今週の #韓国ブロックチェーン (2020年11月8日週)

#特定金融情報法 #仮想通貨取引所

先週、こんなニュースがあったばかり。特定金融情報法という法律による、さらなる仮想通貨取引所の締め付け。

と思ったら今週、こんなニュースがあった。

대한블록체인조정협회, 독자적 거래소 ‘DBX’ 출범(파이낸셜뉴스

https://www.fnnews.com/news/202011151701134480

社団法人・大韓ブロックチェーン調整協会が、自前の仮想通貨取引所を立ち上げるというニュースである。取引所名はDBXであるという。一般企業ではなく社団法人であるということが少し気になった。国政では取引所を規制しつつ、こうした政府系の(?)法人を使って少しずつ仮想通貨取引所を運営していくということなのだろうか?

韓国のコロナ対策は「ブレーキの利き」がいい

日本のコロナ状況について言及するのは、これが最後になる。

半年ほど前までは、自分の祖国でもあり、韓国の永遠の友邦でもある日本のコロナの状況を心配していた。

しかしながら、誇り高い日本人は、外国からの助言などは必要ないようなので、妻を追って韓国に移住した日本人の私が何を言おうと聞く耳を持たないことがはっきりしたので、今回を最後にもう言及することはないだろう。

代わりに韓国のコロナ状況について語ってみたいと思う。が、あまり枝葉末節に入って行っても仕方ない。自分は医学者でもジャーナリストでもない、ただの結婚移民に過ぎないので、生活者としての実感をここに書いてみたい。

韓国におけるコロナの対策は、経済学風に言うとelasticityがあると思う。

elasticityは日本語では「弾力性」と訳されるらしいが、感覚が伝わるかどうか不安である。ある政策にelasticityがあるとき、その政策にはより明らかな成果が見えるのである。

elasticityを別の言葉で言い換えてみよう。韓国のコロナ対策は、「ブレーキの利き」がいいと思う。決して、コロナ新規患者がゼロになったわけでは無い。たびたび小流行を繰り返している。だが、そのたびに、「しっかり対策をすれば2週間後には感染者が激減しているはずだ」という安心感に近い感情がある。

韓国では、政府のコロナ対策本部がある。疾病管理庁という。元はそれほど大きな部署ではなく、疾病管理本部という扱いだったが、2020年9月に独立した省庁となった。この経緯は、韓国在住のジャーナリストの徐台教氏の記事に詳しい。 

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20200911-00197832/

疾病管理庁やその前身たる疾病管理本部は、今年の1月から八面六臂の大活躍だった。初期の中国からの入国者・接触者のトラッキング、マスクなどの効果に関する調査と宣伝、南部の都市である大邱での大流行の即座の鎮圧、数えればきりがない。

今年の4月には国会議員選出の選挙があった。大邱での大流行が落ち着いて間もない時期に、選挙という人と人が交わりあうイベントを、全国規模で行うことにかなりの不安があった。が、ふたを開けてみればほとんど影響がないことが明らかになった。

また、8月には光復節に極右団体が大規模集会を行ったこともある。この時には極右が、当局の監視にも関わらずなりふり構わず振り切って集会を開いたのだが、ここでも一時拡散の兆しがあった。疾病管理本部はこの時、改めてコロナの脅威を盛んに社会に対して呼びかけたところ、2週間後にはまた落ち着きを取り戻した。

9月末には韓国人の重要な伝統イベントの一つである、秋夕(チュソク)というものもあった。これは旧暦のお盆のようなもので、親戚一同が集まるための連休だったが、ここでも政府が「今年は集まらないほうがいいですよ」ということを陰に陽に言い続けた結果、秋夕でのコロナ再拡散は防がれた。

こうした政府のリーダーシップと、それに伴って(2週間という)時間差で鎮圧がなされるという繰り返しが、韓国社会全体に、「たとえ再拡散の兆しがあっても、しっかり隔離や自制をすれば抑え込める」という自信のようなものを与えているように思う。

韓国にとっても、世界の他の全ての国と同じように、コロナは未知の脅威である。だが、同じ未知の脅威であっても、それに立ち向かう人々の心持ちによって、生まれる結果が極端に違うようだ。

中国は、この問題のウイルスの大流行が最初に確認された国である。人口も世界で一番多い。しかしながら、徹底した検査と隔離とロックダウンによって、すでに事実上感染者をゼロにするところまで来ている。台湾も、ベトナムも、ニュージーランドも、同様に徹底した対策によって、自分たちの社会での感染者をゼロに近い水準で抑え続けている。

一方、日本やアメリカでは、そもそもコロナを封じ込めるべきかどうかについての議論を、いまだに続けているらしい。封じ込めが可能であることが、上記のような諸外国の例からすでに明らかになっても、そういう議論をしているらしい。とても不思議である。

コロナを完全に抑え込み続けている台湾では先日、性的少数者のパレードが行われたという。同性婚をアジアで初めて合法化した台湾が、コロナを完全に抑えているのは、決して偶然ではないと思う。未知の脅威に対する際に最も必要なのは、自分の知らない領域があると虚心に認める態度である。無知の知、とも言う。そうした知的態度を維持するのは、例えば社会的弱者に対する態度と相関があるはずだ。

「知性を蔑ろにした社会には決して克服できない脅威」が登場してしまった時代に、我々は生きている。

@atsushiseoul

日本にとって韓国は「忘れ得ぬ他者」である

日本出身者として韓国で生活していると、不思議なことがある。

インターネットの時代なので、韓国であろうと日本語の情報には不自由しない。ところがこれには落とし穴があって、その日本語の情報というものがかなり怪しいのである。

検索サイトに行ってみる。韓国住みなので、韓国での出来事もどう報道されているかを覗きに行く。それを繰り返していくと、自分のヤ〇ーサイトのトップページに韓国関連の記事がお勧めで出て来やすくなる。そう思っていた。

ところが、別に韓国住みではなくても、日本では韓国の話題に事欠かないらしい。KPOP?韓国ドラマ?そういう話題ではない。

日本では韓国のことが話題になり続ける。それはエンターテイメントではなく、主に政治、それも韓国の国内政治が話題となっているらしい。いわく、与党政治家にスキャンダルがあった。いわく、若者の失業率が最悪だ。いわく、競争社会で人々が絶望している、等々。

日本は理想郷なので国内での社会問題をすべて解決してしまって、退屈なので隣国の心配をしているのだろうか?習近平は中国の人権問題に何かと口出しをする西洋人を指して、あれは「吃饱了没事做的外国人(お腹がいっぱいになるまでご飯を食べたので、やることが無くなってヒマな外国人)」であると皮肉ったことがある。日本人もお腹いっぱいなのでじゃあ外国の心配でもしてあげるかとなったのか?どうもそうではないらしい。

韓国と違って日本政治に腐敗はないのだろうか?そんなことはない。スキャンダルの連続である。日本では若者の失業問題は存在しないのだろうか?お兄さんそれ僕の友達の前で言える?日本は競争社会ではないのだろうか?いやいや自分の人生振り返ってみてくださいよ。

全て、日本でも問題になっていることである。なのになぜか韓国のことばかり報道し、まるで韓国に比べて日本はマシであると書くことで安心したがっているかのようだ。

いやいや即断は良くない、何か考えるヒントは無いだろうか、そう思いを巡らせていると、ある本を思い出した。

日本史、特に明治維新研究の大家であり、東京大学名誉教授の三谷博が書いた『愛国・革命・民主:日本史から世界を考える』筑摩選書、2013年である。

私は、この本で紹介されている、「忘れ得ぬ他者」という概念に改めて感銘を受けた次第である。

「忘れ得ぬ他者」とは何か?簡単に言うと、近代国家が成立する際には、「分かりやすい敵」であるとか、「憧れの外国」のような存在が必要である、という考え方である。

日本は、古代以来ずっと中国文明にあこがれてきた。漢意(からごころ)に対抗して、大和魂(やまとだましい)を喧伝してみた本居宣長は、そんなコンプレックスを一人で背負っている代表格である。あこがれて、でもそれにはなれなくて、いつまでも想い続ける。これも「忘れ得ぬ他者」である。

