは記憶を生み出す機械である。」

なんとも美しい表現です。

さらに記事の後半では、

The World Cup is a quadrennial festival of hope.

という一文も出てきます。

quadrennialとは「4年に1度の」。

つまり、

「ワールドカップは4年に1度の希望の祭典である」

という意味です。

人々は毎回、

・ロスタイムの奇跡
・番狂わせ
・黄金世代の覚醒
・長年の挫折からの復活

を信じます。

現実ではなかなか起きないことを、ワールドカップの間だけは本気で期待する。

だから希望の祭典なのです。

英語学習者として面白いのは、こうした表現が単なる単語力では理解できないことです。

A-list assassinations

という表現自体は辞書で引けます。

しかし、

「なぜここで暗殺事件を持ち出したのか」

まで考えると、英語の背後にある文化や心理学、人間観まで見えてきます。

私は英語学習において、こういう瞬間が一番好きです。

英語を日本語に変換するだけではなく、

「この人はなぜこの比喩を選んだのか」

を考え始めると、英語は語学から教養へと変わります。

The Economistを読んでいると、時々こういう面白い一文に出会えるのです。