英語を勉強していると、 study work improve のような基本単語は覚える機会が多い。 一方で、ネイティブが日常的に使うのに、日本の英語教育ではほとんど出てこない表現もある。 最近 The Economist を読んでいて、そんな表現に出会った。 Though much like Alexander himself, this history does not hang about. アレクサンダー大王の伝記を評した一文だ。 hang about とは何か hang about は、 ぶらぶらする 長居する ぐずぐずする という意味を持つ。 例えば、 Stop hanging about and get started. ぐずぐずしていないで始めなさい。 というように使う。 日本人が学校英語で習う機会は少ないが、イギリス英語では比較的よく見かける表現だ。 この書評ではどういう意味か 書評の著者は、 This history does not hang about. と言っている。 直訳すると、 この歴史書はぐずぐずしない。 少し意訳すると、 この本はテンポが速い。Continue reading “「ぐずぐずするな」を英語で言うと? ― Economistで見つけた does not hang about”
Category Archives: Uncategorized
「快適」じゃない Comfortable —— The Economistで学んだ意外な英語
最近読んだThe Economistの記事で、久しぶりに「なるほど」と思う英語表現に出会った。 それが comfortably だ。 記事にはこんな一文があった。 SpaceX’s IPO made it comfortably the biggest initial public offering of all time. 私は最初、 「快適に史上最大のIPO?」 と、一瞬意味が分からなかった。 学校英語では、 と習うからだ。 しかし、ここでは全く違う意味で使われている。 Comfortable のもう一つの意味 英語圏では comfortable には、 「十分な余裕がある」 という意味がある。 そこから、 などの表現では、 「余裕をもって」「大差で」「断トツで」 という意味になる。 つまり記事の comfortably the biggest IPO of all time は、 「史上最大のIPOだった」 ではなく、 「史上最大であり、その差も圧倒的だった」 というニュアンスになる。 なぜそういう意味になるのか 考えてみると面白い。 comfortable は本来、 「安心できる」「窮屈ではない」 という意味だ。Continue reading “「快適」じゃない Comfortable —— The Economistで学んだ意外な英語”
「Simply did not stop」と「Roll their sleeves up」――The Economistが描いた本当の成功者像
最近読んだThe Economistの記事で、とても印象に残った表現が二つありました。 一つは、 simply did not stop もう一つは、 roll their sleeves up どちらも難しい英単語ではありません。 しかし、この記事全体のメッセージを象徴する表現でした。 キッシュを焼き始めて、やめなかった 記事では、アメリカの無名の富豪たちが紹介されます。 シリコンバレーの起業家ではありません。 テキサスで雨どいを売る人。 ニュージャージーでトイレットペーパーを卸す人。 そして、カリフォルニアでキッシュを焼く女性。 記事にはこうあります。 One woman in California began baking quiches for her own parties and simply did not stop. 直訳すると、 「ある女性は自分のパーティー用にキッシュを焼き始め、そのままやめなかった。」 です。 普通なら、 「革新的なビジネスモデルを構築した」 とか、 「市場のニーズを見抜いた」 とか書きそうなところです。 しかしThe Economistは、 「やめなかった」 と書く。 結果として彼女は20年後、1日100万個以上のキッシュを製造する会社を築き、ヨットを所有する富豪になりました。 成功の理由は天才性ではなく、継続だった。 そんな皮肉が込められています。 腕まくりする人たち 記事の最後には、こんな一文があります。 MuchContinue reading “「Simply did not stop」と「Roll their sleeves up」――The Economistが描いた本当の成功者像”
「少し考えさせてください」は英語で何と言う? The Economistで見つけた chew over
最近読んだThe Economistの記事で、久しぶりに面白い英語表現に出会いました。 それが chew over です。 記事中ではこんな形で使われていました。 Investors, for their part, are still chewing over the announcement. 直訳すると、 投資家たちはまだその発表を噛んでいる になります。 もちろん実際にはそんな意味ではありません。 chew over の意味 chew は「噛む」です。 そして chew over は、 よく考えるじっくり検討する咀嚼するように考える という意味になります。 日本語でも 「話を咀嚼する」 と言いますが、かなり近い感覚です。 例えば、 Let me chew it over. なら 少し考えさせてください という意味になります。 また、 We are still chewing over the proposal. なら その提案についてまだ検討中です という意味になります。Continue reading “「少し考えさせてください」は英語で何と言う? The Economistで見つけた chew over”
「Kumbaya」――英語圏の保守派が嫌う“お花畑”を表す一言