逆に、敵愾心から忘れたくても忘れられない対象になることもある。アメリカ合衆国は、独立革命の仇敵であった英国を永遠に忘れることはない。中華人民共和国は、半封建半植民地であった近代中国の弱みに付け込んで侵略戦争をしかけた日本を永遠に忘れることはない。結局、そうした苦難の戦争を乗り越えて国家を建設できたと言えば聞こえはいいが、だからこそいつまでも忘れることはできない。これも「忘れ得ぬ他者」である。

三谷博の議論で大事なのは、日本にとっての「忘れ得ぬ他者」は、古代以来ずっと中国だったのに、日清日露戦争で急激に影が薄まり、太平洋戦争の敗戦によりほぼ完全に中国は「忘れられた」(そしてアメリカが「忘れ得ぬ他者」となった)ということである。大急ぎで付け加えると、冷戦以降、日本人は中国を「思い出した」。中国の国力が回復するにつれ、日本人は再び中国を忘れられないようになっている。

と、ここまでが三谷の議論なのであるが、どうもここに韓国というファクターを補充しなければならない気がしている。

日本の言論空間を見るに、韓国について報道しない日は無い。いや、報道とさえ言えない、下世話な、貶めるような、植民地主義そのものの言説が日々垂れ流されている。

だが、ただの植民地主義、卑下するような言説であると一蹴するには、何だか屈折したものがあるような気もしていて、その理由をうまく説明するのに苦労していた。

三谷博の言う「忘れ得ぬ他者」ではそれがうまく説明できてしまうのである。三谷のモデルの中では、新しい国家を建設する時に引き合いに出される外国(好意的であれ敵対的であれ)が必要であるということだが、冷戦後経済停滞に苦しむ日本は、無意識のうちに敵対する国家を必要としていたのではないだろうか?もちろん、日本社会にもともと存在していた植民地主義的、民族差別的な情緒も大きいだろうが、それにしても他者を媒介にしてしかもはや社会をまとめられなくなっているのではないだろうか。

日本にとって韓国は「忘れ得ぬ他者」になった。忘れられないので、毎日韓国のことについて報道せざるを得ない。韓国無しでは日本をまとめられないのである。

社会を動かすものは何か

社会を動かすものが何なのか、その定義によって社会の見え方は変わってくると思う。

ある人は経済だと言うだろうし、ある人は情報だと言うだろう。また別の人は軍事力と言うかもしれない。どれもある程度正しいだろうし、どれか一つだけが正しいわけでもないだろう。

私が興味を持つ分野に、歴史学と経済学があるが、どちらもある意味社会を動かすものが何かについての探究であるように思う。時間の流れを輪切りにして、その時代時代の瞬間を切り取って理論を作っていくのが経済学だとしたら、世の中の流れを「語り」上げるのが歴史学なのかも知れない。

自分が大仰なタイトルで記事を書き始めてみた理由は、どうも今の社会を動かすものをどう描写していいのか悩むことが増えたからだと思う。資本なのか?国家なのか?テクノロジーなのか?

ユヴァル・ノア・ハラリは今後の世界を動かすものは情報技術と生命技術だと分かりやすく整理している。特に生命技術の話や、今後のスーパー人類の話などはとても興味深い。

が、何となく、自分には語り切れない分野であるという気がしている。

自分は、やはり、いわゆる人文系で(まあそれを言ったらハラリもそうだが)、歴史の流れの中で社会構造が変わっていく様を「語り」によって捉えてみたいという歴史学徒(またしてもハラリ先生こそ大先輩だが)の端くれなのだと思う。

「語り」たいことは他にもあって、要するに

・人間社会のリソース(資源)の相当部分を、「国家」という組織に集中させて、経済その他の社会活動を回していく

というスタイルが、いつまで有効なのだろうかということである。それは、「正統性」(正当性とは限らない)をめぐる政治経済学となるはずである。「記録」の正統性が暴力に依存しなくなった世界では、暴力を独占する存在としての国家は、解体されずに済むだろうか?

ちなみに、「記録」の正統性を国家から奪うはずの技術が、ブロックチェーンと呼ばれる技術である。

ゆっくり考えていきたい。時間はだいぶかかるはずだからだ。ただし、国家が無くなった世界では、「国家があった頃」の様子を想像することは相当難しくなっているはずだろうけれど。

@AtsushiSeoul

今週の #韓国ブロックチェーン (2020年11月1日週)

#住宅都市保証公社 #特定金融情報法

今週の #韓国ブロックチェーン (2020年10月25日週)

#釜山 #B패스 #BPU #Medium #ブロックチェーン

https://www.themedium.io/technology/hardwareBlockchain.do?menuIdx=51

今週の #韓国ブロックチェーン (2020年10月18日週)

ブロックチェーンの社会的受容についての一考察

~韓国の「仲介人のいない不動産取引」をめぐる議論を中心に~

@AtsushiSeoul

問題の所在

言論空間において、ブロックチェーン(分散台帳技術)の解決すべき問題については多くの議論がなされてきた。社会的に大きな変革をもたらすという見解がある一方で、逆に解決できる問題はほとんど存在しないという意見もある。

韓国においては2020年に政府機関が発表した「仲介人のいない不動産取引」という概念が、不動産仲介業の職を奪うとして関係団体による反発を招き、社会問題として提起されつつある。

本論では、韓国における「仲介人のいない不動産取引」が惹起した議論の経緯を紹介しつつ、韓国社会においてブロックチェーンがどのように捉えられているのかを整理し、社会がブロックチェーンに向き合う上での知見を得ることを目指す。

本論

韓国政府の来年度予算案が呼んだ波紋

大韓民国(以下、「韓国」)企画財政部は2020年9月1日「“コロナ克服、先導国家” 2021年 予算案」というタイトルで来年度予算案を発表した。企画財政部とは、日本や諸外国の財務省に相当する韓国政府の中央官庁であり、英語ではMinistry of Economy and Financeである。

同資料の14ページに「知能型(AI)政府」という項目がある。その中に「福祉給与重複受給管理、仲介人のいない不動産取引など」について「19個の分野でのブロックチェーン活用実証」に133億ウォンを投資するという内容がある。この、韓国語原文では중개인 없는 부동산 거래という「仲介人のいない不動産取引」という文言が、メディアや不動産業界、果ては国会まで巻き込んで韓国社会で波紋を呼んでいる。韓国には不動産取引を専門とする「公認仲介士」という国家資格の職業があるが、予算案は公認仲介士の存在を否定するものではないか、という憶測や反発が広がっているのだ。

「公認仲介士」とは何か

この波乱を読み解くために、まず前提として確認しなければならないのは、「公認仲介士」という職業についてである。

韓国では法令(「公認仲介士法」)の定めるところにより、公認仲介士の資格の無いものは業としての不動産仲介を名乗ることはできない(「公認仲介法」第2条及び第18条)。また、公認仲介士の資格試験を管理監督するのは国家であるため(同第4条)、事実上韓国における不動産開業のために必要不可欠な資格である。業としてではなく、当事者間での不動産取引は禁じられてはいないものの、法的知識や取引相手の選定の難しさもあり、オープンマーケットでの取引としては一般的ではない。

したがって韓国における公認仲介士は、不動産取引業を開業するにあたり必須の資格であると同時に、受験層が国民全体に広がる、非常に一般的な資格である。韓国で不動産取引を行おうとする際にほぼ必ず公認仲介士を介して行う必要があるという面では、同試験の受験を考えない韓国人にとっても身近な存在であると言える。

「仲介人のいない不動産取引」とブロックチェーン

続いて、政府が「仲介人のいない不動産取引」という文言で意図するところは何なのだろうか。これを読み解くための手掛かりが、同文書でも言及されている「ブロックチェーン」という技術である。

ブロックチェーンは、一般的に分散台帳(distributed ledger)技術と呼ばれることが多い。元となる概念は、インターネットコミュニティで匿名(“Satoshi Nakamoto”名義)で公開された論文“Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System”の中で提唱されている。同論文はBitcoinという名称で、特定の機関による中央集権的な認証を経ずとも、プロジェクトに自発的に参加したコンピューター(やその持主)が計算能力を持ち寄ることで、数学的に事実上転覆不能な記録台帳を提唱した。この記録台帳が保証する仮想通貨をBitcoinと呼び、また、記録台帳及びその維持システム全体のことをブロックチェーンと呼ぶことが多い。

ブロックチェーンは、中央機関に依存しないネットワークシステムの構築を可能にするため、様々な社会的応用が提唱されている。整理された議論としては『ハーバード・ビジネスレビュー』に掲載された Marco Iansiti and Karim R. Lakhaniによる“The Truth About Blockchain”がある。この論文は、TCP/IP技術がEメールのような比較的単純な技術革新から始まり、ワールドワイドウェブ等の複雑な技術体系の基層を支えつつ全く新しい経済圏を生み出したことを指摘しつつ、ブロックチェーンも同様に新しい技術的生態系を生み出す可能性について言及している。IansitiとLakhaniの議論によれば、TCP/IPが接続コストを劇的に減少させたように、ブロックチェーンは取引コストを劇的に減少させたという面で両技術には共通する面があり、ブロックチェーンはかつてのTCP/IPが実現した最も初期の技術であるEメールのような段階にあり、今後さらに複雑かつ大規模な新たな価値体系の基層となりうる。

今回の韓国政府による「仲介人のいない不動産取引」が念頭に置くのもブロックチェーンのようである。その背景には、上述した中央機関に依存しないネットワークシステムを可能にするブロックチェーンの技術的可能性があるのは間違いないだろう。他方で、ブロックチェーンには社会的には事実上インパクトを与えないとする言説も存在する。ジャーナリストであるJesse Frederikによれば、ブロックチェーンはいくつかの重大な問題(忘れられる権利の侵害・プライバシーの侵害・責任者の不在・環境問題)を抱えつつも、実用化に至るプロジェクトはほとんど無く、「魔術の市場(“a market for magic”)」に過ぎない面があるとしている。

Frederikの議論はブロックチェーン懐疑論の一典型例と言える。しかし、社会がブロックチェーンをどう向き合うかというテーマで世論の関心を惹起するほどの事態になった例というのは探すのが難しい。その意味で、韓国において政府による「仲介人のいない不動産取引」の発表が大統領府への請願やデモ(国会前における一人デモ)まで発展した韓国の例は、ブロックチェーンと社会の関係について興味深い事例と言えるだろう。

議論の展開を読み解く

調査の方法について

議論の展開を追うにあたり、参考としたのは韓国の代表的インターネットポータルサイトであるネイバー(NAVER)である。同サイトは統合検索機能を備えており、特に韓国語によるインターネット上の情報収集に注力している。本論では同サイトのニュース検索機能により表示される記事を中心に議論の展開を追うこととする。

9月1日:企画財政部の予算案の発表と初期反応

まず、振り返っておくと 企画財政部が「“コロナ克服、先導国家” 2021年 予算案」を発表したのは2020年9月1日である。同日の言論空間に見られる言説は、もともと韓国政府が実施を宣言していた「韓国版ニューディール」というプロジェクトの詳細紹介という形で、同予算案の概観を紹介する記事が中心である。経済や技術の切り口から『CBSノーカットニュース』、『イーデイリー』、そしてブロックチェーン専門メディアの『ザ・ブロックポスト』の三社が9月1日に予算案を紹介しつつ「仲介人のいない不動産取引」に言及しているが、公認仲介人の反発が起きていないのでその紹介が無いのはもちろん、メディアとしての賛成反対についての立場の表明なども見られない。

9月13日:公認仲介士の“反発”についての初めての報道

ところが約2週間後の9月13日、『聯合ニュースTV』のニュース記事は、「仲介人のいない不動産取引」に絞って紹介しつつ「不動産仲介業者関係者」による声を紹介している。この人物は「公認仲介士を廃止して取引をするというのは現実には難しい」と述べつつ、『聯合ニュース』も不動産詐欺の危険性や複雑な手続きを考えると、公認仲介士廃止には限界があるとのコメントを加えている。これが、本論調査中に確認された 「仲介人のいない不動産取引」に対する大手メディアの最初の意見表明である。

9月21日:韓国公認仲介士協会による請願

『聯合ニュースTV』の報道から約1週間後の9月21日、韓国公認仲介士協会が「“仲介士のいない不動産取引システムの検討”糾弾のための国民請願参加案内」というタイトルで公示を出し、同日付で青瓦台(大統領府)の国民請願ホームページに「韓国版ニューディール政策で“仲介士のいない不動産取引システムを作る”という文在寅大統領への上書」という請願を立ち上げている。同請願は9月21日から10月21日までの一か月賛同が募られ、最終的に203,274名の賛同を集めている。一方で発端となった韓国公認仲介士協会の公示の照会数は11,097回に過ぎないので、様々なルートを通じて拡散されたことが推測される。

9月22日~31日:公認仲介士の反発・政府の足並み・不動産業界についての報道

こうした公認仲介士たちの反発を受け、メディアも反応し始める。翌9月22日にはdomin.comが、「画面だけ見て取引?仲介士たち“あり得ない”」というタイトルで、仲介士たちの反発を正面から取り上げた。公認仲介士協会メンバーのインタビューや国民請願を取り上げながら、同メディアが初めて言及したのは失業問題についてである。国民請願でも言及されているように、政府が提唱する雇用創出の原則と、公認仲介士のいない不動産取引は、矛盾するという指摘である。ただし、同メディアは韓国国内でも保守色が強く、韓国の現政権に批判的な政治的情緒があるとされる慶尚南道の地域メディアであることに留意が必要である。

企画財政部の予算案についての政府内部の不一致

domin.comの報道に続き、9月23日に再び『聯合ニュース』がこの問題を取り上げている。ただし、この日の報道は公認仲介士の反発を伝えるだけではなく、政府側の反応を取り上げているところが新しい。同社の取材によれば、発端となった9月1日の予算案で言及された「仲介人のいない不動産取引」について、政府内で意思が統一されていないどころか、存在を認識していない部門さえあったというのである。記事内容を整理すると、以下のようになる。

  • 企画財政部:予算案を作成した当事者。しかし、細部については科学技術情報通信部の資料を集めただけと主張。
  • 科学技術情報通信部:ブロックチェーン活用実証事業関連の資料は作ったが、仲介人のいない不動産取引については知らないと主張。
  • 国土部:不動産を管轄する官庁。しかし、仲介士のいない不動産取引について知るところはないと主張。

公認仲介士をめぐる厳しい現状

もう一つ、『聯合ニュース』の指摘で重要な点は、政府がこれまで進めてきた公認仲介士に関連した政策である。これは不動産取引の手数料引き下げに関するものであり、これが公認仲介士たちの反発の土壌となっているというものである。『聯合ニュース』の報道に続き、同日には多くのメディアがこの件を取り上げている。議論のポイントは、以下のとおりである。

  • 公認仲介士は不動産仲介の手数料で利益を上げるのが生業であるが、最近の不動産業界は不況であり、公認仲介士たちは経済的に厳しい状況が続いている。
  • 背景としては政府による不動産所有規制(特定地域についての不動産所有件数制限)や、上昇を続ける不動産価格に伴って手数料が上昇することによる消費者の不満などがある。
  • 特に、手数料については取引金額に関わらず一定の割合であるため、高額な取引であればあるほど手数料が高くなることが消費者の不満になっていることを取り上げ、それが公認仲介士に対する世論の同情が集まらないことが課題であるとしている。

10月7日・10月16日:政府による火消し発言

9月に広がった公認仲介士の反発やその報道を受けて、10月7日についに韓国政府が立場を改めて説明した。10月7日、国会の国政監査においてホン・ナムギ経済部副総理兼企画財政部長官(日本の大臣に相当)は、「科学技術情報部においてブロックチェーン実証研究の一環として提示されたもの」としつつ、「研究のレベルであり公認仲介士が無くなるというわけでは無い」と説明している。