最近見ていたインタビュー動画の中で、面白い表現に出会いました。 That wasn’t just some kumbaya… 話者はレーガン大統領の核戦争観について説明していました。 彼はこう言います。 Reagan came out and said, “A nuclear war can never be won and must never be fought.” (核戦争に勝者はいないし、決して戦われてはならない) そして続けて、 That wasn’t just some kumbaya that his wife had or someone else had told him. と言いました。 Kumbayaとは何か? もともとはアフリカ系アメリカ人の宗教歌のタイトルです。 Kumbaya, my Lord, kumbaya… という有名な歌で、意味としては「主よ、ここに来てください」という祈りの歌です。 ところが現代アメリカ英語では、まったく別の意味で使われることがあります。 それが、 現実を見ない理想主義 「みんな仲良くしましょう」的な発想 です。Continue reading “「Kumbaya」――英語圏の保守派が嫌う“お花畑”を表す一言”
Harvard Business Review Podcastで出会った3つの面白い英語表現
最近、Harvard Business Review Podcastで「会議」をテーマにしたエピソードを聞いていた。 内容そのものも興味深かったのだが、英語学習者としては思わずメモを取りたくなる表現がいくつか出てきた。 今回はその中でも特に印象に残った3つの表現を紹介したい。 1. My calendar runs my life 出演者がこんなことを言っていた。 On my worst days, my calendar runs my life. 直訳すると、 「私のカレンダーが私の人生を支配している」 である。 本来なら、 I run my calendar. のはずだ。 ところが主語と目的語が逆転している。 つまり、 自分が予定を管理しているのではなく、予定に管理されている という意味になる。 管理職や営業職なら思わず苦笑してしまう表現ではないだろうか。 私自身、外資系商社で営業課長として働いているが、 で一日が埋まる日がある。 そんな日はまさに、 My calendar runs my life. である。 2. To carp about the negative 司会者はこんなことも言っていた。 We’re not hereContinue reading “Harvard Business Review Podcastで出会った3つの面白い英語表現”
nudge ― 「押し付けずに人を動かす」という英語
英語を読んでいると、 「辞書の意味は分かるけど、日本語一語では訳しにくい単語」 に出会うことがあります。 その代表格の一つが nudge です。 最近読んでいたNVIDIA創業者ジェンスン・フアンの伝記にも出てきました。 ジェンスン・フアンとデニーズ 高校生だったジェンスンは、アメリカのDenny’sでアルバイトをしていました。 皿洗いから始まり、 まで経験します。 そこでこんなエピソードが紹介されています。 He would try to nudge customers to order Coke instead. シェイクを注文しようとする客に対して、 「コーラはいかがですか?」 と別の商品へ誘導しようとしていたのです。 なぜか。 ジェンスンはシェイク作りが大嫌いだったからです。 作るのに時間がかかるし、後片付けも面倒だった。 だから客がシェイクを頼もうとすると、 少しだけ別の商品へ誘導していた。 ここで使われているのが nudge です。 nudge の本来の意味 もともとは、 肘で軽くつつく という意味です。 例えば、 He nudged me. 彼は私を軽くつついた。 という使い方をします。 しかし現代英語では、そこから意味が広がっています。 ビジネスでの nudge 今では 相手をそっと望ましい方向へ導く という意味で使われることが多いです。 重要なのは、 強制しないこと。 命令もしない。 圧力もかけない。 しかし、Continue reading “nudge ― 「押し付けずに人を動かす」という英語”
formative ― 「今の自分を作った経験」を表す英単語
英語を読んでいると、ときどき日本語に一語で訳しにくい単語に出会います。 最近、NVIDIA創業者ジェンスン・フアンの伝記を読んでいて、そんな単語に出会いました。 それが formative です。 ジェンスン・フアンの壮絶な少年時代 ジェンスン・フアンは台湾生まれですが、少年時代にアメリカへ移住しました。 両親の都合で、兄とともにケンタッキー州の寄宿学校に預けられます。 そこで彼は、 といった過酷な環境を経験しました。 後に彼はこう語っています。 I don’t get scared often. I don’t worry about going places I haven’t gone before. I can tolerate a lot of discomfort. (私はあまり怖がらない。行ったことのない場所へ行くことも気にしない。かなりの不快さにも耐えられる。) そして伝記には次の一文がありました。 He looked back on his time at Oneida Baptist as formative. formative の意味 辞書的には、 人格や能力の形成に大きな影響を与える という意味です。 しかし実際のニュアンスはもっと強い。 単なる ではありません。 むしろ、Continue reading “formative ― 「今の自分を作った経験」を表す英単語”
「From the Get-Go」って何? 私が学校で習わなかった英語表現