また、10月16日にはキム・ヒョンミ国土交通部長官も国土交通部国政監査において「現在導入を検討しているわけではない」と説明した。

以上が、「仲介人のいない不動産取引」という政府予算案が巻き起こした議論や報道についての経緯である。本論の最期に、こうした議論を通じて韓国社会においてブロックチェーンがどのように捉えられているのかを整理したい。

ブロックチェーンはどう捉えられたのか

上述の議論の中で、韓国社会でブロックチェーンはどのように捉えられてきたのだろうか。それを整理するために、政府予算案とメディアそれぞれおけるブロックチェーンの捉え方を整理してみる。

  • 政府予算案の中のブロックチェーン

そもそもの発端である政府(企画財政部)の予算案内でのブロックチェーンの言及は限定的である。 同資料の14ページ「知能型(AI)政府」の中に「福祉給与重複受給管理、仲介人のいない不動産取引など」について「19個の分野でのブロックチェーン活用実証」に133億ウォンを投資するという内容があるが、ブロックチェーンそのものについての定義は見つけることが出来なかった。

また、既述の通り報道によれば、そもそも政府の内部でさえこの「仲介人のいない不動産取引」については誰の意志で記載されたのかが不明瞭であるため、本論では韓国政府によるブロックチェーンについての定義は不明としたい。

  • メディアによる分類

2.1 技術紙

・予算案発表日である9月1日の『The Block Post』は、ブロックチェーンの特徴を「透明性と保安性を確保できる」と整理したうえで政府の狙いを「取引の便宜性を高める」ことだと報道している。

  • 2 経済・総合紙

・9月22日のdomin.comはブロックチェーンを「多くのコンピュータで同時に資料を複製し保存する分散型保存技術だ」と紹介する。

・10月9日の헤럴드경제は「韓国公認仲介士協会の関係者」の声として、「ブロックチェーンは公文書偽造を防ぎ、仲介者無しに不動産の直接取引が可能になるというのが政府の主張だが、ブロックチェーンが安全な取引の助けにはなるかも知れないものの公認仲介士の業務を代替することは無い」としながら、ブロックチェーンの技術について間接的に言及している。

結論

本論では、韓国における「仲介人のいない不動産取引」の議論を通じて韓国社会がブロックチェーンをどう捉えているのかを考察しようとしてきた。

政府におけるブロックチェーンの捉え方は予算案の中では確認できなかったものの、メディアにおいては「透明性」「保安性」「分散型」「安全」といったキーワードで説明されていることが伺える。この説明自体は的確であると執筆者は考える。

しかし残念ながら、一連の議論の中でそもそもブロックチェーンとどう向き合うかという面から深く考察した言説が見られたとは言い難いのではないだろうか。言論空間においての議論は、どちらかといえば公認仲介士の苦境や政府発表の混乱をあげつらったものが中心であったと言える。

この議論の中から教訓を得るとするならば、そもそも誰にも全体が見えていないのがブロックチェーンの本質であるということではないだろうか。政府予算の作成の際に所轄官庁と予算作成官庁の間での調整が十分でなく、責任の所在が不明瞭なままブロックチェーンというビッグワードが入り込み、ついには公認仲介士の生業を脅かすものとして世論に捉えられたという経緯もそうであるし、それを批判した公認仲介士もメディアも、ブロックチェーンが何かということは問題とせずに、「政府」という主体に対する批判に終始していた印象がぬぐえない。そうした、正体が分かりにくいものとしてのブロックチェーンと社会の付き合いは、まだまだ始まったばかりであるということを強く印象付けられた議論であった。

参考文献及びリンク

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http://www.kar.or.kr/pnews/noticeview.asp?notice=2069

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국민청원 계시판 “한국판 뉴딜정책으로 ‘중개사 없이 부동산 거래하는 시스템을 만들겠다’는 문재인대통령님 전 상서.”, 2020년9월21일

https://www1.president.go.kr/petitions/592978

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Satoshi Nakamoto, Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System

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https://thecorrespondent.com/655/blockchain-the-amazing-solution-for-almost-nothing/86649455475-f933fe63

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https://hbr.org/2017/01/the-truth-about-blockchain

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公認仲介士法、 国家法令情報センター

Accessed on October 24, 2020

김민재 기자

내년부터 한국판 뉴딜 본격 추진…21.3조 통 큰 투자

CBS노컷뉴스

2020-09-01 08:30

https://www.nocutnews.co.kr/news/5404276

Accessed on October 25, 2020

이명철 기자

[2021예산안]디지털·그린뉴딜 등 21조 투입…일자리 36만개 만든다

이데일리

2020-09-01 8:30:00

Accessed on October 25, 2020

이설영 기자

[2021 예산안] 정부, 블록체인 실증사업에 예산 집중

2020.09.01 15:36

https://www.fnnews.com/news/202009011436471904

Accessed on October 25, 2020

연합뉴스TV

지능형 정부화…중개인 없는 부동산 거래도 시동

2020-09-13 09:16:16

https://www.yonhapnewstv.co.kr/news/MYH20200913000600038?did=1825m

Accessed on October 25, 2020

한국공인중개사협회

‘중개사 없이 부동산거래하는 시스템 검토’ 규탄을 위한 국민청원 동참 안내

2020-09-21     

http://www.kar.or.kr/pnews/noticeview.asp?notice=2069

Accessed on October 25, 2020

대한민국 청와대

한국판 뉴딜정책으로 ‘중개사 없이 부동산 거래하는 시스템을 만들겠다’는 문재인대통령님 전 상서.

2020-09-21

https://www1.president.go.kr/petitions/592978

Accessed on October 25, 2020

김희곤 기자 

화면만 보고 집 거래? 중개사들 “안될 말”

2020년 09월 22

http://www.idomin.com/news/articleView.html?idxno=740219

Accessed on October 25, 2020

윤종석 기자

‘중개사없는 거래’에 놀란 중개사들…정부는 ‘어디서 한대요?'(종합)

연합뉴스

2020-09-23 16:25

https://www.yna.co.kr/view/AKR20200923093351003?input=1195m

Accessed on October 25, 2020

이재빈 기자

정부, 중개수수료 개편·중개사 없는 거래 추진에 업계 반발 이어져

매일일보

2020.09.27

http://www.m-i.kr/news/articleView.html?idxno=750365

Accessed on October 25, 2020

아시아경제

생존권 투쟁 나선 공인중개사들…냉담한 여론 어떻게 돌파할까

2020.10.04

https://view.asiae.co.kr/article/2020100411332443925

Accessed on October 25, 2020

이민경 기자

文정부 들어 뿔난 공인중개사 왜?[부동산360]

헤럴드경제

2020-10-09

http://news.heraldcorp.com/view.php?ud=20201009000087

Accessed on October 25, 2020

‘중개인 없는 부동산거래’ 미스터리… 문구 하나로 대혼란

조선비즈

2020.09.24 15:22

Accessed on October 25, 2020

김준희 기자

위기의 중개업자들… 각종 규제·新거래시스템 도입에 ‘사면초가’

한스경제

2020.09.27 12:45

http://www.sporbiz.co.kr/news/articleView.html?idxno=470421

Accessed on October 25, 2020

이영웅 기자

부동산거래시스템 구축 방침에 뿔난 중개사…정부 “실제도입 아냐”

아이뉴스24

2020.10.08

http://www.inews24.com/view/1305535

Accessed on October 25, 2020

성유진 기자

김현미 “공인중개사 없는 주택 거래 검토 안해”

조선일보

2020.10.16

Accessed on October 25, 2020

今週の #韓国ブロックチェーン (2020年10月11日週)

予告です。来週の #韓国ブロックチェーン では、最近韓国社会を騒がせている「仲介人無しの不動産取引」についての解説をします。簡単に言うと以下のような問題意識から解説してみたいと思います。

ブロックチェーンの社会的受容についての一考察

~韓国の「仲介人のいない不動産取引」をめぐる議論を中心に~

@atsushiseoul

問題の所在

言論空間において、ブロックチェーン(分散台帳技術)の解決すべき問題については多くの議論がなされてきた。社会的に大きな変革をもたらすという見解がある一方で、逆に解決できる問題はほとんど存在しないという意見もある。

韓国においては2020年に政府機関が発表した「仲介人のいない不動産取引」という概念が、不動産仲介士たちの職を奪うとして関係団体によるデモを招き、社会問題として提起されつつある。

本論では、韓国における「仲介人のいない不動産取引」が惹起した議論の経緯を紹介しつつ、韓国社会においてブロックチェーンがどのように捉えられているのかを整理し、社会がブロックチェーンに向き合う上での知見を得ることを目指す。

参考サイト

Satoshi Nakamoto, “Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System”

Marco Iansiti and Karim R. Lakhani “The Truth About Blockchain” Harvard Business Review, the January-February issue

Jesse Frederik, “Blockchain, the amazing solution for almost nothing”, the Correspondent,21 August 2020.

기획재정부 “’코로나 극복, 선도국가’, 2021년 예산안 및 2020~2024년 국가재정운용계획”, 14p, 2020년9월1일

한국공인중개사협회 “‘중개사 없이 부동산거래하는 시스템 검토’ 규탄을 위한 국민청원 동참 안내”, 2020년9월21일

국민청원 계시판 “한국판 뉴딜정책으로 ‘중개사 없이 부동산 거래하는 시스템을 만들겠다’는 문재인대통령님 전 상서.”, 2020년9월21일

【韓国】最近のコロナ対策について感動したこと

あにゃーせよ!(안녕하세요!)妻を追って韓国に移住した아츠시(@AtsushiSeoul)です!

私の住む韓国でもまだまだ勢いが消えないコロナ(COVID-19)ですが、最近このコロナ対策で感動したものを二つご紹介したいと思います。

感動したコロナ対策その1:地下鉄改札口での「マスク着用」アナウンス

何だそりゃ、って感じだと思いますが、そのまんまです。

地下鉄の改札口に、交通カード(SUICAみたいなやつ)をピッと接触させます。

すると、”마스크를 착용하세요”(マスクを着用してください)というアナウンスが流れるようになったのです!9月くらいからかな?

最近韓国では、交通機関でのマスク着用の義務に対して法的根拠が出来ました。国会でそういう法律が通過したのです。

これによって、マスクをしない乗客には正式に罰することができるようになったようです。

改札口でのアナウンスは、それに合わせたものでしょうか。

感動したコロナ対策その2:高速道路サービスエリアでの、「ワン切り電話での入場証明」

これまた何のこっちゃだと思います。説明します。

不特定多数の人間が集まる可能性の高い施設、例えばレストランやカフェ、その他公共施設はコロナの感染拡大の危険が非常に高いです。

そのため、その日に誰が入場したのかを記録する必要があります。

今までですと、そうした入場記録を取るために

1.普通の紙に個人情報(名前、電話番号、簡単な住所)を書いてもらう

という方式が主流でした。しかし、これには問題点があって、

「他人の個人情報を他の客が見れてしまう」

というものです。考えてみれば当然ですね。そこで、最近出てきたのが

2.客がネイバー(Naver)のホームページから個人QRコードを生成し、店のバーコードリーダーで読み取る

というスタイルです。これならスマホさえ使えれば誰でもできるし、個人情報も守れる。ネイバーは韓国人ならみんな使っているポータルサイト(日本でいうならヤフーくらいメジャー)なので、だいぶ進入障壁も低いはず。スマホさえ使えれば。スマホさえ使えれば。。。

ところが実際問題、スマホを使い慣れていない人も社会の中には多数います。

コロナはスマホリテラシーなどお構いなしに拡散するので、そういう人も含めて入場記録を取る必要があります。そこで、上述の「電話ワン切り」システムです。

この写真は韓国のある高速道路の休憩所(サービスエリア)で撮影したものです。

赤い丸で囲った部分が、電話番号なのですが、サービスエリアの利用者は、入り口でまずこの電話番号に電話をかける必要があります。

私もやってみましたが、「プルルルル…」と電話がなったと思うとすぐに

“인증되었습니다.”(認証されました)

というアナウンスが流れ、自動で通話が終了しました。電話番号をダイヤルしてからメッセージが流れ、切れるまでの時間、約7秒。これなら簡単だし、速いですね。

その施設専用の電話番号を用意するという手間はかかりますが、お客さんの立場からするとこの電話ワン切りシステムが一番便利でした!今後こういう便利な方法が広まるといいですね。

以上、韓国から、最近感動したコロナ対策を二つお送りしました!

今週の #韓国ブロックチェーン (2020年10月4日週)

#韓国ブロックチェーン #不動産 #公認仲介士 #スマートコントラクト

韓国生活 何気ない日常風景:スーパー

あにゃーせよ!(안녕하세요!)妻を追って韓国に移住した아츠시です。

今日は近所のスーパーの風景を紹介します。

韓国のスーパーで売られているお菓子
韓国のスーパーで売られているお菓子 その2
韓国のスーパーで売られているお菓子 その3
韓国のスーパーで売られているお菓子 その4
韓国のスーパーで売られているカレー
韓国のスーパーで売られているカップラーメン
韓国のスーパーで売られている袋ラーメン
韓国のスーパーで売られているビール
韓国のスーパーで売られているお酒
韓国のスーパーで売られているスパム
韓国のスーパーで売られている海苔
韓国のスーパーで売られているヨーグルト
韓国のスーパーで売られているお芋

以上、韓国では何でもない日常の風景ですが、コロナで韓国に来れなくて韓国ロスの人もいるかと思ってお届けしました。

それでは!

韓国でお葬式に行ってきた【日本婿あつしの韓国生活】

あにゃーせよ(안녕하세요)!妻を追って韓国移住したあつし(@atsushiseoul)です。今回は韓国で初めてお葬式に行ってきたので記事にしました。ご参考までにどうぞ。

韓国でお葬式に行ってきた

・はじめに

  • 韓国での初めてのお葬式
  • 故人との関係

・お葬式について

  • 場所:大邱(テグ)の病院地下葬式場
  • 日時:23
  • 参加者:ほぼ家族のみ。コロナ時代を実感
  • 内容:ひたすら待機のお葬式・涙涙の火葬場・自然へと還る樹木葬

   1日目:突然の訃報・飛び乗るKTX・式場泊

   2日目:徹夜明けの喪主たち・涙の入館・ひたすら待機・親戚との会話・充実した食事

   3日目:早朝の發靷(出棺)・記憶を頼りに進む山中・樹木への散骨・道端での食事

・文化の違い?印象的だったこと

  • 宗教?
  • 「忌引き」について
  • 「泣くこと」について

・韓国で初めてお葬式に参加して、次回から準備したほうがいいと思ったもの

  • 事前の確認:家族の連絡先・お金・忌引き制度・お墓の確認
  • 心の準備:宗教・遺言・外国で死ぬということ

・はじめに

韓国での初めてのお葬式

韓国でお葬式に行ってきた。僕にとっては初めての韓国でのお葬式である。

お葬式と言うのは人が亡くなった時に行うものであるから、誰にとっても悲しいイベントである。韓国人の妻を追って韓国に移住した日本人婿の僕にとっても、色々と大変だった。日本とは違うお葬式文化や、密な親戚同士の人間関係を2泊3日でみっちりと経験することになった。ある意味では貴重な経験をしたと言える。あまり考えたくないお葬式というイベントではあるが、比較的精神的打撃が少ないうちに、今回経験した韓国でのお葬式の流れを記録に残し、将来の自分や、韓国でお葬式を出すことになるかもしれない方々の参考になればと思い筆を執った次第である。

故人との関係

私は韓国に住む日本人男性である。韓国人の妻を追って韓国に移住した、日本人婿である。今回亡くなったのは妻の父方の祖母に当たる方であり、妻にとっては存命の唯一の祖父母であった。