英語を勉強していると、 単語は全部知っているのに意味が分からない表現と、 単語そのものを見たことがない表現があります。 今回紹介する from the get-go は後者です。 私は大人になってから英語の記事やポッドキャストを読むようになって初めて知りました。 学校英語ではまず習いません。 しかしネイティブは普通に使います。 From the Get-Go の意味 意味はシンプルです。 最初から 初めから です。 例えば、 We knew from the get-go that it would be difficult. 最初から難しいと分かっていた。 There were problems from the get-go. 最初から問題があった。 という意味になります。 Get-Go って何? 私が最初に思ったのは、 get = 得る go = 行く だから、 「得てから行く?」 何のことだろう? でした。 しかし実は、 get-go という部分に特別な意味はほとんどありません。Continue reading “「From the Get-Go」って何? 私が学校で習わなかった英語表現”
「Bread and Butter」はパンとバターではない。アメリカ人が仕事でよく使う表現
英語を勉強していると、 「知っている単語なのに意味が分からない」 という表現によく出会います。 その代表例が、 bread and butter です。 bread はパン。 butter はバター。 中学生でも知っている単語です。 ところが、ビジネスの世界でこの表現が出てくると、全く違う意味になります。 Bread and Butter の本当の意味 例えばアメリカ人はこんなふうに言います。 Sales is our bread and butter. This product is our bread and butter. That’s the company’s bread and butter. ここでの bread and butter は、 パンとバターではありません。 意味は、 主力事業 稼ぎ頭 飯の種 です。 日本語で言うと、 「これで食べている」 というニュアンスになります。 なぜパンとバターなのか 昔の欧米では、 パンとバターは日常生活に欠かせない基本的な食べ物でした。Continue reading “「Bread and Butter」はパンとバターではない。アメリカ人が仕事でよく使う表現”
「Buy-in」という英語をHBRで知った。アメリカ人が好きな“納得と支持”という考え方
最近、Harvard Business Review(HBR)のポッドキャストを聞いていて、改めて印象に残った英語表現があります。 それが buy-in です。 実は私は現在アメリカ系の半導体商社で働いていますが、少なくとも記憶している限り、仕事のメールや会議でこの言葉に頻繁に出会ったことはありません。 もしかすると聞き流していただけかもしれませんし、別の表現に置き換えられていただけかもしれません。 しかし、HBRを読んだり聞いたりしていると、この言葉が組織論やリーダーシップの文脈でよく登場します。 今回はそんな buy-in という表現について紹介したいと思います。 Buy-inとは何か HBRのインタビューでは、 get buy-in from stakeholders という表現が出てきました。 stakeholder は「利害関係者」。 つまり直訳すると、 利害関係者からbuy-inを得る となります。 では buy-in とは何でしょうか。 辞書的には などと訳されます。 しかし、それだけでは少し物足りません。 私が理解したニュアンスは、 「相手に腹落ちしてもらい、自発的な協力を得ること」 です。 Approvalとの違い 例えば、 We need management approval. と言われたら、 「経営陣の承認が必要だ」 という意味です。 一方、 We need management buy-in. と言われたら、 単なる承認ではありません。 経営陣が 「まあ好きにやっていいよ」 ではなく、 「その考えは良い。私も支援しよう」 という状態まで持っていくことを意味します。 承認よりも一歩深い概念です。Continue reading “「Buy-in」という英語をHBRで知った。アメリカ人が好きな“納得と支持”という考え方”
「A-list assassinations」― The Economistで出会った忘れられない比喩
英語を長く勉強していると、「意味は分かるが、なぜそんな表現を使うのか分からない」という文章に出会うことがあります。 先日、The Economistのワールドカップ特集を読んでいて、そんな一文に出会いました。 As with A-list assassinations, veteran fans remember where they watched their side’s greatest feats and most painful defeats, and with whom. 直訳すると、 「著名人暗殺事件と同じように、ベテランファンは自国代表の最高の勝利と最も痛い敗北をどこで誰と見たかを覚えている」 となります。 最初に読んだ時は、 「なぜワールドカップと暗殺事件を比較するんだ?」 と思いました。 しかし、少し考えてみると、実に巧妙な比喩です。 例えば、 ・ケネディ大統領暗殺・9.11同時多発テロ・東日本大震災・安倍元首相銃撃事件 こうした歴史的事件について、人々は単に事件そのものを覚えているだけではありません。 「その時、自分はどこにいたか」 を覚えています。 テレビを見ていた。会社にいた。学校にいた。家族といた。 そうした個人的な記憶が、歴史的な出来事と結びついているのです。 The Economistの筆者は、 「ワールドカップも同じだ」 と言っています。 日本人なら、 ・1998年 フランス大会・2002年 ベルギー戦・2010年 パラグアイ戦・2022年 ドイツ戦 などを見た場所や、一緒に見ていた人を覚えている方も多いのではないでしょうか。 試合内容そのものだけではありません。 その頃の自分。 当時の仕事。 学生時代の友人。 もう会えなくなった家族。 そうした人生の断片が、ワールドカップの記憶と一緒に保存されています。Continue reading “「A-list assassinations」― The Economistで出会った忘れられない比喩”