享年95歳の大往生であり、半年ほど前の今年の旧正月にお会いしたときは多少痴呆の気はあったものの矍鑠としておられた。高齢の方が亡くなるときというのは、急に容体が悪くなるものらしい。が、それまで大きな病気も無くお元気でいらしたというのは不幸中の幸いであった。

今年95歳ということは、生まれてから成人するまで日帝強占期を過ごしたということだが、痴呆のためかそもそも日本語教育を受けなかったためか、あるいは他の深い理由かは分からないが、日本人婿の僕と日本語で会話した記憶はない。故人は若くして夫と死別している。30歳ごろに夫に先立たれた故人は、妻の父を含む3人の子供を女手一つで育てていくこととなった。韓国戦争が終わったばかりの混沌とした時代である。3人とも立派に成人されたが、その苦労は想像を絶するものがある。晩年は孫にも恵まれ、特に私の妻は大変可愛がってくださったようである。妻が大学に合格したときは家で踊り倒したということだ。また、愛煙家でもあり、亡くなる直前まで煙草を吸っていたにもかかわらず、医師によると肺はとてもきれいであったという。激動の時代を生き抜いた人らしい、生命力にあふれる方だったようだ。

宗教的には無宗教である。が、息子夫婦(=私の妻の両親)が近年ローマカトリックに入信したこともあり、亡くなる直前に洗礼を受けることとなった。洗礼名マリア。

・お葬式について

今回僕が参席した、韓国でのお葬式について書いていこうと思う。

ところで、世の中には文化人類学という学問があり、人間社会を客観的に観察・研究する知の体系があることは僕も知っている。そういった学問の徒であれば、僕が今回経験したような異国でのお葬式のようなイベントについても深い考察ができるのだと思う。が、残念ながら無知なる一移民に過ぎない僕にとっては、5W1H及びタイムラインを掲示するのが精いっぱいである。あくまでも僕の経験した内容ということをご了承いただければ幸いである。

場所:大邱(テグ)の病院地下葬式場

今回のお葬式は、妻の実家のある韓国南部、慶尚南道に位置する大邱(テグ)のある病院地下の葬式上で執り行われた。

お葬式は韓国語では葬礼式(장례식)といい、葬式場は葬礼式場(장례식장)という。単語は似ているが、その意味するところはずいぶん日本と違う。まず場所からして、病院の「地下」に葬式場が備わっていることを僕は知らなかった。

不幸な出来事であるお葬式という行事の特性をふまえ、今回はあまり写真を撮らなかった。したがって葬式場の雰囲気は文章でお伝えする他ないのだが、まず病院の地下にある。入り口にはお悔やみの花が飾られており、そこで靴を脱いで入場する。

葬式場は大きく二つの場所に分かれている。一つは入り口に近い、広い空間であり、これは完全に食事をするためのスペースである。床に座って食事をする韓国式食堂、たとえば普通の街中のカルグクス(韓国式うどん)屋さん等を想像していただければいいと思う。実際に食事も飲酒もここで行う。

葬式場を構成するもう一つの場所は、祭壇のある小さな部屋である。前述の食堂のようなスペースのすぐ隣にあるものの、壁によって隔てられている。ドアは無い。ここは日本人でも想像がつくと思うが、まず白い棚に故人の写真が供えられている。また、果物のようなお供えもある。そして、お香がある。お香の上げ方は日本とほぼ同じだ。喪主(今回は故人の息子)と家族が弔問客を迎え礼を受け、涙ながらに祈りを捧げるのもこの部屋である。 賻儀金(プイグム)と呼ばれる香典もこの部屋の箱に入れる。喪主は基本的にこの部屋にこもり、食事の時及び弔問客の見送りの時以外は出てこない。

日時:2泊3日

葬式場が病院の地下にあるのも驚いたが、葬式が2泊3日と長いのにも驚いた。日本では不幸があると、訃報を打って葬式をあげるとなるのは一緒だが、ほとんどの場合は一日で終わると思う。

だが、韓国では2泊3日でお葬式をあげるのが一般的であるらしい。今回は故人に不幸があったのが火曜日だったので、火曜日を起点として木曜日までお葬式を行った。

2泊3日の間何をするのかと言うと、基本的には喪主を中心として個人の家族が葬式場に常駐し、弔問客たちを迎え、食事でもてなす。

喪主は、2泊3日の間、一睡もしない。上述した祭壇のある部屋にこもって、お香を絶やさないようにするのである。さらには、喪主は喪服を脱がない。つまり睡眠もシャワーもとらず、故人の冥福を祈るために2日間徹夜で香を上げ、弔問客をもてなすのである。ただでさえ傷心の喪主にとっては辛い時間であるはずだが、大事な人を喪った直後という最も精神的に危うい時間帯に人々と会い続けるのはそれなりに合理的なのかも知れない。

参加者:ほぼ家族のみ。コロナ時代を実感

喪主は2泊3日で弔問客に会うと書いたものの、今回のお葬式では家族以外の弔問客はほとんど無かった。その理由はコロナ(COVID-19)である。韓国でもコロナ対策で、大人数の集会の自粛が呼びかけられており、お葬式も例外ではない。そのため、今回はわたくしども家族の他には、故人が亡くなる直前に急遽入信したローマカトリックの神父さん一名以外は誰も弔問しなかった。葬式場の大きな食堂も、人が集まればこそ役に立つ。また、傷心の喪主を慰め、励ますという意味でも2泊3日の長丁場の葬式には弔問客の来訪が欠かせないと思うのだが、コロナのため人々が来ないために葬式場が余計広く、日程も余計長く感じられたものである。

内容:ひたすら待機のお葬式・涙涙の火葬場・自然へと還る樹木葬

改めてお葬式の具体的な流れを書いていこうと思う。タイムライン形式で書いていくので、長いと思ったら読み飛ばしていただいて構わない。

1日目:突然の訃報・飛び乗るKTX・式場泊

故人に不幸があったのは平日の火曜日だった。妻も僕も仕事中ではあったが、即座に勤め先に忌引きの申請を行い、受理された。翌日と翌々日の水曜木曜の二日間の忌引きである。

そもそも、妻の祖母の具合が良くないということは、前週の秋夕(チュソク)で大邱に行ったときに聞いていた。もともとチュソクでは家族親戚が一堂に会し、近況を共有したりするものだが、今回はコロナもあり、妻の一家とだけ会ったので何となく祖母の印象が薄かった。だが、妻はチュソク後も義母から、「そろそろ危ない」という話を聞いていたようだ。

最初僕は忌引きが一日分で十分かと思ったが、妻に言われて二日分申請することになった。正直、韓国でのお葬式が2泊3日も続くことを知らなかった僕は、「訃報を打ってからお葬式が始まるまでのタイムラグもあるし、長めに忌引き申請をしておけということかな」ぐらいの認識でいた。

妻とソウル駅で待ち合わせ、駅のプンシクチプ(粉もの料理屋)でうどんとキンパプを掻き込む。そのままKTXに飛び乗り、先週チュソクで行ってきたばかりの大邱に向かった。

大邱に到着し、バスを乗り継いで病院に到着すると、すでに夜であることもあり受付が閉まっていた。裏入り口から中に入ると、階段があり、そこを降りていくと葬式場があった。僕はこの時初めて韓国の葬式場は病院の地下にあるものと知った。つまり、韓国の葬式の風習について何も知らずに着替えだけ持って葬式場に来たのである。

靴を脱いで葬式場に入ると、食堂のような空間が広がっている。何故か小さい子供たちが騒ぐ声がすると思ってみると、妻の従妹たちの子供だった。すでに葬式は始まっており、妻の従妹たち(この人たちも故人の孫娘である)が弔問に来てくださったのだ。まずは祭壇のある部屋に入り、妻と一緒にお香を上げ、ぎこちなく故人の祭壇に対して礼をする。ついで義父母に対しても礼をする。食堂スペースに戻り、ひとしきり親戚の人たちに挨拶しながら改めて夕食を摂った。

親戚たちは帰り、義父母と僕たち夫婦だけが葬式場に残された。義父母は僕たちに、シャワーをして寝なさいと仰ったため、「お義父さまからお先にどうぞ」と言ったところ、喪主は葬式の二晩の間、喪服を脱いではいけないのだという。のみならず、喪主は寝てもいけなくて、二晩の間ずっとお香を絶やさないように祭壇の部屋にこもるということだった。ただでさえ、大事な人を喪って傷心状態の喪主に不眠不休でいさせて大丈夫かと心配になったが、考えてみると一番悲しい時間帯なので思いっきり悲しい気分に浸るという意味では合理的なのかもしれない。その間ずっと弔問客を迎えるシステムもある。家族や友人知人に慰めても貰える。故人との気持ちに区切りをつけるという意味ではよくできているのかも知れないと思った。

そんなことを考えながら、葬式場の別室にてシャワー(敷設されていた)を浴びて着替えて布団を敷いて寝た。

2日目:徹夜明けの喪主たち・涙の入館・ひたすら待機・親戚との会話・充実した食事

故人には大変申し訳ないが、平日の仕事終わりにKTXに飛び乗って300KM近く移動した上に異文化の色彩が濃厚なお葬式会場に突入した僕はぐっすり眠った。朝になって起きると、昨夜よりも憔悴した感じの義父母が食事を摂ろうと言う。言われるがままに朝食を摂る。食堂なので、厨房が敷設されている。例の、祭壇のある部屋のすぐ横に厨房スペースがある。そこからごはんと、ソゴギクッと、いくつかのナムルを取ってきてみんなで食べた。ソゴギクッは牛肉ともやしと大根の入ったキムチチゲスープの汁物で、こんな時に何だがとても美味しかった。

食事後、妻も喪服に着替える。僕は黒いスーツに黒ネクタイという万国共通の男の喪服なので特に異国情緒は無いが、妻は黒いチマチョゴリ(普通の服の上から着るようになっている)に、白いヘアピンをして韓国女性の伝統喪服に変身した。しばらくは何もせずに弔問客が来るのを待つ。昨日来ていた妻の叔母(故人の娘)が再合流した以外訪問客は無かった。今年はコロナのせいで、人々は葬式さえも自粛しているという現実が身に堪えた。

そして午前10時、入棺の時間となった。葬式場のすぐ隣にある霊安室に移動する。故人の亡骸と対面する。僕は旧正月や秋夕などで数回お会いしただけだが、それでも胸に迫るものがある。入棺は、故人の亡骸を丁寧に紙や布で包むことから始まる。その道のプロが熟練の技で、てきぱきと動いて故人を送るための服飾に包んでいった。まずは顔を紙で覆い、次いで布のようなもので完全に隠す。それから体も何枚もの紙や布で包み上げ、しっかりと紐で固定する。何となく、魂を高級ラッピングするような感覚であった。しかしながら、いざ故人のお顔を布で隠すのを目の当たりにすると、どうしても人が亡くなったという事実が胸に迫る。故人の娘にあたる義理の叔母と、故人の息子の嫁にあたる義理の母は、今までの明るい態度から一変して、感情を爆発させて号泣していた。故人は、30歳過ぎで夫を亡くし、その後女手一つで子供を3人育て上げた人である。日帝強占期、韓国戦争、その後の経済的困窮と、韓国の動乱時代を必死に生きてきた人であるだけに、遺された家族には万感の思いが去来したことだろう。故人の息子である義父は寡黙な男ではあるが、この時ばかりは大泣きされていた。もちろん妻も泣いていた。僕も思わずもらい泣きしてしまう。

気を取り直して、義父母がローマカソリックのしきたりにのっとり、聖書から有難い祈りの言葉を朗読した。義父母は、数年前にローマカソリックに入信した。また、故人も、亡くなる直前に病院で洗礼を受けている。そのため、棺にはハングルで「マリア」という洗礼名を縫い付けた布が被せられ、霊安室の遺体保管冷蔵室に大事に収められた。ここで故人は明日早朝の出棺を待つ。

入棺が終わると、またもや待機の時間となる。本当にコロナのせいで、誰も来ない。何となく昼食の時間となり、またしても美味しくいただく。故人には申し訳ないが、生きている人間は食べなければならない。昼食後も待機。ひたすら待機。義父母が、「君たちはちょっと横になりなさい」と言ってくださる。お言葉に甘えて別室にて横になる。というかまたしても少し寝た。故人には申し訳ないが、生きている人間は休まなければならない。

昼食(そして昼寝)後にもほとんど人が来なかった。一度、ローマカソリックの聖堂の神父さんが、代表で弔問に来てくださった以外は、家族以外は誰も来ていない。その家族さえ、夕方になってきてくれた親戚のグループが、病院の入り口(そう、葬式場は病院の地下にあるのだ)にてコロナ対策のための発熱チェックにひっかかり、平熱以上の熱があるということで、入り口のところで追い返されていた。本当にコロナという奴は…

夜の時間になって、ようやく複数の親戚が来る。この人たちは故人の孫にあたる人たちで、30代から40代の人たちである。妻のきょうだいの色々な人生相談に乗ってくれたり、僕たちの結婚生活の話をしたりした。何となく女性が多かったので、女の人生は自分も働き、子供を育て、家族に人生を捧げるのが本当に大変だ、という話で盛り上がる。『82年生まれ キム・ジヨン』的な世界である。

妻の家族は、みんな大邱の周辺に住んでいる。大邱というのは韓国南部の慶尚南道というところにあるが、この慶尚南道というのは韓国の中でも独自の文化があることで知られる。有名なのは方言。強烈な訛りがある。イントネーションがソウルと全く違う。日本語で言ったら東京弁と大阪弁くらい違う。僕はソウルでは言葉の聞き取りにほとんど不自由しないが、大邱に来ると韓国語リスニング力が半分くらいに落ちる。その大邱訛りの韓国語で、普段付き合いのない(=よく知らない)義理の家族の近況報告を3~4時間ほどするのに付き合っているうちに疲れてしまった。疲れが顔に出たのか、親戚の一人が、「婿殿、少し休まれては如何か」と仰って下さったので、お言葉に甘えて別室で休憩した。ちなみに葬式場は無料Wi-Fi完備だった。故人には申し訳ないが、生きている人間はツイッターをしなければならない。

3日目:早朝の發靷(出棺)・記憶を頼りに進む山中・樹木への散骨・道端での食事

明けて三日目の朝。例によって僕はぐっすり眠ったが、喪主である義父は二晩徹夜した後である。早朝4時半にみんなで起床し、荷物を整えてから5時半に發靷を行った。

發靷(はついん)は、韓国語である。パリンと発音する。出棺のことである。發靷は、棺の前に屏風と、簡易の祭壇を設けて行う。發靷は霊安室で行うのである。祭壇には例によってお香と、果物の供え物がある。一人ずつお香を上げたうえで、全員で礼をする。これを祭祀(チェサ)と言うらしい。チェサが済んだあと、男たちで棺を担ぎ、火葬場に向かうための大型観光バスに一旦棺を乗せる。棺は男四人で担ぎ、僕は右後方を担当した。その後故人の写真を抱えてバスに乗り込み、火葬場へと向かった。

二日ぶりに外に出ると、秋の早朝のピリッとした空気が出迎えてくれた。今日はいい天気になりそうだ。火葬場までの移動は、大型観光バスに乗って行った。今回はコロナのためそんなに人数がいなかったものの、本来であれば親戚一同集まっての移動ということで、こういう大規模な移動手段があるのだろう。

火葬場に到着する。すでに他の葬式から来た人たちが列を成している。「アイゴー」と泣きながら火葬場に入っていく遺族たちを見て、改めて気が落ち込む。我々もバスを降りて火葬場に入場する。火葬場は、とても事務的だった。棺を台車のようなものの上にそっと置いたところ、制服を着た火葬場の職員の若い男が、「それでは最後にご挨拶ください」と言う。みんなで改めて大泣きしてお見送りの挨拶をする。すると、職員が、「それでは火葬場へ移動させていただきます」と宣言し、台車を押して隣の部屋に行ってしまう。別の職員が「皆様、モニターをご覧ください」と言うので目を上げると、テレビモニターがあり、そこに火葬施設の入り口が映し出されていた。「それでは火葬させていただきます」と職員が宣言し、棺が火葬施設に入っていくのをみんなで見送った。と思うと、またしても職員が「それではこちらにご案内いたします」といって、1時間半ほどの火葬の間の待機部屋まで連れて行ってくれた。

火葬が済むと、お骨をもって再び観光バスに乗り込む。發靷の時は大きな棺を男4人で抱えたものだが、お骨は両手に収まってしまう大きさだ。どうしても、命とは儚いものだという辛気臭い気持ちになる。バスが再び動き出す。

故人の埋葬は、樹木葬だった。樹木葬というのは、先祖代々のお墓(土を盛り上げたもの)の隣にある木の根元に、穴を掘ってお骨を撒き、改めて土をかぶせるというものだ。大邱から車で一時間ほどのある山中に移動しての埋葬なのだが、この移動は義父(故人の息子)の記憶を頼りに行った。ために、途中で一度車を立ち止まらせて道を思い出すというプロセスが発生した。

樹木葬の場所は、のどかな田園地帯の山中であった。朝から好天に恵まれ、義叔母(故人の娘)は、「いい天気の日にオンマを見送れてよかった」と呟いていた。思わずもらい泣きしそうになる。バスが田園の小道に急に止まる。そのままみんなで義父について山の中に入っていく。えらく急斜面の山を20メートルほど登ると、丸い盛り土のお墓が二つある空間に出た。何となく小さな古墳を連想した。義父が、お墓のそばの木の根元をスコップで掘り返す。そこにお骨を撒き、再び土で埋める。埋めた土の上を、家族みんなで歩いて踏み固めた。その後義父母がローマカソリックのお祈りを捧げた。そして一人ずつ、最期のお供え物としてお酒(ソジュ)をコップにそそぎ、一杯ずつ土にかけて礼をした。親戚の一人が、故人が好きだった煙草をお香の横に置いた。こういうのは万国共通らしい。

礼を終えた後、山を降りて観光バスまで戻り、バスの前に茣蓙を敷いてちょっと早いお昼ご飯を食べた。葬式場の厨房でお弁当を作ってくれたらしい。改めて、いい天気だったのが印象に残っている。親戚たちと最後の会話を交わし、今回のお葬式を無事に終えることができた。

・文化の違い?印象的だったこと

宗教?

宗教について。わたくしども夫婦は無宗教である。それどころか酒は飲む、肉は食う、格闘技や投資は大好きという、神が裸足で逃げ出すタイプの夫婦であるが、上述の通り義父母はローマカソリックの信者になった。そのため故人も亡くなる直前にローマカソリックの洗礼を受けたらしい。

調べたところクリスチャンの場合、チェサでの礼などは立式で済ませるということらしいが、故人の場合はほとんどクリスチャンだった時期が無いせいもあってか、伝統的な韓国の葬式となった。なので、どちらかというと儒教式の古い礼節に則ったお葬式だったと思う。喪主が故人を偲んで二晩眠らずにお香を守ることや、喪服を脱ぐのが許されないこと等は、東アジア人の感覚的にはよく理解できる。

「忌引き」について

故人には申し訳ないが、生きている人間は金を稼がなければならない。富裕層ならぬ労働者たるわたくしども夫婦も例外ではなく、急な不幸のあった今回、勤め先に翌日からの忌引き申請を急遽行った。

この忌引きについて、韓国の職場ではチンガとウェガで対応が違うことがあるらしい。チンガは親家と書き、「父方の親戚」のことである。ウェガは外家と書き、「母方の親戚」のことである。そして、今回のお葬式で聞いた噂では、父方の親戚の葬式は忌引きが認められるが、母方の親戚の葬式は忌引きが認められないことがあると聞いた。

それで言ったら僕なんて血のつながりのない故人(妻の祖母なので)の葬式の忌引きが何故認められたのかよく分からなくなるが、何となく父方の親戚こそ本当の親戚とされる韓国らしいと感じた。韓国は夫婦別姓だが、子供たちは基本的に父親の姓を継ぐ。

「泣くこと」について

今回のお葬式では、喪主は故人の息子(妻の父)であった。故人の娘(妻の叔母)や、故人の息子嫁(妻の母)も出席した。女性陣は、長い長い葬式の間基本的には元気そうだったし、明るくお喋りをしているように見えた。だが、弔問客が来たりすると、特に久しぶりに会う親戚であることもあり、祭壇の前に行く度に泣いていらした。もちろん、入棺出棺それぞれでも大泣きされていた。また、火葬場で他の家族たちの様子を見ていても、やはり大泣きされていた。やはり家族との別れと言うのは重い。日本では何となく大人が人前で大泣きするというのは、たとえお葬式でもあまり見かけないが(すすり泣きなら多い)、本来このくらい大泣きするのが自然だと感じた。

・韓国で初めてお葬式に参加して、次回から準備したほうがいいと思ったもの

僕は外国人でもあり、年齢が30代とそれなりに若いのもあって、今回が韓国で初めての身内のお葬式となった。なので色々と知らないことばかりであったが、次回からは準備しておいた方がいいと思ったものを整理しておきたい。

事前の確認:家族の連絡先・お金・忌引き制度・お墓の確認

まずは事前の準備である。これは、事務的なものが含まれる。

家族の連絡先は常に把握しておこう。当たり前かもしれないが、これが出来ていないと、かなり大変なことになると思った。「あれ?親戚のあの人の電話番号何だっけ?」みたいになると不便だし、第一相手にも失礼だったりする。日ごろから電話番号を掌握しておき、できればたまに5分くらいの短い電話をして顔を繋いでおこう。

お金について、今回のお葬式は400万ウォンほどかかったと聞いている。これは葬式場代だけなのか、火葬や移動まで含まれているのかは残念ながら確認できなかった。が、最低でもこのくらいかかるということは知っておいた方がいいかもしれない。いざというときに葬式も出せないとなるとこれまた悲しいので。

勤め人の場合は忌引き制度も日ごろから把握しておこう。上述した父方母方どちらの家族でも忌引きが使えるのか、使えるなら何日まで使えるのか、確認しておけば慌てることは無い。特に、2泊3日がデフォルトであるなら最低でも二日は勤め先にご迷惑をおかけすることになってしまうので、前もって確認しておこう。もちろん、何日の間お葬式を出すのかについてはその都度確認してから忌引きを申請しよう。

お墓がどこにあるのかはしっかり確認しよう。今回、故人は慶尚南道の田舎の山の中に埋葬されたわけだが、本当に何にも標識がない山の中だった。どの盛り土がどこの家のお墓なのか、日本みたいに「何々家の墓」と書いてあるわけでは無いので、関係者以外には分からないだろう。だからこそ先祖の墓を守るという概念が生まれるのだろうけれど。もっとも、納骨堂やその他宗教施設に埋葬する場合はまた違うかも知れない。

心の準備:宗教・遺言・外国で死ぬということ

辛気臭い話が続くが、お葬式について語る上ではこれは避けて通れない。

そもそも家族もしくは自分が何か宗教はあるのか、お葬式はどういうスタイルでやってほしいのかは事前に確認しておこう。わたくしども義父母の場合は最近ローマカソリックに入信したので、韓国伝統葬式とカソリックのミックスとなったが、人によって全然違うものと思われる。

遺言・そして外国で死ぬということについて。この記事は、結婚などで韓国人と家族になって韓国でお葬式をあげる日本語人を対象に書いている。多くの場合、日本で生まれて異国である韓国で死ぬということについて、かなり真剣に考えた上での移住だと思われる。まさに釈迦に説法のようだが、改めて自分が外国で骨をうずめるということについて考えよう。骨は韓国に埋めてほしいのか。それとも日本にも半分持っていく(そういうことが出来れば)のを希望するのか。遺言は誰宛てに、何語(韓国語?日本語?その他?)で書くのか。改めて考えてみよう。

以上、長くなったが韓国でお葬式に行ってきた話をこれにて終えることとする。